📖世阿弥の「風姿花伝」が有益情報満載だったからシェアハピ

こんにちは、藤井です✋

「俺の家の話」を観てからというもの、人生で初めて「能」に興味を持っている最近。

能の生みの親である世阿弥さんがどんな人だったのかも興味が出たので
図書館で「風姿花伝」をとってもわかり易く解説してくれている本を借りて読んでみました。

読んでびっくり。むっちゃ面白かった。

もっと古臭くて抽象的なことが書いてあるのかと思っていたけど、
むちゃくちゃ具体的やし、「へー」と思う教えばかり。
能はカケラもわからない一般人ですが、役に立つ事たくさん書いてありました。
世阿弥と一回飲みたいと、思うような内容でした。笑

3年くらい前、能の本番を観させていただく機会があって一回生で観てるんですが
その時は全然興味ないし、何言ってるかわからないしで
究極にお金ない時期で死ぬほど働いてたから本番始まってすぐ気絶するように寝てしまったんですよね。なので全く観てないという。。。

3年後に興味持つとかその時は知らんからさあ。もったいないことしたなあ。

そんな話はどうでもいいんですけど、能をひろめた世阿弥さんが
日本でおそらくはじめての「演劇論」を書き記した「風姿花伝」。

演劇論としてももちろん素晴らしいんだけど、
「これ自分の仕事に置き換えて読んだらどんな人にも当てはまるんじゃ？」
と、思う内容がいっぱい載っててすごく面白かったんでシェアハピ。

▼「風姿花伝」って？

一言で言えば「世阿弥が子孫に能を伝えるために書いた秘伝書」です。

世阿弥は晩年、能をどう伝承していくかにとても力を入れていたみたいで
後世の能楽師たちに、演劇論と「能楽師としてどう生き抜くか」をマニュアルにして残したんですね。

芸術について書いた本というよりは、もっと左脳っぽい感じで
言い分が非常に理路整然としてて、誰が読んでもわかるように書いてある
「世阿弥、頭のいい人だったんですね」がひとめでわかる本。

【世阿弥の演劇論】

▼「花」という表現

世阿弥さんはものごとを説明する時、好んで「花」という言葉を用いたそうで、度々出てきました。
「花」は、大切な物とか重要な事とか価値のある物を指した比喩表現。日本語って美しいよね。

◆珍しきが花　／　新しきが花
常に咲いている花より、四季折々の花の方が魅力的なのは人がそれを見て「珍しい」「新しい」と感じるからであり、
人が見て「おっ」と思うのは新鮮味があるものだ、という考え。

常に新しい物や珍しいものを作り披露し続けろ、そうすれば末永く愛されるっていう事。
変化することより変化しないことの方がよっぽどリスキーだってよく聞きます。要はどれだけ人を楽しませられるか、面白がってもらえるかだよね。

◆老い木に残る花
身体芸は若い時にこそ輝く一過性の芸術だというのが定説だったのに対し、
世阿弥は「老いの美学」を提唱した初めての人だそう。

体が若い時のように動かなくなっても、動かなくなったからこそ深みが増す表現がある。

◆秘すれば花
勝負事に勝つための戦略論。
内容よりも、時が来るまで隠すこと、明かしてしまわないことが大事。
なかなか見ることができないものや、ここぞという時に出てくる「とっておき」感こそ、インパクトと意外性を与えることができる。

新しい事を考え、ここぞという時まで「秘すれば花」で取っておく事。
ここぞというタイミングで披露することで「珍しきが花」「新しきが花」を産む。その繰り返しなんだと。
これらの「花」は表裏一体なんですね。

▼「離見の見」

客席から見る自分の姿を常に意識せよ。
客席や、共演者と一体になるようにしろ。という有名な教え。
「俺の家の話」でも出てきましたな。

自分だけ盛り上がったり、位置を見失うな。
自分を関係的なものとして考えろ、中心じゃない。
観客と自分の関係性を忘れてはならない。

っていう事なんだけど、これは本当にその通りですよね。
自己に没頭して観客を置いてきぼりにするくらいの表現も芸術なのかもしれないんですが、
私は個人的には全くそう思わないので、全面的に同意です。笑

▼却来

年取ったからこそ、初心者用の作品をやるべき。若い役者ではでない味が出ているはずという演劇論。

あと、年取ってからなら「タブー」を混ぜていいという事も説いてる。
若い役者がやるとよくないことを歳をとった役者がやることで新しきが花、珍しきが花になり、新鮮味が出て自身も観客も楽しめる。

