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『生殖記』と紫色の願い(後編)
時は一月。一年で最も「夢」や「願い」が溢れる時季だ。
神奈川県の寒川神社のお守りの中に「八方除守」がある。これには二つの種類があって「紫色」と「白色」がある。
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このうち、白色は「開運招福、万願成就、心願成就、就職成就」は「拡大、発展、成長」の願いだ。
一方で、紫色の「健康回復、身体安全、病気平癒、怪我平癒、精神の安定
長寿」の願いもある。
こっちもけっこう大事だと思うのだが、時として人はこちらの願いを忘れてしまうのかもしれない。
「次」を目指し続ける日々の前提には、この紫色の願いが満たされていることが必要である。
『生殖記』に出てくる人物はほとんどが、こうした紫色の願いは満たされている人々である。
主人公は人権を奪われている状態にあるとも言えるが、その獲得は「拡大、発展、成長」として認識されている。
そういう意味では、主人公はさまざまな困難に会いながらも、紫色の願いは満たされている状態なのである。少なくとも本人はそう感じている。そう感じることにした、のかもしれない。
人はきっと誰もが、紫色の願いを持っているはずだ。けれども、それを既に与えられているものと思い込むか、もともと与えられておらずこれから獲得するものとして思い込むことによって、これらは白色の願いとして認識される。「拡大、発展、成長」として認識される。
こうして僕たちは、ひたすらに「拡大、発展、成長」を追い求め続ける。
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古原大樹/ブックアンカー
1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで働く。吉村ジョナサンの名前で作家・マルチアーティストとして文筆や表現活動を行う。