茶道雑誌 1月号
「試筆 新年に初めて毛筆で字を書くこと。書き初め(大辞林より)」
初めて筆で文字を書いたのは祖父のところでだったように思う。自分にとって馴染みのあった絵筆の扱いと勘違いして、祖父の大切にしていた書道の筆の扱いはめちゃくちゃだった。なのに祖父は周囲が驚くほど怒りもせず、小さくため息をひとつついただけで、「初めてなら仕方ない」と言った。
その後、自分が書道を習うようになるまで随分と時間を経たが、それでもやっぱり、ことあるごとに祖父の様子を思い出す自分に気づいた。毎月の茶道雑誌はお茶との時間だと思っていたら、今回はそうではなく、筆文字に祖父を思い出すことから始まった。
「試筆」という響きには何だか大人っぽさも感じる。試し書きと試筆。いくつかある言葉の意味の中の一つは重なる部分もあるような、そんなイメージがあった。あれもこれも、相変わらず思いこみが多い自分に苦笑いをする、そんな時間。
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