パリのジュンク堂書店の品揃えに、カルチャーの風を感じる
5月だというのに、なんとヒョウが降るという急に冬の気候の、パリ。薄地のものとはいえ、ダウンコートが手放せない。そんななか出かける予定があって、待ち合わせ場所は、ピラミッド駅近くにある、ジュンク堂書店。
こちらにいても、フランス語、英語以外に日本語の本も読むが、kindleがあるので、パリにジュンク堂があるということ自体、初めて知った。kindleになっていない本でも、PDFにしてくれるシステムがあって、ipadで読むことができる。
特に大きな書店ではない。日本の街角によくある、というか、よくあったけれどなくなりつつある、普通の書店である。
日本の街角の書店には、わたしが買いたいような本が、置いてあることは、ほとんどない。文庫に入っているものならあるかも、と何かを探したことがあるが、置いていなかった。もちろんこれは本屋さんのせいではなく、読者の問題。でも置いていなければ買えないし、とにかく日本では、人文書籍をめぐる状況は、本当に大変なことになっている。
しかし、パリのジュンク堂に入ってみて、びっくり。本屋ってこういうものでしょう、とあらためて教わったような気分だった。そりゃあジュンク堂だし、と思ったものの、このスペースでこの本たちのレベル、と考えると、立地によって本の品揃えというのはこうも変わるのかと、唸るしかない。
その中心にあるのはまさに、文庫本であった。土地柄、平積みになっている文庫本は、フランス文化系のものが多いわけだが、例えば絵画についてのさまざまな本が何種類も、普通に積んである。そこにならんでいるのはノウハウ本ではなく、ほぼすべてが、いろいろな意味での、カルチャーについての本。
文庫本には文学が多いから、文学の本も当然いっぱい並んでいる。と思っていると急に、松下幸之助の本が数冊平積みになっていたりして、それはそれで渋い。松下さんはフランスでも一目置かれているんですよ、と一緒にいた方。
文庫本ではないが、バルザック全集なんかも、結構揃っている。池袋か梅田のジュンク堂に行って、5階かなんかまで上がっていけば、それは置いてあるだろう。しかしこのスペースで何気なく、そういうものが普通に置いてあるということに、感動する。
リアルな紙の本を普通に本屋で買う(昭和な)生活というのが、ここでは全くありなのだ、ということに頭がぼうっとしながら、帰りに、パリでいちばん大きな本屋である、fnacへ。もちろんここでも、普通にフロアを占有しているのは、アートや文学の本である。イギリスの本屋でも、入った1Fのそのフロアは、びっしりとフィクションつまり小説であるのが、普通。
こういう場所にいると、もっと本を読みたくなってくる。空気がさらに、アート&カルチャーの風を、送ってくるのだ。せっせと(研究資料じゃなくて)「本」を読んでいた(だけではないけど)、子どものころや若いころみたいな気分に、だんだんもどってくるのである。
おまけ:fnacのLPレコードの品揃えも、すごい。この写真は、ほんの一部。買わないですけど。