読書人間📚『すぐ死ぬんだから』内館牧子
『すぐ死ぬんだから』内館牧子
2018年8月刊行 / 講談社
2021年8月、文庫化、一部加筆・修正。
のっけからひきが強い。
60代まで身の回りをかまわず、あと10歳若かったらと嘆くハナ、78歳。夫が倒れた事から思いもよらない事実を知る。
途中、これは辛いと胸がきゅうっと痛みだした。
結末はどうせみんな白い箱だと、逝きつく事ばかり考えるのは不健康. . . 怒りにも、怨みにも、憎しみにも止め時がある。だけどそれはいつなのか、同じ立場ならどうするだろう、そんな事とは無縁で終えたい。私は赦せないと胃がキリキリします。
足掻いて、妬んで、身をよじった先に、菩薩の心は生まれるのでしょうか。私はまだ "赦せる年代"ではないのでしょう。その境地に立つまで辛い試練をまだくぐらなくてはならないのでしょうか. . . 未婚の私には想像がつきません。
それはそうと
『姻族関係終了届』と言う存在を初めて知りました。俗称は"死後離婚"。ひょぇーこんなものがあるんですか! 確かに、舅、姑に虐め抜かれても、配偶者の死後も面倒を見なくてはならない、ギャンブルや、相手の不貞を我慢し続け、子や経済的な理由で離婚が難しいなど、耐え忍んだ人生を配偶者の死後こそ、相手の両親、兄弟姉妹、全ての縁を切りたくなる。そんな時、法的に修了させ無関係になれる制度。しかも、届けには姻族サイドの同意は不要、姻族側に通知もされない戸籍上の手続き。遺産相続、遺族年金の受給に影響はない。
そして、更に『復氏届』(ふくうじとどけ)を出せば旧姓に戻せる。晴れて墓こそは別!なんとスッキリなんでしょう! 溜飲の下がる制度です。
ここまで書くと、夫の裏側、愛憎の物語かと思いきや、本作は高齢者の外見に関する物語。
高齢者は「セルフネグレクト」になってはならないと教えてくれます。ネグレクトと言うと、育児放棄に対してよく使われますが、自分を放棄する事なく自分に関心を持ち、身なり、容貌を整え、他人からどう見えているか"気働き"をする事、自分の経済的範囲の中で高齢者が外見への意識を持つことの大切さを教えてくれます。高齢になり、生まれ持った美貌も関係なくなるからこそ"意識"を持つ事の重要性「人は外見である」と言い切られ背筋が伸びます。
老衰ではなく衰退。足掻くのではない美しい衰退でありましょうと言う。
ちょっと口は悪く辛辣。だけど気っ風がよく、意思が強く、物怖じしない爽快なハナ。こんな風にはなかなかなれないよなあと、他人事のように感心して終わってはいけません。全ては意識改革。先がなくても棄てない(なげない)。棄てない人に運は必ずやってくる。
. . . でもこの物語は、夫が生きていたら八つ裂きであり、赦してはいなかったであろう物語. . . うぅん、おもしろかった。
カバー装画 太田侑子
カバーデザイン 高柳雅人
写真ではわかりにくいですが、文字が大きい。どなたにも無理なく読める大きさにしてあります。目の悪い私にはとても有り難いです。優しさが嬉しい。
🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。
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