強い人になりたかった
大人になれば、自分で稼げば、自由になれると信じていた。
出来るだけ自由で、強くなれるように、出来うる最大の力で勉強した。
はやく一人で生きられるようになりたかった。
社会人になりたての頃の私は自由だった。
仕事は最初大変だったけど、ある程度慣れてきたら、周りにも認められて、大先輩ばかりの部署で好きにやっていた。
給料がとりわけ良いわけではなかったけど、気の合う母と二人暮らしの実家からは出ずに、お金と時間はすべて自分のために使った。
大好きな人と結婚を決めて、周りのみんなに祝福してもらった。
結婚はするけど、私には1人で生きていく力があるし、夫のことを私が幸せにする、くらいに思っていた。
だけど、うつになった。
自分でも信じられないくらい、落ち込むというか、気持ちがコントロールできなくて、どこまでも沈み込んでしまう。
誰とも顔を合わせたくないし、話したくない。
何にも興味が持てないし、何もしたくない。
もうこの世にいなくたっていい。
うつを前にして、私は無力だった。
自分の無力さにも、ショックを受けた。
これまでどんなことも努力で乗り越えて来たのに。
今、自分を、どうしていいか分からない。
私はもっと強いはずだ。
なのに体も頭も全然動かなかった。
それでもっともっと苦しくなった。
仕事に行くくらい、出来るはずなのに。
泣き喚く私を、受け止めて、なだめてくれたのは夫だった。
仕事を辞めて、家で寝るだけになっても、一言も責めないどころか、抱きしめてくれた。
1人で生きていけない自分は、正直不甲斐ない。悔しい。
もっと出来る、と信じたかった。
でもきっとこれが私のすべてなのだ。
今は仕事にも行けないし、しんどい日は起き上がれない。
それが私。
思い描いていた強さは自分にはなかった。
私は人に支えてもらわないと生きていけない。
けどいつか、誰かの、ほんの少しでも支えになれるように、そうやって支え合えることも強さだと信じて、生きていく。