映画「アバター」感想
一言で、評判通り、今までにない映像体験とキャメロン監督の手腕の凄さには驚きました。一方で、3時間の3D視聴・キャラデザと作風の癖の強さ・脚本や展開には賛否両論なのも納得です。
評価「C」
※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。
本作は、世界的大ヒット作品『タイタニック』や『エイリアン2』、『ターミネーター』シリーズなどで有名なジェームズ・キャメロン監督制作の全編3D叙事詩的SF映画です。
公開当時から大ヒットを記録し、自身の『タイタニック』(1997) そして、あの『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)、も上回る全世界歴代興行収入第1位に輝き、それまでの映像界の常識を一変させた革命的超大作となっています。日本でも興行収入156億円を記録するほどの大ヒットとなりました。
受賞歴も多く、第67回ゴールデングローブ賞ドラマ部門で作品賞、監督賞を、第82回アカデミー賞®で作品賞、監督賞を含む9部門にノミネート、3部門受賞(視覚効果賞、美術賞、撮影賞)しました。
※記録は公開当時。
2022年12月には、本作の続編となる第2作目『アバター: ウェイ・オブ・ウォーター』が公開され、その後も新作の公開が控えています。
・主なあらすじ
22世紀、希少鉱物を求めた人類は地球から遠く離れたパンドラで〈アバター・プロジェクト〉に着手していました。パンドラには、“ナヴィ”と呼ばれるこの星の種族が生息しており、地球人はナヴィと人間のDNAを組み合わせた肉体〈アバター〉を操作員の意識で操ることで、人に有毒な大気の問題をクリアし、莫大な利益をもたらす鉱物を採掘する計画を立てていました。
この計画に参加した主人公の元兵士ジェイクは車椅子の身でしたが、〈アバター〉を得て体の自由を取り戻します。パンドラの地に降り立ち、ナヴィの族長の娘ネイティリと恋に落ちるジェイク。しかし彼はパンドラの生命を脅かす任務に疑問を抱き、この星の運命を決する選択を強いられていくのです…。(公式サイトより)
・主な登場人物
・地球人(スカイ・ピープル)
・ジェイク・サリー(演 - サム・ワーシントン、日本語吹替 - 東地宏樹)
本作の主人公で元海兵隊員(伍長)。傷痍軍人で ベネズエラでの戦争で負傷し、脊髄を損傷したため下半身不随となっており、車椅子生活を余儀なくされます。
しかし、アバター計画に参加するはずだった科学者の双子の兄トミーが強盗に襲われ急死したため、高額な治療費をRDA社(資源開発公社)が肩代わりすることを条件に兄の代理として計画に参加しました。
長年の車椅子生活から、アバターを通じて自由に歩ける事から「最高だ」と当初からアバターの姿を気に入るようになります。
ある日、猛獣に襲われたところをナヴィのオマティカヤ族の族長の娘ネイティリに助けられ、当初は「スパイ」として部族に潜入していたものの、次第にパンドラの自然やアバターとしての生活を愛するようになり、やがて自分が人間なのかアバターなのか、自分のアイデンティティーが揺れていきます。
・グレイス・オーガスティン博士(演 - シガニー・ウィーバー、日本語吹替 - 弥永和子)
アバター計画を率いる植物学者。自然の破壊された地球に見切りを付けて15年以上パンドラの生態系研究に従事しています。自らもアバターを操ってナヴィとの融和の一環としてオマティカヤ族の村に学校を開き、文化交流と英語教育を行ったことがあるため、地球人としては例外的にナヴィ達から一定の信頼を得ていました。
・マイルズ・クオリッチ(演 - スティーヴン・ラング、日本語吹替 - 菅生隆之)
元海兵隊の大佐 で、RDA社の傭兵部隊Sec-Opsを率いています。地球では何度も戦争を経験していますが、パンドラに来てすぐに顔に重傷を負い、今もその時の傷跡があります。大量の地下資源が存在するオマティカヤ部族の村の制圧を目論み、パンドラに来たばかりだったジェイクに、足の手術を約束する代わりに、ナヴィをスパイ・懐柔するように指示します。
・トゥルーディ・チャコン(演 - ミシェル・ロドリゲス、日本語吹替 - 杉本ゆう)
元海兵隊員のヘリパイロット(大尉)。アバター計画の人員やアバターの輸送を担当するため、ジェイクやグレイス達と最も親しい存在です。
軍人としては元々任務に実直でしたが、暴力的な手段でナヴィ達を追い立てて土地を奪うクオリッチのやり方に反発し、ジェイク達と共に地球人居留地を出奔します。
・パーカー・セルフリッジ(演 - ジョヴァンニ・リビシ、日本語吹替 - 難波圭一)
RDA社の社員で鉱物資源開発の責任者。株主の顔色やマスコミの評判ばかり伺っている小物で狡猾な性格です。
