女子サッカー選手におけるストレス諸要因と首尾一貫感覚および認知的評価・コーピングの関連
以前、このようなnoteを書きました。
今回は、その卒業研究から明らかになったことをここに記したいと思います。
論文よりも、より柔らかく
よりわかりやすく書いていきたいと思います!
長い文章になると思いますので
結果・考察の部分だけでも、覗いてもらえたら喜びます🙇♀️
面白い結果が出たなぁと個人的には感じているので
…などに興味がある方は、お時間のある時に読んでいただけたら嬉しいです😊
背景
めちゃくちゃざっくりとですが
研究の背景についてまとめてあります。
ここにも、トランスアクショナルモデルや、首尾一貫感覚について詳しく書いてあるので
よくわからなかったらこちらも合わせて読んでみてください🙏
目的
様々な要因とは
所属チーム、年齢、競技年数…などなどです。
【要因、認知・コーピング、首尾一貫感覚】
本研究では、これらの関連を調べ
今後のストレス対処の研究の基盤となることを目的としています。
方法
今回、研究をするにあたって
164名
のなでしこリーグの選手の方々にご協力いただきました🙇♀️🙇♀️🙇♀️🙇♀️
ご協力いただいたアンケート用紙は、このような内容になっています。
(2)のアンケートでこれは"認知"についての尺度です。
(3)のアンケートでこれは"コーピング"についての尺度です。
上の2つの問題解決と認知的再解釈は
ストレスの元の原因に対処していく
直接的なコーピング(問題焦点型コーピング)
下の3つの情緒的サポート希求と回避的対処と感情表出は
原因によるネガティブな感情を減らしていこうとする
間接的なコーピング(情動焦点型コーピング)
…となっています。
結果・考察(1)
1つ目の結果・考察です。
◯競技年数の長い選手
◯なでしこリーグ所属年数5年以上の選手
◯試合にいっぱい出てる選手(スタメンとか)
このような選手たちは
コンフィデンスという"自信"の認知をする人が多かったことから
前向きな認知をする人が多いと考えられます。
特に所属年数5年以上の選手は
なでしこリーグというレベルの高いリーグに長く所属し、色々な経験することから
辛いことにも動じずに、自分自身を前向きに持っていけるような考え方が出来るようになるといえます。
逆に
◯競技年数の少ない選手
◯なでしこリーグ所属年数4年以下の選手
◯試合に出られていない選手(メンバー外とか)
このような選手は
"ミスを気にする傾向"という認知をして
物事をネガティブに捉えてしまう傾向にありました。
特に、試合に出られていない選手などは
試合に出られない → 落ち込む → ミスする →試合にまた出られない…
といった、悪循環に陥りやすいと考えられます。
こういった流れを断ち切るためにも、認知へのアプローチは重要だということがわかりました🙆♀️
"ソーシャルサポート"と"高い目標へのこだわり"
…に違いが見られたのが
◯若い選手
認知において、周りからの影響を多く受けて、より高い目標を追っていると考えられます。
高い目標を掲げることは悪いことではないけれど
それが達成できなかった時に心が折れてしまう場合もあります。
◯ベテランの選手
物事に対して"自分"の判断で捉えつつ
高い目標はあまり追わない部分があります。
様々な経験をする中で
どうやって自分を前向きに持っていけるかがわかってくると考えられます。
また、目標を持たないというよりは
完璧主義を目指さずに、自分の精神をコントロールし、感情の波を減らしているといえます👌
◯若い選手の方が
周りから励ましをもらったり、愚痴をいうといった対処をする事が多いそうです。
問題に直接対処するよりも
ちょっと現実から目を背けて、感情を落ち着かせる事が多いといえます。
30歳以上の選手と29歳以下の選手の比較の方が
26歳以上の選手と25歳以下の選手の比較よりも
値の差が大きかったことからも
◯ベテランの選手は
愚痴らず、問題を直視しながら
自分で悪い状況を改善していく力があると考えられます。
なでしこリーグといった過酷な環境で、長年活躍している事からも
認知・コーピングにおいては若い選手よりも優れていると考えられます✨
◯なでしこリーグ所属年数が5年以上の選手
◯日本代表歴のある選手も
◯ベテランの選手のように
自分自身で直接問題に向かっていって
対処できる傾向にあるといえます🙆♀️
今回の研究では
◯なでしこリーグ1部と2部
◯全治2ヶ月以上の怪我の経験
からは、認知・コーピングの差が見られませんでした。
◯全治2ヶ月以上の怪我の経験については
このような怪我をした事がある選手がとても多く
そこでの認知・コーピングの差が見られなかったことが理由ではないかと考えられます。
◯なでしこリーグ1部と2部の差が見られなかったのは
・今、現時点で自分がどこに所属しているかという要因よりも
・これまで、その人自身がどのような経験をして、どのような事を乗り越えてきたかという要因
…そういうものが、認知・コーピングには大きく関わってくるのかなと思いました👍
私からしても意外な結果でしたが
☆認知への影響は"環境"よりも"経験"の方が大きい…といえるのではないかと思います。
結果(2)
2つ目の結果・考察は
認知の違いによるコーピングの変化についてです。
◯コンフィデンス:自信
この認知をすることで
問題に直接対処できる。自分で物事の捉え方を変化できる。といえます。
その中でも
回避的対処って、問題から目を背けるってことでしょ?ダメじゃない???
