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【ちょっと考察】アンリ・ルソーの夢二夜:「眠るジプシー女」と「夢」

【眠るジプシー女】

夜の砂漠に身を横たえる、ジプシーの女。
ぐっすり眠る彼女の傍らには、一頭のライオン。
百獣の王は、何故か彼女を襲いもせずに、じっと横目で睨んでいる。

Henri Julien Félix Rousseau La Bohemienne endormie 1897
(著作権フリーの画像を掲載しています)

どうして?
ジプシー女の見ている夢だから?

アンリ・ルソー本人曰く
「月の光が詩的だから」だそうです。

よく分からない。
まあ、要はポエムの世界なんだよ~と、ざっくり解釈しますか。

アンリ・ルソーの絵は、だいたい変。
この絵も、やっぱり変。

ジプシー女は、裸足だ。
熱砂の上を、靴も履かずに歩いて来たのか。

寝る前に靴を脱いだ?
いや、靴は描かれていない。
そう暑くない地方で、裸足で歩けたとか?
よく見て。足は綺麗。砂まみれになっていない。

そう。まるでこのジプシー女は、ひょいと運ばれてきて、この砂漠に置かれたように見える。

対して、ライオンには動きを感じる。
高く上がった尻尾。
びっしりとなびく、たてがみ。
こちらに向けた丸い目は、なんだか不安そう……。

じゃあ、これはジプシー女が見た夢ではなくて。
ライオンの方が見ている夢だとしたら。

と思って詩を書きました。


【夢】

こちらのタイトルは、ずばり「夢」。
ルソーが絵に添えた詩があります。
そのまま転記するのも芸がないので、超訳してしまいました。

 うつくしの君
 名は ヤドヴィガ
 穏やかな眠りの中
 縦笛たてぶえの調べに ふと気づく
 おお! そこはジャングル
 獣やへびも揃って 月夜に耳を傾ける

Henri Julien Félix Rousseau La Rêve 1910
(著作権フリーの画像を掲載しています)

まあ、この絵は彼女の見ている夢だと、アンリ・ルソーは言っているわけです。

でも、彼女がいるのは、ソファーの上。
そこだけは、現実の地点。

もし、この「夢」が、憧れや幸せに満ちた世界であるならば。
ヤドヴィガは、ソファーなんかじゃなく、ジャングルの中にいて遊んでいるのではないか。

裸の彼女は、そこから動かない。
「ここにいれば安心」とでもいうように。
がっしりしたソファーは、危険な世界にポツンと置かれたシェルターみたいに見える。

描かれたジャングルは、本当のジャングルではなくて。
「ジャングルのような」という、比喩表現であったとしたら。

と思って詩を書きました。


ちなみに、このアンリ・ルソー。
Henri Julien Félix Rousseau(1844-1910)
一息に紹介すると。
生前は評価されず、極貧で、それでも描き続けた我流の画家。

その根性の欠片を分けてもらいたいです。


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