本の紹介 渡辺祐真(編)「みんなで読む源氏物語」
この本は、源氏物語について、さまざまなテーマで楽しむことができる本です。
源氏物語を読み味わうときに、どんな楽しみ方があるのか。有名なあの人は、源氏物語をどのように読んでいるのか。
そんなふうに、いろんな人の目を通して見えてくる源氏物語を楽しめる本です。
構成と概要は次の通りです。
第1章 『源氏』ってどんな物語?――あらすじと主要人物を一気に知る
書評家・文筆家で、この本の編者でもある渡辺祐真が、源氏物語のあらすじを簡潔に紹介しています。
第2章 紫式部とその時代
国文学者の川村裕子が、源氏物語の作者、紫式部について紹介しています。
第3章 日常づかいの和歌・古典(対談)
歌人の俵万智と、能楽師の安田登の対談です。お二人の古典にまつわる幅広いお話が伺えます。
第4章 『源氏物語』のヒロインを階級で読む
書評家・作家の三宅香帆が、源氏物語に登場する女性たちについて紹介しています。
第5章 現代”小説”としての『源氏物語』――ヘテログロシアの海で
英語圏文学翻訳家の鴻巣友季子が、英訳された源氏物語について書いています。
第6章 謎と喜びに満ちた〈世界文学〉――英語を経由して『源氏物語』を読む効能(鼎談)
小説家の円城塔、ウェイリー訳「The Tale of Genji」の戻し訳(さらに日本語に訳したもの)を行った毬矢まりえ、森山恵の姉妹による鼎談です。
第7章 イギリス文学から考える『源氏物語』――ケア、ピクチャレスク、無意識、コモン・ガール(インタビュー)
上智大学外国語学部教授の小川公代が、インタビュー形式で英文学、ケアの文脈から源氏物語について語っています。
第8章 データサイエンスが解き明かす『源氏物語』のことばと表現――本居宣長からChatGPTまで(対談)
日本語学者の近藤泰弘と、ゲーム作家の山本貴光の対談です。データサイエンスは、文学にどのような貢献ができるのかが紹介されています。
コラム執筆者 ニシダ、宮田愛萌、全卓樹、角田光代
全編を隈なく読んで楽しむもよし、興味のある特集だけを読むもよし。
国文学者による源氏物語の本は数多くある一方、必ずしも源氏物語がメインフィールドではない方々による源氏物語のお話は、自由でおもしろいです。
今をときめく人々の対談や鼎談をゆるっと楽しむこともできます。また、コラム執筆者もユニークでいいですね。
源氏物語自体について知りたいというよりは、源氏物語をこの人はどう捉えているんだろう、という目で読むのがいいと思います。