と思ったあなた。私も思いました。
しかし、先行研究から
首尾一貫感覚の高い人たちは
やっちまった〜もうどうしようもない🤦♀️
という時は、1回落ち着いてみるために、回避的対処のコーピングを選ぶことがあるそうです。
つまり
"首尾一貫感覚の高い人たちのコーピングと、コンフィデンスの値が高い人たちのコーピングが、一致している"
…簡単にいうと
☆良い認知であるといえます。
(正直、一致しすぎてびっくりした…😳)
◯ソーシャルサポートの認知を多くする選手は
周りからのサポートを認知する事で
物事を前向きに捉えたり
どうやって問題に対処したら良いか試行錯誤していけると考えられます。
周りからのサポートを求めることは、決して悪くないし、それによって前向きになることも多くある認知だといえます🙆♀️
けれど、周りな人が愚痴に同調したりするだけの場合には
何も考えられずに人のせいにして、問題解決が出来ない…ということもあると考えられるため
注意も必要だといえます。
◯高い目標へのこだわりの認知は
ストレス対処の可能性を低く捉えるマイナスの認知だと言われている中で
今回の結果は、問題に直接向かっていくコーピングを多く選択する事ができています。
困難な出来事に対しても
それをどのように乗り越えるかと前向きに取り組める選手が多いといえるので
女子サッカー選手にとってはそこまで悪い認知ではないと考えられます。
しかし
コンフィデンスと比べると、ネガティブ感情の対処を行っているとも言えるので
完璧主義にこだわりすぎると、落ち込んで解決するべき問題から逃げてしまうこともあるといえます。
◯ミスを気にする傾向の認知は
他の認知とは違い
この認知をする事で、自分の考え方を変化させながらストレスを軽減させることが出来なくなると考えられます。
これよって、同じ出来事にもストレスを感じる事が増えて
もうダメだ!できない!
という考えに囚われてしまったり
ネガティブな感情を減らすために
ただ感情を表に出したり、愚痴を言うだけになるといえます。
結果・考察(3)
様々な要因と、首尾一貫感覚の関連を調べた所
ほとんどの項目において
違いはみられませんでした!
