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EMDR治療 — 「過去を過去のものとして終わらせる」ために…


人はどんなに気をつけていたとしても、時に目をおおいたくなるような痛ましい出来事に出遭うことがあります。

トラウマ(心的外傷)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの言葉を聞いたことがある人も多いかと思われます。

今日はトラウマケアの代表的な治療法であるEMDRについてお話ししたいと思います。

EMDRとは?

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)は2004年にアメリカ精神医学会が2013年には世界保健機関(WHO)がPTSD治療の第一選択として認めている心理療法です。

過去のトラウマが現在のクライエントの心に与える影響を解きほぐし、「しんどい出来事だったけれど、もうそれは終わった」「今、ここにいるわたしは安全」「私はここにいます」という感覚をクライエントに感じてもらうために複雑なプログラムが組まれています。

特に、健常な方が事故や災害などの単回性のトラウマを被ったことに対して非常に効果的で、心の負担を軽減する力を持っています。

EMDRの効果とは?

EMDRでは、過去のトラウマ的な出来事を思い出し、その感情や身体的な反応を整理するために眼球運動を用います。このプロセスにより、脳はその記憶を過去の出来事として再処理し、感情的な反応を軽減します。その結果、トラウマの影響が減少し、「過去のもの」として受け入れやすくなります。

実際の効果

先日、交通事故に巻き込まれたクライエントが、EMDRを通じて事故の記憶を「過去の出来事」として整理しました。治療後、クライエントは「事故のことを思い出しても、心が落ち着いている」「今はもうその出来事が終わったと感じる」と語り、再評価の面接でも「心が軽くなった」とお話しされました。

なぜEMDRが効果的なのか?

トラウマ的な出来事は、感情や身体的な反応とともに脳に固定化され、現在にも強く影響を与えることがあります。EMDRは、治療者ががっしりとクライエントの安全を守りながら眼球運動やタッピング、音刺激(これらを両側性刺激という)により、現在に定位しながら過去を見渡す(二重の注意)という、いわば練習のようなことをします。その過程を経てクライエントは過去に囚われることなく、今を"より自由に"生きることができるようになるのです。私が仕事をご一緒させてもらっている医師は「クライエントさんにはしんどい作業だけど、辛かった出来事が想い出に変容するようなもんだな」と語りました。


EMDRは、トラウマの影響を和らげ、「過去を過去のものとして整理する」ための非常に効果的な治療法です。カウンセリングオフィス「凪」では日本EMDR学会が認定する研修を終了した臨床心理士がEMDRを実施しております。

もし、過去の痛みが今も心に影響を与えていると感じている方は、EMDRを試してみることをお勧めします。過去のトラウマを解放し、より平穏な心を取り戻す手助けとなることでしょう。

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