
雑誌探訪「ムー 2024年6月号」④
ムー 2024年6月号(No.523 第46巻第6号)ワン・パブリッシング
あなたの知らない「源氏物語」
日本でも最も有名なミステリーマガジン「ムー」で、源氏物語(げんじものがたり)の特集が組まれていました。
題して、「あなたの知らない『源氏物語』 雅な平安絵巻に隠された恐るべき呪術」。執筆はフリーライターの古川順弘(ふるかわ のぶひろ)さんです。
とても明瞭でわかりやすく、古典文学が共通してもっているミステリーとしての楽しみが伝わる記事だと感じました。
数回にわたって、その内容を紹介していきます。
第四の謎 なぜ藤原道長は『源氏物語』を書かせたのか
この記事では、大きく二つの内容が取り上げられています。
一つは、源氏物語がどのような経緯で書かれたのか、ということです。
源氏物語がいつ書かれたのかについては、諸説あります。ただ、おそらくは一度にあの壮大な物語が編まれたのではなく、何年にも渡って、少しずつ書かれ、読まれていったと考えられます。
この記事では、1001年頃に紫式部が夫の藤原宣孝(ふじわらののぶたか)を亡くした後に書き始められ、1005年頃に中宮彰子(ちゅうぐうしょうし)にお仕えするころには、ある程度まとまっていたという説を紹介しています。
その源氏物語を受けて、中宮彰子に仕えることになった。そしてさらに、中宮彰子の父である藤原道長(ふじわらのみちなが)のバックアップを受けて、源氏物語の続きが書かれていったという説です。
もう一つは、こうして源氏物語の作成に藤原道長のバックアップがあった背景について、おもしろい説を紹介しています。
それが、この記事の筆者による「道長は敵である源氏について、フィクションの中で活躍させることで、現実の源氏を懐柔させる目的で源氏物語のバックアップをした」という説です。
確かに、藤原氏が、政敵ともいえる源氏を主人公とし、その主人公が栄華を極める様子を描くのは不自然にも思えます。
その理由として、源氏の懐柔があったとしているのです。
これも真相はわかりませんが、一つの要因として考えられるかもしれません。
「ムー」は電子版はkindle unlimitedでも読むことができます。
執筆者の古川さんは、「紫式部と源氏物語の謎55」という本も書いています。
執筆者:古原大樹/1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで働く。2024年に株式会社智秀館を設立。智秀館塾塾長。吉村ジョナサンの名前で作家・マルチアーティストとして文筆や表現活動を行う。古典を学ぶPodcast「吉村ジョナサンの高校古典講義」を公開中。学習書に『50分で読める高校古典文法』『10分で読める高校古典文法』『指導者のための小論文の教え方』がある。