私の原風景ってなんだろう、どこだろう
「北海道か、かわいそうだね」といわれたことがある。
私は小学校時代を北海道で過ごした。
のんびり、伸び伸び、とてもいい時間だった。
でも、作家の早坂暁さんにお目にかかった時にいわれたのだ。
「北海道か。じゃあ吹雪の荒涼たる風景だろう、君の原風景は」と。
ショックを受けた。
でも違う気が、した。
目をつむってみた。
それまで自分の原風景を考えたことがなかった。
やはり浮かぶのは、北海道の景色だった。
吹雪もあったし、凍った地面に滑りながら登校した日もある。
でも、目に浮かんだのは、広大な原野と、咲き誇るキスゲの花だった。
そう告げると、
「おお、それはいいね」とほほ笑んでくださった。
ホッとした。
そうだ、私の中に広がる原点みたいな風景は、キスゲの花が咲く勇払原野なんだ。
初めて自分で知って、不思議で新鮮だった。
原風景を見つけるきっかけをくださった早坂暁さんは、『夢千代日記』『天下御免』などを書かれた小説家で、脚本家だ(4年前にお亡くなりになっています)。
当時は渋谷の公園通りのホテルに住んでいて、たまたま同行した人に紹介されて、話をする機会を得た。
5分ほどの時間に、なぜ原風景の話になったのか、もう覚えてはいないけれど。
私は早坂暁さんの原風景を聞きそびれてしまった。
調べてみたら、愛媛・松山のご出身だった。
その自伝的青春小説『ダウンタウン・ヒーローズ』が大胆で、痛快で。
主人公の青年は娼婦に惚れて、自分も刺青を彫る。
その娼婦・イチ子がいじらしく、美しく、哀しい。その印象がつよく残っている。
読んで、早坂暁さんの原風景は松山の、町か温泉か。お遍路さんの通る辺りだったのか、と想像してみる。
もはや聞くことはかなわないけれど。
まるで違う景色を人はみな、自分の心の中に持っている。
そのことを教えてくれた。
兄弟がいても、その原風景はそれぞれ違っているかもしれない。
私とて、勇払原野に行ったのは数えるほどしかない。
なぜそこの風景が、さあっと鮮やかに浮かぶのか、わからない。
地平線まで続く花咲き乱れる原野。
梅雨のない北海道の、あの景色をまた眺めたくなった。
私の原風景を。
※写真はhaluchobinさんからお借りした写真で、勇払原野ではありません。
haluchobinさん、ありがとうございます。
読んでくれてありがとうございます😊スキ💗、フォロー、コメントをいただけたら嬉しいです💖
7月7日より、まぐまぐ有料マガジンを始めます。
サポートいただけたら、よりおもしろい記事を書いていきますね💖 私からサポートしたいところにも届けていきます☘️ものすごくエネルギーになります✨よろしくお願いします。