この事から
なでしこリーグでサッカーをする上で経験する出来事は、首尾一貫の違いには直結はしないといえます。
その中で
2つの項目において違いが見られたので、それについてみていきたいと思います。
◯日本代表歴のある選手は
日本代表になったという
"大きな成功体験"がある事で
その後の困難な出来事にも
"これも成功のために意味があるんだ"と捉え
前向きに対処していくことができると考えられます。
◯戦力外通告の経験がある選手は
この経験から
絶望的な気持ちになり
成功への道筋が見えなくなったり、自分は何をしてもうまくいかないと考えてしまうといえます。
普段の認知では、特に差が見られなかったことからも
無意識の領域で「どうせ無理」といった気持ちが心のどこかに植えついている可能性が考えられます。
他の要因には差が見られなかったにも関わらず、戦力外通告の経験において
ここまで顕著な差が生まれたことは
☆この経験が選手の心に大きな影響を与えるものだといえます。
その中でも、有意味感のみ値に差がみられなかったことから
「戦力外通告の経験にも意味がある」と自分自身で前向きに捉えようとしている選手が多いと考えられます。
結果・考察(4)
最後は、認知と首尾一貫感覚の関連についてです。
◯コンフィデンスの認知を多くする選手は
首尾一貫感覚が高く
◯ミスを気にする傾向の認知を多くする選手は
首尾一貫感覚が低い
ということから
首尾一貫感覚の高さは、認知と大きな関わりがあるといえます。👌
◯ソーシャルサポートと
◯高い目標へのこだわりのような
周りからのサポートや自身の向上心は
起こった出来事を前向きに、意味をつけてとらえるといえます。
本研究の課題
本研究では
最終的にどうやって認知を改善させるの?
競技力向上にはどう繋がるの?
といった具体的な改善案までは出せないのが現状です。
その上で、私の考えを最後に書いていきたいと思います。
どうしたら良いか考えてみた
この研究から私がいえることは
"認知"が、大切だということを知ってほしい。
その上で
ミスを気にする傾向の認知を減らし
コンフィデンスの認知をどうやって増やしていくかが、ポイントになる。
ということです。
試合に出られなかった3年間
戦力外通告を受けた時
自分は下手なんだ…周りの選手のが上手…
こんな風に自信がなくなって、ミスが増える感覚は個人的にあったけれど
今回、ミスを気にする傾向の認知が実際に増えてしまい、首尾一貫感覚も低くなることは明らかになりました。
…まずはそんな自分を受け入れる。
それから、コンフィデンスのコーピングを先にやってみるのも良いかもしれません。
どうしてダメだったんだろう?どうやったら出来るんだろう?
と、問題解決の対処をする。
私がダメだったから出来ないんじゃなくて、やり方が違かったのかな。違うやり方をしたら私もできるんじゃないかな!
と、認知的再解釈の対処をしてみる。
本当につらくてつらくて堪らなかったら
回避的対処をして
リフレッシュの休息を取るのも良いかもしれません。
そしたら自然に
"コンフィデンス"の認知が出来る人になってくるのかなと私は考えました。🙆♀️
どんなに辛い経験でも
どうやってそれを生かすかを考えるだけで
良い経験になります。
何事も、捉え方。🌱
これを読んでくださったあなたが
これまでのつらかった出来事も
これからの困難な出来事にも
少しでも前向きに捉えて、幸せだな〜という瞬間が増えたら嬉しいなと思っています。
まとめと御礼
これからの女子サッカー界で
試合になかなか出られない選手、リーグ所属年数の少ない選手、若い選手、戦力外通告を受けた選手…
そんな選手に対して
ただがんばれ、ただもっとやれと言うのではなく
今この選手はどんな気持ちでいるのだろうか
かけた言葉をどう捉えているんだろう
どんな働きかけをしたら本来のプレーが出せるんだろう
…そんな風に少しだけ違った面から選手を気にかける方が増えたら嬉しいなと
密かに思っています。
最後にはなってしまいましたが
研究にご協力いただいた選手の皆様
シーズン中のお忙しい中、一大学生の研究に正面から向き合ってくださった、各チームのフロントスタッフの方々
短気な私を見捨てず、最後までサポートしてくださった先生
前回のnoteを読んでくださった皆様
試合会場やSNSなど、さまざまな所で応援していただき、差し入れまでしてくださった方々
色んなチームに連絡するのを手伝ってくれたり、卒論どうー?って沢山声をかけてくれたチームのみんな
本当に、ありがとうございました。
1人ではアンケートに協力してもらうことも出来ず、この研究自体が成立しなかったと思うし
途中でもうやだーーと投げ出したくなったかもしれません。
大変だったけれど
楽しく研究をし、楽しく論文を書けたのは
応援していただいた皆さまのおかげです。
応援してくださった方の心に
少しでも残るような内容になっていたら嬉しいです。
ここまで読んでいただき
ありがとうございました!🙇♀️
日本大学スポーツ科学部4年
伊藤 千梅