イザベレ・グラーフ「絵画の約束ーー非・媒体固有性、インデックス性、価値について」感想(文・大森俊克/訳『美術手帖 』2020年4月号感想メモ)
ざっくり概要
絵画には作家と作品との強い結びつきがある。
絵画という「媒体」の固有性は現代ではさほど存在しない、、、平面という意味では写真とかもある。媒体論には常に実体が付き纏う。メディウムスペシフィック(素材や媒体に固有の性質)の話とか然り。今日における絵画は物質性には訴えていない。
絵画にはその場に不在である作家の「主体性」を浮かび上がらせる暗示的機能がある。たとえ、ゲルハルト・リヒターにおけるスキージーやアンディ・ウォーホルにおけるシルクスクリーン、ウェイド・ガイトンにおけるプリンタなどによって作家の「筆跡」を無くそうとしても、逆に<裏口から入ってくる>ように作家の主体性が召喚される。(ex.「手描きでなければない程」ウォーホルっぽくなる)
絵画には自己言及が可能な(絵画自らが絵画を思考するような≒作家がしばしば感じる「絵自身が<こうなりたい>と思っている」というような感覚)側面がある。
また、絵画と作家との物的・身体的つながりを考えることによって浮かび上がってくる「準主体性」がある。これは「絵画のインデックス性」と呼ばれる性質と関係が深い。
絵画は作家がその価値を決めていく担い手として、将来理想的な「生」を得ていくことを想起するものであるが故に魅力が褪せない。
用語メモ
絵画のインデックス性
労働性(創作活動)や作家の来歴・「生」を表し、作家の存在を暗示する(内在させる)性質。絵の中に作者の色んな部分・側面が散りばめられている、的な。
絵画のネットワーク性
その作品と社会・人々との関係に依拠する性質。他動的とも言える?
感想
「労働性」とか作家の「生」や「来歴」などが作品に反映されている(ので、作家の人生に直接的/間接的に関与できる)という点や、「物質性に訴えない」という点を抽出しても、それらは彫刻やインスタレーションなどを始めとした他の表現形態にも当てはまるので、あまり「絵画独自の特性」としての説得力を感じない。自分としては、感情的な結びつきというか原始的な魅力(cf.人類最古のアートがラスコーの洞窟画という説)、が鍵を握っているような気がする。ちなみに私自身の主要表現が絵画であることもあり、絵画には独自の謎の魔力がある、という点には合意。