沙々杯投句より~シリウスの記憶
私が先日、沙々杯なるnote俳句大会(沙々良まど夏さん主催)に参加させていただいたことはnote記事にて触れましたが、その句のひとつがなんと審査員賞である「まど夏賞」を受賞してしまいました。
沙々杯「まど夏賞」受賞
受賞したのはこの句です。
シリウスが 時節の巡り 教えたり
最初は1句だけ考えたらいいのかと思ってたら、周りの方がみんな3句投稿しているの見て「やっぱ3つ要るやん!」と思い直し、あわててひねりだしたこの句が選ばれるとは、人生とは分からんものです。
実は私はシリウスという星に特別の思い出がありましてね。
それを投稿にてお伝えしたら「そのお話、記事で教えてくださいね」とコメントいただいたので、カンタンにですがお話しするといたしましょう(だいぶ遅くなってしまいスミマセン…💦)。
シリウスの記憶
あれはいまから16~17年前になりますかね…。
娘の名誉に関わることなので多くは語りませんが、当時0歳~1歳くらいだった娘は、とにかく夜泣きが凄まじく、しかも夜なかなか寝なくて寝かしてもすぐに目を覚ますという性質を持った子供でした。
子育てしたことがある方は分かると思うのですが、こういうときどうするかというと、とりあえず子供を外に連れ出すのです。ウチはおんぶひもを使用してそこら辺を徒歩というのが毎夜のルーティーンでした。人によってはベビーカーだったり車だったりするそうです。
東京とは言え真冬は寒かったですが、それでも少し楽しかったのは事実。
「おぅ、昨日は南の方やったから、今日は北の方攻めてみよか?」
こんなやり取りがほぼ毎晩繰り広げられていたのでした。
そんな真冬のある日ですね。あそこにオリオン座が見えるとか、そんな感じの話になったわけです。
恥ずかしながら私、理科で赤点を取りまくって留年しかけたくらい理科の知識に乏しい人間です。オリオン座なんて聞いてもそれが星を意味する単語だということすら知らず、ビールの名前だと思っていたくらいです。いや授業でやったかも知れんけど、そんなもんテストが終わったら一瞬で脳から消去するし(笑)。
そんな私に妻は半ば(いや完全に)呆れ果てながらも、冬の星座のこと、冬の大三角形なるものがお空には存在していることなどを教えてくれました。
シリウスという星のことはそのときに教わりました。
真冬の星空にあってひときわ強くて白い輝きを放つ一等星。
「天狼星」とも呼ばれるらしいそのその星だけは、少しくらい曇っていても冬の夜空にはっきりとその姿を見せているのだということを、私は数十年の人生を生きてきてこのとき初めて知ることになったのです。
ちみにそのとき作った年賀状がこちらです。
「冬の星といえば、有名なのが…」とか偉そうに書いちゃってるクセに、私これらの星をこのとき初めて妻に教えてもらったのですよ。ブロキオンとかペテルギウスなんて、こんなの知らなかったらウルトラマンの怪獣の名前かなにかだと思ってたってばさ!
シリウスだけは「スタークルーザー」(アルシスソフトウェア)というゲームに登場したから名前だけは知っていたのですが、まさかそんな大層な星だったとは…。
▲「スタークルーザー」1988年アルシスソフトウェアより発売のゲームソフト。当時ダイナミックに動くポリゴン3D系作品として話題となりましたが、凝ったストーリーや洋画のようなお洒落な台詞まわしもまた魅力的。以前に当noteで紹介した「プラズマライン」の作者である吉村ことりさんがプログラム、グラフィック、シナリオを手掛けられています。
ほどなくして夜泣きソバ…もとい夜泣き娘のグズリが若干マシになってきたので、このような寒中深夜行脚は翌年以降は行なわれなかった…ような気がしますが、このとき教えてもらった星の知識やシリウスの輝きはいまも忘れ難き冬の記憶とともに私の中に刻み込まれています。
これが、私とシリウスを結び付けた物語。
かつて学校で習ったことでも大人になってから見つめ直すと、世界がさらに輝いて見えることがあるものですね。
茅原実里「一等星」
シリウスの話題を出したので、茅原実里さんの楽曲「一等星」を紹介させていただきます。かつて彼女が路上ライブを行っていた時に作詞、作曲を手掛けられた楽曲だそうです。
「幸せだと感じること 苦しいと感じること
見上げてみて 綺麗な星でしょ?
瞬く一等星」
(茅原実里「一等星」より)
なんだかこれを聴くと、真冬に娘を背負い、妻と夜な夜な出かけていたあの頃を思い出します。
しんどかったけど幸せだったあの頃の記憶。
シリウスはいまも変わらず冬の空にまたたいています。