フランスの秋の香り
1997年10月の終わりごろ…
おぼろげになった日付けの記憶
ちょうど今ごろの時期に、わたしはフランスを旅していました
数少ない海外旅行経験、そのひとつがフランスです
久しぶりにその旅のアルバムを開いてみると、切符や明細なんかも挟まっていて、
どうやら10月25日から11月2日までの8日間だったもよう
当時は若くてお金もなかったし、携帯もまだ持っていなかったし、デジカメもありませんでした
なので、飛行機は乗り継ぎ便で安く済ませ、ガイドブックとフィルムカメラを携えていました
ホテルやレストランの予約はどうしてたんだっけ
方向音痴だけど迷子にはならなかったのかな
ネットを使わないなんて もう信じられない
いつの間にこんなデジタルの時代になったんだっけ
体の一部みたいになってしまった携帯がなくては、もう生きていけない
パリとアヴィニョンに数泊ずつ
まだアナログで ゆとりのなかった頃の旅
*
街路樹は色づいていて
わたしはセーターに大判のストール
コートは着ていないので 寒くはなさそう
記憶が少しずつ蘇る
香ばしいにおいがした
日本では見かけない 焼き栗やさんのスタンドが目に入った
10月の中頃から 街角に出始めるという秋の風物詩
焼き栗やさんを見かけたら、パリの人たちも “秋がきたねぇ” なんて言うのかもしれない
屋台というよりは、もっと簡易的なカートみたいなもので
天津甘栗みたいなのを想像したのだけど、栗はただ焼いただけで 味付けも何もなかった
大粒の焼き栗を 小さな紙の袋にコロコロと入れてくれた
手渡されると あったかくて
皮を剥いてその場で食べた
素朴すぎる味に意表を突かれ
なんだか気持ちがほころんだ
おしゃれなレストランでも食事をしたはずなのに、くっきりと思い出すのは 街のパン屋さんやカフェやベンチ
そんな外国の日常風景が、とても新鮮で嬉しかった
バゲットのサンドイッチやコーヒー、そして焼き栗
わたしの中のフランスは とても香ばしい国
*
当時はスマホやデジカメがなくて、写真は現像してみなければどう写っているのかわかりませんでした
当然、たくさん撮っても現像してみたら失敗…なんてのがほとんどで
だから とにかくたくさん撮って
数打ちゃ当たる方式で
いや、これは今もなんだけれども
目に映るもの どれもが新鮮で、モノクロとカラーのフィルムで街をたくさん撮りました
そしてプリントした中から選んで 一冊のアルバムにまとめました
この記事の写真は、アルバムに貼っている写真を スマホで撮ったものです
たしかにこの時 この景色の中にいたんだな
今も変わらずにあるのかな
モノクロの写真のなかで 気に入った3枚を、さらに大きく伸ばして 額に入れて飾っています
この26年のうちで6回引越しをしたけれど、必ず家のどこかに飾ってきていて、今はリビングの壁に3つ並んで掛かっています
仕事を辞め、実家を離れ、上京してきた年…
自分自身で いくつかの大きな決断をした年でした
懐かしいな、若かったな、こんな時代もあったね、なんて
いい思い出です
この先の 残りの人生にも、この時ほどの大きな決断をすることなんて まだあるのかな、もうないのかな
そんなことをぼんやり思う 秋このごろ
みなさんいかがお過ごしですか
*
フランス旅行で自分へのおみやげにしたのは、クリアなガラスの花瓶
まっすぐなシンプルなもので
底にちょっとしたデザインがあって
初めて 自分で自分に買った花瓶
大きすぎず 小さすぎず
太すぎず 細すぎず
重すぎず 軽すぎず
初めて花瓶を買う方には、まずはこういうのがおすすめかなと思います
どんな花にも似合うし、たった数本でもサマになるので ずっと活躍しています
花瓶も好きで これまたずいぶん増えました
そんな花瓶のお話も またいつか、別の機会に
それではどうぞ よい一日を、よい一週間を
#131. 『 フランス 』
⭐︎フランスの秋 焼き栗はほかほかで ただほくほくとしてた「メルシー」
⭐︎ Bon courage 一番透明なきもちで一番好きな花を挿す朝
ー ちる ー