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【勝手に読書感想部】六人の嘘つきな大学生:浅倉秋成

[あらすじ]
誰もが憧れる大手IT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った6人の大学生。グループディスカッションの内容次第では全員を採用すると言われていたのに、直前になって採用枠は1人と告げられる。
それまでの準備段階で人間関係を構築し最高のチーム、最高の仲間となったはずの6人だったが、グループディスカッションの当日仕掛けられた罠によってそれぞれの裏の顔が次々に暴かれ、関係性にも大きな溝ができていく。


[ネタバレと感想]
*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください。

起承転結の「結」までのアップダウンが半端ない!
起承転転転・・・っ結、って感じで・・・。
登場人物一人ひとりに対する印象が自分の中で「善人」と「悪人」の間を行ったり来たりしてて、もう大変でした。
しかも、文中に散りばめられてある、ちょっとした違和感を全部伏線として回収してくれる感じも、もう嬉しくなっちゃって・・・
読み進める手が止まらなくて、あっという間に読了しました。

作中にもあったように、私たちは、何か1点でも印象に残る出来事(特に悪い印象)があると、それを以て、その人や物事に対する印象を決めてしまっている節があるように思います。

「あの人はああゆう人だから」・・・悪いやつ
「昔あんな事件を起こしたから」・・・悪いやつ
そうやって、自分の印象で勝手にその人を「悪人」と決めつけてしまっている。
だけど、例えば問題のある行動をしたことがある人がいたとして、イコールその人が絶対的な悪人ってわけではない。
それらはその人を構成するピースの一部に過ぎなくて、その人が問題行動に至った経緯をよくよく観察するとその人に対する印象が180度変わったりもします。

まあそんな感じで、登場人物の印象が2転3転して、まんまと作者の手のひらでコロコロ転がされている感じでした。

だけど、この最終選考に残った6人は誰もが本当に優秀で、過去の罪が暴露されてもどこか魅力的に感じるキャラクターばかりでした。
一人ひとり得意分野があって輝かしい個性があって、それぞれに心惹かれる部分を持っていたように思います。
実際、不採用となったメンバーもみんなそれぞれに自分の特性を活かして社会人として活躍していたし。
どうしてもこの6人が全員内定をもらってスピラの同期として一緒に働いている世界線に思いを馳せてしまう。
それくらいいいチームだったのに・・・。

就活生は自分自身の印象を構築し、それを採用担当に披露する。
みんな嘘をつくし、面接で全てを晒け出すことはない。
特に採用試験なんかは、自分がいかに優秀で素晴らしいかを全力でPRするから。
だからこそ、面接だけで人間性や自社の従業員としてふさわしいかどうかを見極めようなんて本当に難しい。
今までどこの会社も当たり前のようにしてきた、リクルーティングの常套手段みたいなものに対する問題を提起するような作品に感じました。

映画化するんですよね?
ものすごーく張り詰めた空気感や心理描写がどんな風に映像にのるのか気になるので、機会があったら映画の方も見てみたいですね。


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