発表に全員を集中させる技 5つ ワクワク文字練習⑤ イケイケ編(前)
今回は「『き』で始まる言葉見つけ」のイケイケ発表活動を紹介。発表方法を覚えるまでの指導手順例は、イケイケ準備編(前)と(後)で詳しく説明。
子どもたちの発表を書いた後の黒板は、こんなイメージ。
黒板に書きながら、子どもたちとの短いヤリトリを入れる。これも大切な技。(●1~●5)
例えば、こんなカンジ。
●1 他の子が知らなそうな言葉は、発表者に説明させる。
「え、『きざくら』?それ、ナニ?」
「お酒の名前。他にもね…」
(他も知ってるのね。いや、他はいい。)
●2 全員に声を出させる。時には「手を上げて」と体を動かさせる。(子どもたちを飽きさせない。授業に集中できるようにする。)
「『きびだんご』が出てくるお話と言えば?」
「桃太郎!」
「『きなこ』好きな人、手ぇ上げて!」
「はぁ~い!」
●3 わざと濁点・半濁点を間違えたり、1字抜かして書いたりして、子どもに訂正させる。
「先生、違う。マルとテンテンつけて。『きんひらこほう』になってる。」
「あらあら。教えてくれてありがとう。で、どこにつければいいの?」
子どもたちは、教師の間違いを見つけて教えるのが大好き! 何度もやって「先生、わざと間違えてるんだな」と気づいた後でさえ、一番最初に気づいて指摘してやるぞと黒板に目を光らせている。ふふふ。可愛い。これでキミは黒板から目が離せないだろう。
●4 文字数、濁点(び)・半濁点(ぴ)、拗音(ひゃ・ひゅ・ひょ)、促音(ひっ)に注目させる。
あきらくんが発表した。
「きょうりょくわかもと」
「小さな『ょ』が2つ。え? 10文字? 最高記録?」
得意満面のあきらくん、あまひこくんをチラリ。その目は「どうだ? 10文字だぜ」って言ってる、たぶん……。
マルとテンテン、小さな『っ』『ぃ』各1 全9文字の『きのこ すぱげってぃ』のあまひこくん。だが、あまひこくん、表情に変化無し。でも、この2人の間にはバチバチ火花が散っている……ような気がした。
●5 全員の発表が終わり、数分あったら、黒板を使って、更に授業。
例えば、こんな質問をする。
「この中に『食べ物』は、いくつあるでしょう?」
20~25秒ほど間をおく。教師は机間巡視。
「数えた人はお隣さんと答え合わせ。同じじゃなかったら、2人で最初から数えてみてね。」
10~15秒待つ。
2人での答え合わせは、全員を課題に参加させるための技。
「みんなで答え合わせをしよう。10個以上見つけた人起立。」
全員が立つ。
「自分が見つけた数になったら座ります。」(注1)
「10、11、12、13、14、15、16」
間をあけて数を言う。
大半が15までで座り、数人が16で座る。
「どれが正解かな。確かめよう。」
「一番後ろの列起立。窓側の人から黒板にある『食べ物』を1つずつ発表してね。」
教師は、発表された言葉をマルで囲む。この時には既に《発表したら座る。教師が書き終わったら次の人が発表する》は習慣化している。
黒板は、こんな感じ。
途中『きざくら』は『食べ物』かで、子どもたちがもめる。(注2)
1年生だと、こんなふうにまとまる。
「レストランのメニューで『食べ物』と『飲み物』は別に書いてある。だから、お酒の『きざくら』は『食べ物』じゃない。」
なるほどね、と思う。
時間があれば、次に聞いてみたいのが、これ。
「この中に『生き物』は、いくつあるでしょう?」
黒板はこんな感じになる。
どんな話し合いになるか、想像してほしい。
私はこの時の、かんなちゃんの説明が好きだ。
「あのね、私も本当にいるかどうか分からないの。でもね、もしもいたら、『生き物』だと思う。だって、私たちと同じで、家族がいるんでしょ?」
かんなちゃんは「『きんぐこんぐ』がいるかいないか」「『きゅうけつき』がいるかいないか」の話には参加せず、「もしもいたら」と仮定して自分の意見を言った。その上で「私たちと同じで、家族がいるんでしょ?」だから「『生き物』だと思う」と言った。
それまでムキになっていた子が「そうだね」と言った時の顔が、とても穏やかだった。
なぜ「そうだね」なのかは、よくは分からない。でも、自分たちの家族と同じように親がいて子どもがいるなら『生き物』だと考えたのだろう。
子どもの言葉って、おもしろいなぁと思う。
ここで「質問」について説明したい。
子どもたちに「質問」をするのは、黒板に書かれた文字(言葉)注目させるため。
①『いくつ』かを数えるためには、黒板を見る、文字を読む。
②文字を読んで、それが何を示す言葉か、その意味を考える。
そのような《活動》を意図して「質問」をしている。
イケイケが楽しいのは、コレだけではない。
まだ『き』だ。コレは、イケイケの始まり。
(注1)挙手は使わない。極力、挙手指名を使わず、全員を授業に参加させる。これも大切な悪魔払いの技の1つ。だって手を挙げなければ何もしないで座ってられる。放っておいても授業が終わるなんて、子どもにすれば、退屈の入り口。悪魔が来るぞぉ!(参考 『タイプ別 悪魔から子どもたちを守る方法』)
(注2)全員で話し合いをさせるのにも技がある。でも今回は本題とは関係ないので割愛。