【仕事術】自己紹介を簡略化したら成績が伸びた人見知り営業マンの話
僕は自己紹介がニガテだ。
就職活動の時、これでもかと自分をPRした自己紹介文を考え、ほとんど暗記した。
録音した音声を再生するように、それを面接会場で披露し続けた。
ちゃんと聞いている人いるのかな?
こんなに自慢っぽい話をして嫌がられていないかな?
人見知りである僕は、そんなモヤモヤを抱えながら就職活動を乗り切った。
入社しても、あらゆる場面で自己紹介を求められる。数あるグループ会社にも研修に行き、その度に出身地と学歴と、学生時代何をやったか、なぜこの会社に入ったかを話さなければならなかった。
聞いているかも分からない大人たちに、必死に自分の経歴を話す行為が苦痛で仕方がなかった。
配属先では新入社員が全社員の前で自己紹介をするのが通例だった。
「必ず笑いを取るように」と、その前日にメールが入っていた。
お笑い芸人の前説じゃないんだから、とこの日も録音していた定番の自己紹介をリピート再生していた僕の隣で、同期の彼はワイシャツを脱いでいた。
「あなただから買いたいと思った」と思わせろ!
商品の前に自分を売れ!
新入社員時代に叩き込まれた、営業ノウハウ。
営業マンは対人仕事。商品を売る前に、自分を売り込むことで、より商品を売りやすくなる。
先輩に同行して実際に営業回りを始めてみると、確かにその通りだった。相手は50代〜60代の社長クラスが多く、特に若手の僕の武器は自分をPRして人としての信頼を得ることだった。
しかし、ある程度の場数を踏んでいくと見えてくるものがあった。
取引先だって人間。色んな人がいる。古からの営業ノウハウが通じない人だっている。
やっぱり自己紹介なんか別に聞きたくないよ、って人もたくさんいる。直接そんなふうに言ってくれる人もいた。
コロナウイルスの感染拡大によって、我々の働き方は大きく変わった。古より続く我が社ではリモート打ち合わせこそ推奨されなかったが、さすがに対面での打ち合わせには時間制限が設けられた。
これまでダラダラと自己紹介をする時間も無くなった。
自己紹介がニガテだった僕にとっては大きな転機だった。
かといって、名刺だけを渡すのは味気ない。
じゃあ、自己紹介も一緒に渡せばいいんだ!
これまで機械的に話していた自己紹介文をA4一枚の文書にまとめ、それを持ち歩くようにした。
初めて会うお客さまには名刺と一緒に渡してみる。
「これ自己紹介です!後で時間あったら見てみてください!」
ある人はその場でペーパーに目を通す。
「おお!君はサッカーが好きなんだね!」
この人は僕がどんな人かいち早く知りたい人だ。
ある人は言葉どおり打ち合わせが終わってから読んでくれた。
「自己紹介読んだよ。君の出身地には行ったことがあってね」
この人は目の前の打ち合わせを重視しつつ、僕がどんな人であるかにもしっかりと興味がある。
ある人は多分読んでいなかった。会食をしていると
「君はどこ大出身なの?」
この人は会話の中で僕を知っていきたいと思う人だから、一方的な自己紹介はダメ。
ある人は読んでいなかった。
「佐々木さん?だっけ?ところでこの商品だけど…」
僕は佐々木ではない。でも商品の説明は熱心に聞いてくれる。
自己紹介を簡素化してみたら、モヤモヤが消えたうえに、これまでよく見えていなかったお客さまの顔もよく見えるようになった。
自己紹介を簡素化してみたら、お客さまの顔がよく見えるようになって、商品の売り方を変えてみることができた。
これまでどおり自分を売り込んだ方がいい人
自分はそこそこに商品の良さを徹底的に売り込んだ方がいい人
戦略を整理できると、成績がみるみるうちに良くなった。
時代の変化に伴って、お客さまの考え方も変わるし、仕事の仕方も変わる。
古からの営業ノウハウだって変えていい。
きっかけは人それぞれ。
自分で気づいて、自分で変えてみたことは、必ず武器になる。