釜炒り茶を作ってみる
鹿児島では生垣に「チャノキ」を植えている家も多く、ひと昔前はこれを摘んで釜炒り茶を作る人がたくさんいました。そのための大きな釜が家の納屋にあり、自家用のお茶は自分たちで作っていました。
「ばあちゃんが作ってくれた釜炒り茶がおいしかった」「5月に入ると茶葉を摘む手伝いをしていたな」など、自家製の釜炒り茶にまつわる話はいろんな人が思い出話として教えてくれます。
かねてから作ってみたいと思っていた釜炒り茶、今年はチャンスがあって作るところに同席させてもらいました! 教えてくれたのは釜炒り茶歴数十年のベテラン。地域の周辺の人からは「釜炒り茶の達人」として知られている方です。
ちなみに、釜炒り茶は大きな釜でなくても、家庭のフライパンやホットプレートでも作れるそう。特別な道具がなくても作れるので、家にチャノキがある方はぜひチャレンジしてください。
1.摘み取り
葉の先の柔らかい部分を摘み取ります。
お茶の世界では、高級な煎茶は「一芯ニ葉」といって、葉の先端の芯の部分とその下の二枚の葉の部分、つまり先の柔らかい部分だけを摘んで作りますが、釜炒り茶はあくまでも自家用のお茶。触ってみて柔らかい葉っぱはどこでもガシガシ摘んで使っちゃいます。下の硬い葉に比べて、新芽は色が薄めで柔らかいです。
2.釜炒り
摘み取った茶葉を熱した釜で炒ります。(萎凋といって、風通しのいい場所に茶葉を置いて、葉を萎れさせてから炒る方法もありますが今回は割愛)
私に教えてくれた方は、釜炒り茶をつくり続けて数十年のベテラン。茶葉を炒ったり茶葉の上下入れ替えたりしているのに、絶妙に釜に手が触れないようにやっていて匠の技だなあと思いました。真似して素手でやってみたらすぐ「熱っ」となったので、きれいな軍手をしてやるといいかもしれません。
あと、茶葉を上下入れ替えるのに竹と和紙でできたうちわを使っていました。最近のプラスチックを使ったものは溶けてしまうからダメだそう。
葉が手で触ったときにしんなり、むっちりしたような感触になるまでやります。少し焦げ付いてもOK。
3.揉捻(じゅうねん)
釜で炒った茶葉を取り出したら、ござの上にのせて手で茶葉をこねるようにしてひたすら揉みます。この時、茶葉を押し付けすぎると千切れるので、陶芸の菊練りのように回すようにして揉みます。
完全に冷めないうちに揉むのがポイントです。この工程によってお茶の成分が抽出されやすくなり、お茶の味に深みを与えるようなので、しっかり揉みましょう。
4.乾燥
しっかり揉んだら、茶葉を和紙(キッチンペーパーでも可)の上に広げて、風通しのいいところで一晩置いて乾かしておきます。
5.仕上げ
釜で水分がなくなるまで茶葉を炒ります。茶葉がパリッとした感触になり、摘んだらパリッと割れるくらいまでしっかり水分を抜きましょう。水分が残っていると、常温での保管時にカビが生えてしまう原因になります。
完成したら、乾燥剤と一緒に密封できる瓶に入れて保管します。常温で保管できますが、水分が残ってるか不安なら冷蔵庫保管の方が良さそう。
6.試飲
完成した釜炒り茶を飲みました。飲んだ後に膨らむフレッシュで爽やかな香りがたまらない。煎茶とも番茶とも違う、釜炒り茶ならではの香味があります。
作る人により微妙に味が変わるため、地域ごとに、釜炒り茶といえば〇〇さんと言われている達人がいます。今回は鹿児島県出水市の方に教わりました。
今回紹介したのは、あくまでも私が習った方法であり、家庭や地域、人によってやり方はいろいろ。また茶葉の生育状況や摘み取り時期によっても味わいは変わります。ネットや本を見ていると、茶葉を積んだら一日置くもの(萎凋をする)、揉捻を2回やるものなどがありました。
来年もチャンスがあったらチャレンジしたいと思います。
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