【勝手に読書感想部】世にも奇妙な君物語:朝井リョウ④
ちょっとブラックで後味の悪い。
ありえない話なんだけど、すごくリアリティがある。
私の大好きな、「世にも奇妙な物語」風のショートストーリーを集めた、朝井リョウ先生の短編集です。
今日は第4話の感想を書いていこうと思います。
第4話 13.5文字しか集中して読めな
[あらすじ]
「ワールドサーフィン社」に勤める香織は、ネットニュース記事の内容を13.5文字の短いタイトルでと要約して配信している。
現代人は長い文章が読めない。
いかに短く、注目を高めるような強い表現で要約して人々の注目を惹く記事を作成するかが彼女の仕事だ。
息子の直喜はそんな母を尊敬し、彼女の仕事に憧れを抱いている。
夫の浮気が疑われる中、息子は次の参観日は絶対母親である香織に来て欲しいと懇願するのだった。
参観日では、将来なりたいものについて調べて発表するという課題が設けられており、直喜は香織のように事実を分かりやすく伝える仕事がしたいからそれに向けて準備しているのだと言う。
[ネタバレと感想]
*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください。
この短編集の中で、1番自業自得感があって、自分の行いに対するしっぺ返しを食らってる感じがした。
子どもは親の所作をよく見て、親の感情や考えをしっかりと感じ取り、的確に受信している。
香織は端的で過激な表現でネット記事のタイトルを作り、多くの誤解と炎上を生んでいた。
それも仕事と言って仕舞えばそれまでだけど、会社の方針としてはそう言ったやり方を変えていこうという流れになっていた。香織はそれを受け入れることができなかった。
直喜は、前日の香織の浮気と夫との夫婦喧嘩について13.5文字で見出しを作成し黒板に貼り出して発表したのだ。
尊敬する母親の仕事をトレースして、自分なりに追いかけていた事実をまとめ、見る人が興味を持つような過激な言葉の表現を使って。
これは今までずっと香織がしてきたことで、自分の行いの正しさを噛んで含める様にして直喜に教えてきたことでもある。
直喜の心はどこまでも純粋で、その行動は正しさに満ちていた。
だって、尊敬するママが教えてくれた事だから。
子どもにとっては親が言うことが絶対的正義。
だからこそ、親は正しい背中を子どもに見せないといけない。
私が幼い頃、私の母は弟の年齢を誤魔化して、バイキングや動物園に無料で入場させていた。
スタッフの人に聞かれた弟が「5歳!」と正直に言おうとする口を押さえて、「4歳です」と言ってしれっと入場していくのだ。
子どもの頃の私にとっては母親は絶対的な存在だったので、それが悪い事だとは全く気づかなかった。
大人になった今、あの時の母親の行動に強く憤りを感じている。
思い出すと、悔しくて、胸糞悪くて、泣きたくなる。
別に強烈にお金に困っていた訳でもないのに、なんで・・・
なんで、正規の金額を支払って、幼い私や弟に「正しさ」を教えてくれなかったんだろう。
話は逸れたが、直喜の、この純粋さが香織を絶望に陥れる。
自業自得なんだけど。
本当に皮肉な話だ。
けどなんだかんだで1番気の毒なのは、必死で慣れない仕事をこなし残業した挙句、不倫を疑われ、その腹いせに妻に浮気され、更にその一部始終を息子によって暴露されてしまった夫じゃないかと思う。
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