「法隆寺」を堪能する-第3回~お宝と七不思議
前回はこちらです。
歴史を感じながらランチを堪能した後、早速、法隆寺お宝の詰まった「大宝蔵院」へと向かいました。
大好きな「百済観音」を再度じっくり眺めるためです。
大宝蔵院と特別展
もう一度「百済観音」に会いたい!
今回、大宝蔵院の看板を見て気付いたのですが、ここ自体が「百済観音堂」なのです!(アップ写真がピンボケですみません💦)
百済観音が鎮座されるためのお堂として建てられたとは、知りませんでした!
だから奥のコーナーを独占して贅沢に安置されていたのですね~
思わず立ち止まってしまうほどの迫力は、この配置にもよるのかもしれません。
相変わらず、2mを超える長身でこちらを見下ろすお姿は、迫力はありがらも優しさを満面に讃えたまなざしに魅了されてしまいました。
謎が多いだけに、かえって魅力も倍増するような気がします。
今回はこんな本を買ってみました。
百済観音の様々な角度の写真と著名人のエッセイが載っているので、見応えと読み応えがありそう!
中にはとても固い文章のものがあって、さすがに理解が追いつかないのもありましたが、百済観音に関しての皆さんの思いが綴られています。
圧巻の「法隆寺特別展」
令和6年 法隆寺秋の特別展「法隆寺を彩る動物たち」として、今年9月27日~11月24日まで開催されていて、せっかくなので鑑賞しました。
ここも友の会会員なのでフリーで入場できましたが、支払ってもたったの500円です。
安いので期待せずに入りましたが、充実し過ぎる内容に驚いてしまいました。
なんせ常設の「大宝蔵院」よりもはるかに点数は多く、平成になってから復元された物も展示されていたので、かなりの値打ちがありました。
撮影禁止なので写真はありませんが、雑誌などから引用します。
特に注目したのは「玉虫厨子」。
先ほど大宝蔵院でみた本物の実物はかなりの劣化で色褪せていて残念だったのですが、これが色鮮やかに復元され、描かれたものがはっきり確認できたのです。
前回の西院伽藍で触れましたが、お釈迦様の前世の自己犠牲の様子もその表情までちゃんと見て取れ、感激してガン見してしまいました。
残念ながら「百済観音」の再現複製まではありませんでしたが、ものすごい点数と貴重な展示に、見て回った後はすっかりくたびれてしまうほどでした。
その他、法隆寺のお宝のメインではなく特に脇役の動物たちにスポット当て、また違った趣旨の展示コンセプトでした。
それにしても明日香の古墳にも見られる「四神」もそうですが、古代から日本の仏教は、動物たちを大切にして崇め、植物への愛着も含めて、やはり自然神からなる神道を基本にした独自のものだと感じました。
法隆寺七不思議
友の会に入会した時に配布された「法隆寺手帳」には様々な法隆寺や聖徳太子、聖徳宗に関しての細やかな情報が記されているのですが、その中に昔から都市伝説的な話として伝わる法隆寺の7つの不思議なことがあります。
今回は、それらを裏テーマとして、できるだけ確認して、私なりに検証したいと考えていました。
1.蜘蛛が巣をかけない
結論から言うと、蜘蛛の巣はありました。修復中の東院伽藍南門の柵に思いっきり蜘蛛と巣を見つけました。さらには尾ひれが付いて鳥の糞もないと言い伝えれていますが、おそらくこれも事実ではないでしょう。いくら法隆寺に霊力があったとしても、自然界を牛耳ることはできないです💦
2,南大門前の鯛石
かつて近くに流れる大和川が氾濫した時、水はこの鯛石を超える事はなく、この石より先には浸水しなかったと言い伝えられています。
この事から鯛石を踏むと水難を逃れられるという一種の「おまじない」となっていますが、単に地形的に北に向かって緩やかに高くなっているからでしょう。
城と寺院は昔から高台に建てることが鉄則なので、ここも例外ではないはずです。
3,五重塔の相輪に刺さる鎌
五重塔には4つの鎌がかけられています。
東京スカイツリーもこの五重塔に倣ったほど、建築学上優れた建造物なのに、鎌が見るからに雑にかけられているのは何とも不思議です。
その理由は以下の2つだと考えられています。
①落雷避け
これで雷が避けられるなんて本当でしょうか?
現代人にも解明できない科学的なことも古代人は知っていたのでしょうか?
②信仰的な理由
太子信仰の始まりともいえる事が関係しているのかも?
聖徳太子没後、斑鳩宮(現:東院)に住む太子の王子・山背大兄王は蘇我入鹿に攻められて自決し、一族は滅んでしまいました。
太子とその一族の魂を鎮めるために創建されたのがこの五重塔を含む西院伽藍だったので、この鎌には鎮魂の意味があるとも言われています。
ずばり私は②だと思います。
こんなもので落雷除けになるなら、他所の塔にもみられるはずです。
4,伏蔵の不思議
金堂の北東角、経蔵の中、廻廊の南西角、五重塔の前に3ヶ所。
計6ヵ所に隠れた蔵があると言います。
聖徳太子が将来、仏法が滅びた時に役立つものを保管した蔵と伝わりますが、太子の霊力に護られているため開けると災いが起こると信じられ、誰も確認したことがないそうです。
開けられへんかったら意味ないや~ん!
