墨田の花火という名のあじさい

雨の中でもパッと花火が咲く。

墨田の花火、と名のついたあじさいがある。

花が、ポンポンと外に飛び出して咲いている。
はじけるように。

私はあじさいの中で、この墨田の花火が一番好き。

見つけると、近寄って見入る。

元気な子どもが走り出しているようにも見えて。

ただ静かに雨の中にたたずむあじさいとは、違う。
動きがあり、外に向かって広がっている。

自分の場所から、どこかへ。
ただ立っているのではなく、どこかへ。

飛び出していく。

かつての私のように。
一人旅を繰り返していたころ。

どこかへ行きたい焦燥感や、何か足りない不安。

花火をどうしようもなく好きなのも、同じころ。
一瞬のきらめきに我を忘れて。

その時だけでも。

おととし、隅田川の花火を見た。
家族と、友人と。
川のそばで、最初から最後まで見入った。

息子の横顔を花火が照らす。
じいっと見つめている瞳。

私のかつての焦燥感は、そこには感じられない。
ほっと息を吐く。

かつてとは違う、花火。

穏やかな、花火。

パッと華やかに咲いて・・・・・静かに心に残る。

雨の日にも、静かに、はじけている。

読んでいただいてありがとうございます😊スキ💗、フォロー、コメントをいただけたら嬉しいです💖