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読書人間📚『疼くひと』松井久子


『疼くひと』松井久子

2021年2月 初版
同年9月 7版発行


『疼くひと』松井久子

2021年2月 初版
同年9月 7版発行



__愛の胚胎__

世の中は、いえ、まだ若い世代にはこれを想像しろとは経験値がない中で当たり前で、老年の男女たちの性愛を許せないものでもあるでしょう。
70を過ぎれば心をときめかせる事も、体の疼きもないものとまるでタブーの様に触れてはいけない、あるいは感知されずにあるもの。

女性は閉経を間近にする年齢とともに膣萎縮など物理的に交わることが難しくなる場合もあります。膣に注射する治療もあるものの高額。痛みを伴うなら交わりをお終いとする人も多くいるでしょう。交わりの相性に拘るのも幼稚なもの。
けれどもし心ときめく相手が現れ、体も自由がきくなら当然本書のような世界もあるのでしょう。または挿れることが全てではない交わりもあるでしょう。

体は心の器として劣化していくものの、心が年齢と共に錆びていくものではないと私たちはある時気づきます。
"心はいつまでもハタチ" なんて、若い時分には理解できない冗談だったはずが、今やっと私も50代まじかとなり精神は30代あたりに突入したくらいだと感じます。
ならば70代、私の精神はやっと50代に到達するのでしょう。
そのとき老いらくの恋に出逢えたならようやく大人の情事に溺れ生命の悦びを感じられるのでしょうか。




装画 緒方 環
装幀 鈴木久美



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