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雑誌探訪「ムー 2024年6月号」②
ムー 2024年6月号(No.523 第46巻第6号)ワン・パブリッシング
あなたの知らない「源氏物語」
日本でも最も有名なミステリーマガジン「ムー」で、源氏物語(げんじものがたり)の特集が組まれていました。
題して、「あなたの知らない『源氏物語』 雅な平安絵巻に隠された恐るべき呪術」。執筆はフリーライターの古川順弘(ふるかわ のぶひろ)さんです。
とても明瞭でわかりやすく、古典文学が共通してもっているミステリーとしての楽しみが伝わる記事だと感じました。
数回にわたって、その内容を紹介していきます。
第二の謎 消えた巻、幻の巻があるのか
実は、現存する源氏物語には、失われた部分があるとされています。
そもそも1000年前に書かれたものですから、失われた部分があることは十分にありえます。
例えば、「今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)」は、その多くが失われ、残っていても欠落部分があったりと、明らかに全体が残っていないことがわかるのです。
一方の現代に伝わる「源氏物語」は54帖(じょう)の章立てに分かれており、その全てを完全な形で読むことができます。
ですから、一見は、失われた部分があるようには思えないのです。
しかし、この記事では、大きく2つのアプローチで、源氏物語には失われた部分があるかもしれないことを明らかにしています。
まず第1に、昔の文章の中に、現存しない帖の名前が存在していることです。
「桜人(さくらびと)」「巣守(すもり)」「ひわりこ」「八橋(やつはし)」といった帖の名前が、他の古文に見られます。それらが果たして、紫式部(むらさきしきぶ)によるオリジナルにあったかはわからないものの、少なくともある時代には存在した可能性があるというものです。
第2に、話の流れとして明らかに不自然な点があるということです。
物語の中で重要な役割をする「藤壺(ふじつぼ)」と「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)」がいます。
実は、現存する物語の中では、この二人と、主人公である「光源氏(ひかるげんじ)」がどのように出会い、仲を深めていったかが、十分に描かれていないのです。
そのため、その空白の部分を埋めるとされるのが「輝く日の宮(かがやくひのみや)」という章段です。
物語の中で明らかに重要な人物について、大事な部分が描かれていないことを、昔の人も不審に思ったのでしょう。
今となってはこれらの真偽はわかりませんが、伝説的な帖があるというのは、ロマンを感じます。
「ムー」は電子版はkindle unlimitedでも読むことができます。
執筆者の古川さんは、「紫式部と源氏物語の謎55」という本も書いています。
執筆者:古原大樹/1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで働く。2024年に株式会社智秀館を設立。智秀館塾塾長。吉村ジョナサンの名前で作家・マルチアーティストとして文筆や表現活動を行う。古典を学ぶPodcast「吉村ジョナサンの高校古典講義」を公開中。学習書に『50分で読める高校古典文法』『10分で読める高校古典文法』『指導者のための小論文の教え方』がある。