【超短編小説】わたしのいちばんふるいキオク
「わたしのいちばんふるいキオク」
知世きいろ
ゆりかごの中に眠るおとうと。自分よりひとまわり小さなおとうとの、カラダ中に広がる、この白い肌に触れてみたい。
わたしは手を伸ばしてみるけれど、ゆりかご台は、わたしが思うよりうんと背が高かった。
遊び部屋から、わたしはお人形を腕に抱えられる分だけいっぱい持ってきて、ゆりかごの前にどんどん積み上げると、そこにはお人形の山。
わたしはその山に、両の足を一つずつ、そっと乗せてみるけれど、お人形の山はすぐに雪崩が起きてしまって、わたしをそこに留めてはくれない。
もう一度、もう一度。もう少しで手が届きそうなのに、そのあと少しが難しくて、わたしは苦しくなる。お人形の尖った部分を踏んでしまった、裸の足の裏の痛み。
足の裏が赤くなって熱を持ちはじめる。
木で作られたゆりかごの、網のその目から覗くその白い肌が、触れてと言わんばかりに、わたしを見つめている。
はちみつのような匂い。
わたしの官能がいっせいに振動する。
わたしを戦慄させ、同時にわたしの戦慄を止めるこの優しさは、なに。
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次回もお楽しみに。
知世きいろ
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