また実力が伴う遊びは嫌味がなく、それすら芸術であるという考え。
なるほどなるほど。若い奴は基本に忠実にやれってことでもあるな。

世阿弥さんは、こと身体芸において「心身が若い時にこそ輝く」が定説だった時に初めて、一生かけて完結する「生涯芸」であるとした人なんだそうです。

若い時には若い時のよさがあり、体が老いてもその時のよさがある。
「老い木に宿る花」として、名人や達人と呼ばれる領域に達した人間にしか表現できないものがあるのだ、とした。

年取ったらお役御免じゃなくて、その時その時に輝く方法があるんだよってとても素敵やないか。と思ったのでした。

【マーケターとしての才能】

世阿弥さんは優れた能楽師であると同時に、市場を読む力にとても長けていたそうです。
どんな作品がだれにどんな風に響いてどう流行るかを狙って作っていたというんだから本当にすごいよね。

源氏物語を取り上げたのも、当時の貴族に人気だったからだといいます。
市場を意識せざるを得なかった理由として、能の興行主が神社や寺からその時代に権力を持っていた貴族連中に変わっていったから、というのがあります。

何も考えず技術を磨くことに集中できていたけど、スポンサーを引き留めて飽きさせないための工夫が必要になってきたんですね。

市場を読む才能があったのか、能を廃れさせないために身につけたのかはわかりませんが
ビジネスとしての能を見ると、世阿弥がいいプロデューサーだったことが良く分かる。

▼「新結合」

能はオリジナルではないってご存知でした？
能は、既に日本にあった伝統的な踊りや歌を源氏物語などの文化作品と掛け合わせて作ったものだそうで
全くのオリジナルというわけではないんだって。

既にあるもの同士を掛け合わせて新しいものを作るテクニック。
これ、経済学の世界で「新結合」と呼ばれるものだそうです。
今のモノ作りの現場では当たり前に使われてるけど、当時は新しかったでしょうね。

びっくりするのが、「新結合」は「マネジメント」を書いたドラッガーより
更にひと世代上のヨーゼフ・シュンペーターさんが説いた理論らしいんだけど
その500年くらい前に世阿弥が既にやってたし遺してたということ。
世阿弥さん室町時代の人やから、だいたい1400年代の人。シュンペーターさん1900年代の人。先見どころじゃない。笑

世阿弥さん、信じられないくらい考え方が柔軟だったんだろうねえ。
ペンとアップルでアッポーペンですわなあ。

▼「序破急」と「かるがると機を持ちて」

「序破急」は有名な演劇論ですよね。
「はじめに」「徐々に盛り上がり」「盛り上がりのピーク」という順番を意識せよ、そうすればそれぞれのシーンでどのような芝居が必要かわかるという考えなんだけど、

が、しかし「かるがると機を持ちて」という逆説も説いてるんです。
簡単に言うと「序破急」にこだわりすぎてうまくいかないくらいなら守らなくていい。自分のやり方やリズムにこだわるんじゃなくて場に自分を合わせろという意味。

役者の気持ちがどうこうとうのは二の次で、大事なことは場の温度とタイミングを見極めること。
それを見極められる役者が良き役者ってことなんですって。

観に来るお客様や、スポンサーをどうやったら楽しませられるかを常に意識していたからこそだと思うんですよね。
ずっと飽きずに愛してもらえる方法をいつも考えていたんだろうな。

私は、芸術の力を信じていますが、芸術だからといって受け取る側を全く意識しないのは大間違いだと思っています。

もちろん、受け取る側の事ばかりを考えて作品そのものが信念も何も無いのは同じく大間違いだと思うから、「全く」意識しないのはどうかと思うという話。

だから世阿弥さんが「芸術家は認められんでええんじゃい。霞食って生きていけるんじゃい。」みたいな考え方の人じゃなくて素晴らしいなと思った。
芸能だって特殊なだけであくまでも一種の職業だし、芸術家だって一人の人間だもんね。

【世阿弥さんが行った画期的なこと】

▼物語を具現化した

今だと当たり前すぎて「あ、そっか！」と思うんだけど、当時は文学以外のエンタメがなかったんですよね。
世阿弥が能を大成し、「源氏物語」等の文学作品を視覚化（舞台化）したのは革命だったそうです。

