
焼き芋という名の小さな火遊びがたき火だった
手の中のアチアチが、うれしい。
いい香りが立ち昇ってくる。
焼き芋。
屋台で買って、息子と半分こした。
ねっとりした、濃い山吹色の、さつまいも。
5歳くらいの息子は、外の屋台で買ったこと、外で食べられること、大好きなさつまいもなこと・・・うれしいことがいっぱいで、笑顔もいっぱい。
ベンチでほおばる、熱いくらいの、温かさ。

思い出すのは、私が子どものころ。
10歳くらいだったろうか。
北海道で、焚火をして、焼き芋を作った。
庭の一隅に、焚火の場所があって。
父は時どき、不用品を燃やしていた、
秋には、そこにさつまいもを入れた。
はじめはそのまま入れて、真っ黒になった。
生焼けで、ゴリゴリした。
アルミホイルに包むこと。
奥の方に入れること。
じっくり焼くこと。
少しずつ学んで。
私の楽しみは、焼きいもだけではなかった。
焚火の炎。
透明な黄色、みかん色、朱色、緋色、赤、時おりの青。
チラチラと、ヒラヒラと、サァ~ッと、
姿を変え、表情を変える。
気ままに、自在に動き続ける。
一瞬も、静まらない。
いつまでも、見ていた。
消えないように、枯れ枝を入れて。
顔や、胸や、しゃがんだ膝が熱くなってくる。
でも、背中を向ける気にはならない。
チラチラ、誘うように、笑うように。
はぜた火花が、手にかかった。
熱い!
でも、離れなかった。
父は、遠くから見ていたのだろうか。
姉は、あきて部屋に入ったのだろうか。
なぜか、ひとりで見続けた記憶がある。

できた焼きいも。
皮がアルミホイルにくっついて、はがしにくかった。
半分に割ると、勢いよく湯気が上がって、熱かった。
ぽっくり甘い。
今のような、ねっとりとした強い甘さはなかったけれど、ほくほくとして。
皮にくっついたところが香ばしくて。
満たされた。
でも。
おぼえているのは、炎の、魅力。
危険も熱さも、体で知って。
でもあらがえない、炎。
太古の記憶なのだろうか?
体の芯も、熱くなるような。
焼きいもを見ると、食べると、ふっとよみがえる。

キャンプファイヤーでも、アウトドアでもない、日常の焚火を思い出す。
東京では、できないけれど。
※イラストはyukkoさんからお借りしました。ありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!
