【読書めも】『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』読んでみた。
こんにちは。
毎日本を読むフリーランス・ちなです。
今回ご紹介する本は、『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』。
東洋哲学について、おもしろく教えてくれる1冊です。
冒頭で、西洋哲学が「無理」になる感じ、わかりすぎて「この本、読めるぞ…!」と良いかんじのスタートダッシュを切れました。
著者は東大に合格した経歴を持ちながら、32歳で無職になり、離婚。
実家で布団にくるまりながら、
「なんか、めちゃくちゃ虚しい」
↓
「この虚無感をどうすればいいのか?」
そう悩んでいたそうです。
その答えを求めるうちに東洋哲学に出会い、
「本当の自分てなんだろう?」
↓
本書のタイトル「自分なんて、ない」というすがすがしい結論に至り、虚無感から回復したよ!という内容。
まず、この軽さがよい。
読みやすいという点において。
そもそも虚無感を感じるような人・時期・状態に大事なことって、堅苦しいことや小難しいことでなくて「まあ、そんな難しいこと考えずにさ、ほどほどでいいんじゃない?」って雰囲気だと思う。
この本の感触がそんな感じだったので、まずとっつきやすさが入りやすくてよかったです。
これは書店で購入しました。たくさんの自己啓発本が並ぶ棚の中央付近に平置きされていたのが目に留まり、黄色い表紙とキャッチーなタイトルに引かれて手に取ったのがきっかけです。
馴染みのある哲学者の名前から、初めて知る名前まで、7名の哲学者がユーモアたっぷりに紹介されます。
文章は軽快で読みやすく進んでいきますが、その中で特に印象に残ったのが「学校の教室にいたらどんなポジションか」という設定で説明している部分。
彼ら、教室で学ぶことある?
ばっらばらで面白い。
特に空海は、他の哲学者と比べて異質な存在。
空海、天才の陰陽比率においては大変稀少な1%の陽キャなんですね。レア。
しかも空海、ドロドロした政治の中にいながら、誰ともケンカにならず、「空」を体現し、仏教の精神で生き続けたそうです。すごい。
この立場、現代人にも通ずるところがきっとありますよね。信じるところを貫きたいけど、そうもいかない。葛藤で押しつぶされそう。ってことが。
空海、どうしてそんなことが可能なのか?
その秘密がまさに空海の伝えた「密教」にある、というんですね。
密教が他と違ったのは社会を肯定したところ。
仏教にとってタブーな「性」。
そのエネルギーさえも肯定する。
なぜなら性のエネルギーも宇宙の一部だから。
さらに「怒り」のエネルギーも肯定する。
さらにさらに「大欲」も肯定する。
欲のスケールをでかく考えることで、
「お金をいっぱいゲットしよう」
↓
「お金をいっぱいゲットして、いっぱい人を助けよう」(大我)
「自分」を消して人助け、人のためを究極とする。
ふーーーん。
空海、ほんとにすごいんだ…。
(読み直しながら書いてる)
この本を読んでいる間に、おかざき真里さんの漫画『阿・吽』も並行して読み進めていました。いま、何巻だっけな…。
最澄は本書に出てこなかったので教室でのポジションが気になる!
本書に話を戻して、私が思うこの本の楽しみ方は2つ。
1つ目は、東洋の哲学者たちに触れる「入り口」として楽しむこと。
多少著者の解釈が含まれているのかなと思いますが、教科書ではわからなかったようなこと・興味を持てなかったことを楽しみながら学べる内容になっています。
2つ目は、この本自体の表現方法です。
「伝え方」といってもいい。東洋哲学というテーマは、聞いただけで「難しそう」と敬遠する人もいると思います(私がそう)。ですがこの本は誰でも読みやすく感じられるように工夫されています。
具体的には以下ポイント。
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1. くだけたわかりやすい言葉を使っている
2.「現代にいたらどんな人物か」という例え
3. 著者自身の体験を交えて書いている
4. 参考文献や監修がしっかりしており、安心して読める
5. 読んでいて純粋に楽しい
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個人的に面白かったのは、達磨大師のエピソード。
達磨大師は仏陀から1000年後のインド人で、言葉を捨てることで悟りを得た哲学者として描かれています。
しかし、言葉を捨てすぎた結果、中国に渡った際に皇帝との会話が全く噛み合わず、ただの「無礼者」になってしまったというエピソード。
さらに達磨大師の弟子、慧可のエピソードも衝撃的です。弟子入りを志願して断られ続けた慧可が、最終的に自分の片腕を切り落として「覚悟の証」として達磨大師に差し出したことで、ついに弟子入りを許されるという話です。メンヘラ界の鑑か。
このエピソードが紹介された後「実は達磨大師は実在しなかった可能性がある」と締めくくられており、まあ、事実かどうかはさておき、想像が膨らむ内容として非常に楽しめました。
最後に。
この本を読んでほしいのは「本当の自分探し」に疲れてしまった人。
現代では自己啓発本やSNSの発信が溢れて、何が正しいのかわからなくなってしまうことも多いでしょう。
そんな人たちにとって、この本は「どうでもいいや、自分なんてないんだ」という感覚を与えてくれます。
心を空っぽにしてリセットし、身軽になってもう一度前に進めるきっかけになると思います。
楽しく読めて、最後は前向きになれる1冊なので、ぜひ手に取ってみてください。
「そっか。自分とか、ないんだ。」と良い意味で思えて、入りすぎていた肩の力が抜けていきますよ。
ではでは。