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DAY 29 ぼくは甘えんぼう



長男がまだ1歳にもならない頃、ぼくはよく子守唄を歌ってやった。といってもそんじょそこらの子守唄ではなく、完全オリジナルの楽曲を息子のために提供していたのだ。その頃はなぜか既存の歌を歌うことに抵抗を感じていて、どうせ聴かせるなら自作をとせっせと作詞作曲活動に勤しんでいたのだった。


といってもなにか楽器を使っていたわけではない。これといってなにも演奏できないぼくはボバで息子を抱っこしているときに口ずさんで作っていたのである。余談ですが、スター・ウォーズファンなら数ある抱っこひものなかでボバを選ぶのは当然ですね!


で、そんなふうにして何曲か息子のために歌をこしらえ、子守唄の代わりにして歌っていたのである。今でもそれらの曲はちゃんと覚えていて妹へと歌い継がれるはずだったのだが、娘はぼくが歌うとうるさいといってぼくを黙らせるのであった。静寂のうちに寝てくれるのだからとってもいい子なのだが同時に淋しさを感じる父の心。


さて、そのうちの一曲に「ぼくは甘えんぼう」というのがある。息子があんまり甘えんぼうだから作った一曲であるが、5歳になった今まるで1歳に戻ったかのように赤ちゃん返りして甘えてくる息子をみて思い出した次第です。


どうしたことだろう。いよいよ来年は小学校というのがプレッシャーになっているのか。或いは兄という立場の認識が深まるにつれて求められる振る舞いと気持ちのギャップに苦しんでいるのか。天真爛漫に無邪気に甘えてくる妹とそれに100%応じる両親を見ていて胸が苦しくなってしまったからなのか。


とにかく息子の赤ちゃん返りが著しい。ならばその要求に100%応じてあげればよかろうと思うかもしれない。しかし、いやいやそうはできないよ。ぼくが息子を甘やかしていれば必ず妹がその間に割り込んでくる。もちろん「今はおにいちゃんの時間だから」などという理屈は通用しない。受け入れてあげなければ大泣きする。たとえ拒否したところで、娘は頭から突っ込んでくる。当然アニキは手を出す足を出す。当然ぼくが妹に手を出すなと怒る。本来息子を甘やかすはずだったことが、反対の結果を生み出してしまう。これにはさすがにぼくも不本意を感じるが、力の強い5歳児が2歳児を殴ることはやはり許せない。


また、5歳児が2歳児と同じように甘えてくることで物理的に対応できないことがある。やはり体重や体格の差は大きいのだ。突然ぶつかってこられたり、後ろから飛び乗ってこられたりすると受け止めるどころか、ぼくのほうがひっくり返ってしまう。息子は無邪気に気持ちは2歳児で飛びかかったつもりが体格は5歳児なので予想以上のダメージがある。まるで飼いならしたライオンが戯れたつもりで飼い主を八つ裂きにしてしまうようなものだ。


それでぼくは注意を与える。妹とおんなじようにはいかないんだよ、と。そしてそれがまたアニキには気に入らない。どうして妹がよくてオレはだめなのとまるで納得がいっていない。


もちろん当然まっとうに一切合切当たり前だが息子と二人きりのときはしっかりちゃんと甘やかしている。だがそれは息子にとって当然のことで、重要なのは「妹の前でオレを甘やかせ」という点に尽きる。


ぼくだってそんなことは百も承知だから明日こそはと誓ってベッドに入るのであるが、翌日には頭に来ることが多すぎてどうしてもご希望に応じてやることができない日々。

篠原さんぼくは少し厳しすぎるんでしょうか?

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