・ノーム・スペルマン(演 - ジョエル・デヴィッド・ムーア、日本語吹替 - 清水明彦)
植物や自然を研究する人類学者。ジェイクの兄と一の縁で、ジェイクと行動を共にします。当初は学者でもないのにナヴィとの交流に成功したジェイクを快く思っていませんでしたが、次第にうち解け、最終的にはジェイクに味方します。
・マックス・パテル博士(演 - ディリープ・ラオ、日本語吹替 - 村治学)
アバターの開発者。クオリッチ達に反発して出奔したジェイク達に共感し、居留地で地球側の情報を密かにジェイクに伝えていました。
・ナヴィ
・ネイティリ(演 - ゾーイ・サルダナ、日本語吹替 - 小松由佳)
ナヴィの狩猟部族、オマティカヤ族の族長の娘。自身も強力な戦士。最初はジェイクに敵意を表しますが、母モアトの命で彼にナヴィの生き方を教えるうちに惹かれ合っていきます。
・モアト(演 - CCH・パウンダー、日本語吹替 - 滝沢ロコ)
ネイティリの母親で「エイワ」の神託を伝える巫女。ジェイクを部族に受け容れる事を薦めました。
・ツーテイ(演 - ラズ・アロンソ、日本語吹替 - 竹田雅則)
オマティカヤ族の戦士で。ネイティリの婚約者、次の部族長と目されている若者達のリーダー的存在。
地球人への敵対心が強く、またネイティリと恋仲になったジェイクと対立していたが、ジェイクが飛竜トゥルークを手なつけたことで実力を認め、以後共闘することとなります。
・エイトゥカン(演 - ウェス・ステュディ)
ネイティリの父親でオマティカヤ族の族長。ジェイクが初の「戦士層」出身のアバターである事に興味を持ち、オマティカヤ族に受け容れます。
1. 賛否両論な点がハッキリしている。
本作は、良い点と悪い点がハッキリしている作品でした。そのため、好評する人の考えも、酷評する人の考えも、どちらもわかります。
まず、良い点から。本作は3D技術をふんだんに駆使して、独特の世界観を創り上げた点は本当に凄かったです。BGMも壮大で、異世界にマッチしていました。ここは、世間一般的な評判通り、今までに無かった映画だった革新的な作品だと思います。
また、『タイタニック』で世界的大ヒットを飛ばした、ジェームズ・キャメロン氏が、また自身の作品でその記録を更新したことも凄いと思いました。
一方で、「悪い」とまでは断言できないものの、賛否両論になる理由もわかります。
まず、キャラと作風に癖が強すぎて、乗れないと辛い作品だと思います。ナヴィの青い容姿は、人間と動物が混ざったデザインのせいか、序盤の時点で「不気味の谷現象」に陥ります。加えて、感情表現も結構動物的に見えました。特に、歯をむき出し、唸り声を上げて怒るシーンは、獣っぽいので、結構怖くなりました。
これらより、少なくとも、私は「可愛い」とか、「このキャラグッズ欲しい」とはならなかったですね。似たようなファンタジー作品の『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』、『ロード・オブ・ザ・リング』、『スター・ウォーズ』なども、気味悪いクリーチャー系キャラは登場しますが、本作のキャラは、これらとはまた違った「苦手要素」がありました…
また、集合体恐怖症の人にはキツいシーンが多いと思います。特に、「エイワ」の礼拝シーンは、沢山の同じ見た目の人々が同じ動きをするので、気味悪くなりました。
2. 既存作品からのオマージュは見られるが、その後の作品にも大きな影響を与えている。
本作は、色んな作品からのオマージュが見られ、また、本作がその後の作品にも大きな影響を与えているように思います。
まず、プロットは『ふしぎの海のナディア』と、ディズニー映画の『アトランティス 失われた帝国』そっくりだと思います。主人公の男性が「異世界」に迷い込み、その世界の女性と恋仲になり、元の世界と異世界の戦いを経て、「新しい自分」になるところが丸々被っています。違うのは、主人公が学者か軍人か、異世界の場所が、地球の海底か宇宙の何処かの星か、表現技法が2Dか3Dかぐらいでしょう。
そこに、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』・『ポカホンタス』・『ラストサムライ』とスタジオジブリの『もののけ姫』・『風の谷のナウシカ』の要素を加えています。(最も、本作はネイティブアメリカンを虐殺したアメリカへの批判という要素が含まれているため、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と『ポカホンタス』を感じるのは当然かもしれません。)
所謂、「ファンタジックな要素に現実感を彷彿とさせてサクセスストーリーにする」アメリカ映画の典型的作品ですね。