日本最古の小説実写化みたいなもんだよね。そら流行るわ。

▼遠見

遠藤憲一さんじゃないよ。えんけん。
物語の場所を説明する台詞を冒頭に入れたパワーマイム的な演出。

能の舞台はほぼ素舞台だから、小道具はあれどセット組んだりしない中で、セリフで「あちらに見えるのが〇〇山で～」などの説明台詞を入れることによって、お客さんが「今ここにいるのか！」とイメージしやすくしたらしい。

没入感もアップするし、出てくる場所を具体的にして小旅行した気分になることを狙っていたそう。

【世阿弥に学ぶ、人生で大事なこと】

能に関わる色々な教えを、自分の人生や仕事に置き換えて考えると、生きるコツというか大事なことがたくさん書いてありました。

▼男時(おどき)と女時(めどき)

能はもともと「立会」という勝負形式で披露されていた。
勝敗は「どっちが見栄えが良かったか」「どっちが観客を沸かせていたか」というラップバトル形式で決めていたそうです。

で、自分の方に波が来ている時を「男時」向こうに波が来ている時を「女時」と言ったそうなんですね。今も言うのかな？フェミニスト激怒ですね。笑

男時と女時はどちらも平等に必ずくるものであって、人間の力でどうこうできるものではない。循環しているもので、宿命。だから女時を悲観する必要は一切ないのだと世阿弥さんは言います。
悪い時は、いい時への準備期間。敗北は、次の勝利へのステップ。

女時に躍起になっても、消して勝つことはできないしいいことはないから、じたばたするよりは準備に充てるべき。男時に備えて、時間を無駄にするな。と、女時の内にどんなことをするのがいいかも書いてます。

じっと機を待って男時に自分の特技で勝ちに行く。そして男時は必ず来るから信じろ。「信あれば徳あるべし」とも言っています。

いい教えだなあ、と思いませんか。違う言葉でこれまでに百億回言われてるだろうけど、世阿弥さん600年前から言ってるんだもんね、、。
人生の女時には、この考えを思い出したいと思います。

▼「住する所なきを、まづ花とするべし」

「変化を恐れずに、日々を更新し続けろ！」という言葉。
一つの場所に安住しないことが花＝大事なんだよ。って意味。

自分の得意なことだけを続けたり、居心地のいい場所にずっといてはだめ。
反応が良かったことをさらおうとしてはいけない。自己模範は悪。
常に、変化を。変化こそ成長。自己模範ではなく自己更新を心掛けよという教え。

一度や二度の成功にしがみついてはならない。一度大いに喜んで、手放しなさい。しがみつかずに新しいことを初め続けることが大事なんだって。確かにオブザイヤー。

これを読んで、どっかで見た「転がり続ける岩に苔は生えない」みたいな言葉を思い出した。
一箇所に留まり苔が生えた岩はもはや景観の一つでしかない、転がり続けろ、活動をやめるなといった意味なんだけど、
本当にそう。活きるのをやめたら終わりなんだよな。

【おわりに】

世阿弥は生涯芸術を説いた人だから、年取ることは恐怖ではなく楽しみであり、自己の更新を生きる喜びとせよという事も言っています。

できないことができるようになったり、新しいことを学んだり、行ったことないところに行き、見たことがないものを見ることが、人生の本当の喜びなんだろうと思います。

世阿弥さんはどんな人やったんでしょう。私は解説本を読んだに過ぎないけど、心の深いところにいい栄養をたくさんもらったような気持ちになりました。

余談ですが能は場所を選ばない芸術で、世阿弥自身もいろんな場所で能舞台をプロデュースし、自ら舞ったそうです。
舞台でなくても屋外でも役者さえいれば世界を作ってしまう。装置も楽器もいらない、究極の身体芸なんですね。

ブリコラージュといって、特別なものはなくてもありあわせの道具と素材でモノを作ってしまうという意味の言葉があります。
例えブリコラージュで作った舞台であっても、本物の役者がいて、観客が居さえすれば立派な舞台。

世阿弥ほどの人がお膳立てされなくてもどこでも舞ったのであれば、我々がどこでなにができないと言うんでしょう、という気持ちになります。笑

まとめると「ごちゃごちゃ言ってないでやれ」なのかも。笑
ごちゃごちゃ言ってる暇があったら新作書け、練習しろ、素舞台でもやれ、お前は役者だろ！という事なのかも。

こうやって書くことで自分でも思ったことをまとめられるんだけど、そういうシンプルなことなんだろう。了解しました。
以上、世阿弥さんはロックやったという話でした～。

では、また～✋