今でも十分に国宝や重文を保有している法隆寺ですが、これらの伏蔵の中にはさらにとんでもないお宝が眠っているかもしれないと思うと、法隆寺の隠し玉は、まだまだ底知れないですね。
五重塔の前に石を見つけましたが、調べてみるとこれは伏蔵ではなく「礼拝石」というもので、平安時代末期までは仏様から離れてお堂の外から参拝するのが当たり前だったので、ここから拝んだそうです。
5,片目がない蛙
東院伽藍の西南エリア内の「聖徳会館」の東南に「因可池」があり、この池に生息する蛙にはなぜか片目だそうです。
これを知った時、ここにはトイレがあっただけで、おそらく立ち入り禁止エリアだと思ったのですが、やはり一歩も先へは入れず、Googlemapでチコさんが確認すると、池の存在すら無くなっていました。
聖徳太子が勉学に集中している時に、この池の蛙の鳴き声があまりにもうるさいので、たまらず筆を投げたらたまたま蛙の片目に当たってしまい、以後この池の蛙には片目しかないという伝承があります。
実際に今は池がないので確認もできませんが、そんなことはないでしょう。ただ単に太子の勤勉さを伝えるための作り話なのでしょう。
同時に短気だった事もわかりますが…💦
6,夢殿の礼盤の下に水が溜まる
礼盤とは、お坊さんが経を唱える時に座る台座の事です。
素直に想像すると人の体温によりできた結露が溜まったものではないですか?
独特の八角形をした夢殿内の条件とその礼盤との何かしらの現象のせいだと思います。
今回も目視で確認しましたが、石台の上に畳の高座が置かれていましたが、湿っている様子はありませんでした。
お経を読み始めたら長時間座ったままになるので、そういう事にもなりそうな気がします。
7,地面に雨だれの穴が開かない
正直なところ、これは未確認です。
しかし実際に、雨だれの跡はあるらしい。
ただ、1000年以上もの年月を考慮するとその痕跡はかなり少なく、古代人の工夫が凝らされている事が伺われるのです。
例えば、
・基礎に大きな石を積み上げている。
・屋根が雨水の流れを抑える構造。
下の写真のように2段の石の基壇は法隆寺のみのもので、よく見ると屋根からの雨だれは基壇には落ちないようです。
この2重基壇こそ木造建築物を守る最大の味方なのかもしれません。
結局のところ、七不思議は法隆寺には神秘的な力があるという事から盛られた話がほとんどですが、外観の美しさをいかに保ちながら天災にも備え、崩壊を防ぐための設計を古代人ができた事に驚きます。
Cafeこもど
特別展の内容がモリモリだったので、すっかり疲れた私たちは、とりあえず車に乗り込んでどこかで休憩しようと物色していると、チコさんがすぐに目ざとく「cafeこもど」の駐車場を見つけて車を停めてくれました。
雨は、そこそこ降ったり、小降りになったりの繰り返しです。
このカフェのすぐ北には法隆寺の「東大門」があり、ちょうどこの辺りが法隆寺東西の中間あたりなのだとわかり、近いうちに再訪する予定があるので、早速その時のランチはここを予約しました。
ミコさんのプレゼン力に舌を巻く
私の著書を読んで下さっている方々には周知のことですが、ミコさんは「食いもん奉行」とあだ名されるほど食べることが好きです。
私の一番の興味は歴史や寺社なのですが、ミコさんは「食べる事」と「土産物」であり、そのために参加しているといっても過言ではありません。
そして何より能力を発揮するのが、自分のおススメを語るプレゼン力なのです。
話しながら、スマホの画面をこちらに向けて、話の内容に相応しい画像を次々とチョイスしながら話すのは、超絶神業です!
私はこれを「ミコさんの紙芝居」と呼んでいます。
彼女はSNSに特に力を入れているわけでも、ITに強いわけでもないのですが、「食べ物」に関して語る時にはスイッチが入り、相手が聞く体制かどうか、興味があるかないかには関係なく、ひとまずワンクールは喋り倒しながら画像を選択し続けるのです。
毎回、一度は参加メンバーの誰かに披露しています。
この日はここでスイッチが入り、私とチコさんはもう逃れられず「紙芝居」に最後まで神妙に聞き入っていました。
今回立ち寄ったところマップ
【参考】
・世界遺産の楽しみ方
・法隆寺の観光ガイド
・寺院の歩き方 山田雅夫著
・古寺行こう 法隆寺
・法隆寺友の会手帳
「法隆寺」を堪能するシリーズ
①第1回~プロローグ
②第1回~東院伽藍
③第1回~西院伽藍
④第2回~藤ノ木古墳
⑤第2回~周辺の寺々
⑥秋の斑鳩と東院伽藍の深堀り
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