また、メタバースで自分のアバターを動かす話は、細田守作品っぽさ、強力な体を得て戦う話は、『機動戦士ガンダム』・『新世紀エヴァンゲリオン』・『進撃の巨人』ぽさがあります。
余談ですが、最後のネイティリの毒矢は、『ゴールデンカムイ』のアシㇼパさんを彷彿とさせます。野田サトル先生、もしかして本作からオマージュされたのかなと思います。アシㇼパさん≒ネイティリでしょうか?※飽くまでも、一個人の主観です。
そういえば、主人公ジェイク役の東地宏樹さんは『ゴールデンカムイ』のウィルク役なので、何かの縁があるのかもしれません。
3. ゲーム映画としてなら見れなくはないが、予想以上に「疲れる」映画だった。
本作の世界観は、まるでRPGゲームのようで、『ファイナルファンタジー』や『モンスターハンター』を彷彿とさせました。3Dの飛び出す技術によって、ゲームのようなバーチャル体験は堪能できるため、最初は遊園地のアトラクションのようでした。また、猛獣に追いかけられたり、飛竜で空を飛んだりするシーンは、『JAWS』や『ジュラシック・パーク/ワールド』のような動物パニック映画要素もありました。
一方で、1時間位続くと、3Dメガネと座席揺れで徐々に気持ち悪くなってしまい、途中からメガネを外していました。加えて、3時間という上映時間の長さも、キツさに拍車をかけていました。もう予想以上に「疲れる」映画となってしまいました。後、これは映画館の注意書きにもありましたが、光や水滴の演出が半端ないため、光過敏性発作やパニック障害がある人はかなり注意が必要です。
4. 冷静に見ると、モヤモヤする部分が多い…
本作、作品としては良い点は多いものの、冷静に見ると、モヤモヤする部分が多かったです。喩えるなら、箱が豪華だけど、中身はそこまではなかったみたいな感じでしょうか?
特に、主人公のジェイクには、苦手だと感じる点が多かったです。逆に言うと、彼に感情移入できるかどうかが、作品を楽しむ鍵なのかもしれません。
まず、脚本や展開に対して思うのは、「総じて主人公に都合が良すぎる」ということです。実際、起こる事件の元を辿ると、「それ貴方のせいだよね?」っていう事が多いのです。例えば、アバターを手に入れたら、指示を無視して勝手に行動し皆に迷惑をかける、ネイティリとの恋愛でオマティカヤ一族と地球人を振り回すなど、自分が災厄になっているトラブルメーカー気質なのかなと思いました。しかも、本人には自覚がない故に、余計に質(たち)の悪い状況という。しかし、そんな行き当たりばったりで脳筋で神頼みなキャラなのに、最後は栄光を手にする辺りが、良くも悪くも「主人公様」になっていました。(こういう結末だと、博士が亡くなった遠因を作ったのも主人公になってしまいます…)
また、ツーティが噛ませ犬や当て馬ポジションになってしまったのも不憫でした。当初はネイティリの婚約者として登場したのに、N*R展開(ここは伏字お許しください)からの、結局はジェイクの地位を上げるために退場させられた感じがしました。
彼は、外部者のジェイクと対立こそしてたものの、殺意は向けておらず、部族としての立派な役割を果たしたのに、これじゃ彼があまりにも気の毒でした。
そして、ネイティリについてもキャラとしての心情が安定しておらず、態度がコロコロと変わるのは唐突すぎました。 婚約者のツーティがいたにも関わらず、ジェイクに恋して、その後の裏切りに怒っていました。(ツーティとの関係は特に悪くないです。)最終的には、ジェイクに味方するのですが、そこの心情変化が今一つでした。結局は、ジェイクが飛竜トゥルークを手懐けたからですか?
5. エンドロールに続編の予告も流れた。
本作のエンドロールには、続編映画の予告も流れました。クジラとナヴィの少年(ジェイクとネイティリの子供?)が登場し、クジラに刺さった銛を抜いた映像でした。※場合によってはここのシーン、日本で「荒れる」かもしれません。何となく、「あの問題」を彷彿とさせるので。少年は、英語を流暢に話し、手話を使っていましたが、ここは昨今の「ポリコレ」かなと思いました。
今のところ、次回作を観るかはまだわかりませんが、正直、3D+4DXは視聴がきつかったので、もし観るなら初見は2D上映がいいと思いました。
出典:
・「アバター」公式サイトhttps://www.20thcenturystudios.jp/avatar2/20220804_01
※ヘッダー画像は、こちらから引用。
・「アバター」Wikipediaページ
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%90%E3%82%BF%E3%83%BC_(2009%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)