橋本治『ひらがな日本美術史2』は、鎌倉・室町時代を中心とする中世の巻。
第1巻を読んだとき、私は「橋本治の文章を通すと、作者の体温や息遣いまでもが感じられるようだ」と書いたけれど、第2巻ではそれに加えて、ある作品が作られてから現在に至るまでの無数の人々の存在を感じられるような記述が多かったように思う(私は美術に詳しくないのでそういうところばかりを読み取ってしまう)。
例えば、そんなに字が上手くない和歌の天才・藤原定家の筆による書がなぜ“奥深い魅力を湛えた家宝”となったのか、あの有名な“源頼朝の肖像”が実は別人の肖像画だったのでは?という話から、人々の間で共有される“イメージ”がいかにして醸成されるのか。そこには長い時間とたくさんの人々が関わることによる価値観の変化がある。
時は中世、その時期の日本における美術を取り巻く状況はこんな感じ─。
バロックとは、均整の取れたルネサンスに対する“歪んだ真珠”のこと。
中国との交流が再開する時期でもある。
当時の感覚で言えば中国は“本場”で、そこから来る絵は“新しい”。そういうものを取り込んだときのものの見方や価値基準の置き方は、良くも悪くもとっても“日本人らしい”。だから、日本人が昔からしていた考え方を知ることができるのがこの第2巻なのです。
“日本人らしい”考え方、それは例えば前例のない考え方に対する態度。
または、極端に権威に弱いところ。