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石映画鑑賞会 第三回 『ボルケーノ・パーク』

ハーイ皆さんまたお会いしましたね!皆さんはそんなに石映画が好きなのですね。前回・前々回と題名に石がついているわりには石石した映画ではなかった喪失感が皆さんを第三回目へと向かわせたのでしょうか。自暴自棄もほどほどに!

私は失望と反省を乗り越えて今回は題名ではなく内容にこだわりました。いや、題名にもこだわったのですけどね!今回の作品選定にあたりAmazonのPrime Videoで題名に「火山」がつくものを検索しました。過去記事のリポートでもお伝えしたように最近火山灰を採取しましたからね。私のカバー範囲は広いのですよ。


さて、たくさんの悲しみを乗り越えて人は強くなるのです。Prime Videoで「火山」と検索するとたくさんのおもしろそうな映画がでてきました。これは大収穫です!そんななか今回選ばれたのは『ボルケーノ・パーク』(2020年)です。40歳前後の私世代はこの題名を見てわくわくするはず。なんせ子どもの頃に登場した圧倒的有名作品『ジュラシック・パーク』に影響を受けていること間違いなしじゃありませんかこの題名!早速どんな映画か、その概要を見ていくことにしましょうー

ちなみに、2024年6月現在Amazon Primeの無料体験期間はすでに終了していますが、延長したわけではありません。石映画鑑賞会第一回があまりにも好評だったため第四回まで大筋を一気に書き上げていたのです!この情熱は評価されてしかるべきですよね?




『ボルケーノ・パーク』の概要


あらすじ

そこは、世界で最も熱く最も危険なテーマパーク。そこでは、活火山を間近で感じ未体験のスリルが楽しめる。しかし、賑わう人々の真下では、マグマが目覚めようとしていた。そして今、史上最大の大噴火の時が近づく-。迫り来る火砕流!!降り注ぐ火山弾!!孤島のテーマパークが、紅蓮の地獄と化す-。© 2020 Meridian Entertainment (Foshan) Co. Ltd. All Rights Reserved

Amazon Prime Videoより『ボルケーノ・パーク』


これはもう皆さんおわかりですね。この映画の選定理由。活火山!マグマ!!火砕流!!!火山弾!!!!画面に石が出てこないわけがないじゃないですか!これで『路傍の石』並みに石が出てこなかったらむしろその演出とカメラワークにあっぱれです。

しかしこの『ボルケーノ・パーク』の説明文はすごいですね。「世界で(中略)最も危険なテーマパーク」と言っていますよ。ジュラシック・パークを差し置いて!これは疑義も含めて観なければなりません。なんせ記憶にあるなかで私が泣きそうになった最新の映画は『ジュラシック・ワールド/炎の王国』ですからね。ジュラシックシリーズは確実に私の心を動かしてきたのです。『ボルケーノ・パーク』で泣けるのかも鑑賞する上でのポイントとなります。今回もRolandのヘッドホンと共に。よーし、観るぞー


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観ました!


『ボルケーノ・パーク』の感想

最初に言ってしまうと、石は映画にいっぱい出てきました!!


…………CGやレプリカとして…………


……よく考えればですよ、CGなしで火山噴火や火砕流を表現できるわけないじゃないですか!雲仙・普賢岳の再来を起こしてはならないのです。マグマはCGなしで再現できますよ、石から。火山弾も普通に撮れます。しかし他のものはなかなか難しい。これは盲点でした。

もう一個。初め私は英語の勉強のため字幕で観ようとしたんです。でも、わりとすぐにと気がつきました。この作品は英語と中国語が混ざっておりこれでは英語の勉強にならぬと。だから鑑賞は吹き替え版にしました。字幕と吹き替えでは冒頭部分に違いがあります。字幕版はすぐに映画が始まるのですが、吹き替え版では中国の映倫(?)に通ったことや映像会社の広告が出てきます。


冒頭

地球史を追うかのようなオープニングにはグッときました。もしこれがエンディングに流れていたとしたら泣きそうになったかもしれません。チョロいですからね、私の涙腺は。火の玉である原子地球に吸い込まれるたくさんの隕石はまるで卵子に向かって突き進む精子のようです。まあ地球の場合は全部受精するんですけどね、衝突という形で。そうやって宇宙の遺伝子を取り込んできたわけですから、我らが地球は。


序盤

幼き日のシャオモン(主人公)が天火島という物語の舞台である火山島で過ごしていると、火山が大噴火を起こします。シャオモンの父親で火山学の博士(?)であるタオ教授が妻であるシャオモンの母親を助けに行くのですが、残念ながら彼女は火災流に飲まれて亡くなってしまいます。ここちょっと違和感がありました。タオは妻の目の前まで車でやってきているのに(車ごと転倒しているけど)妻は夫の元へ駆け寄ったりせずその場で立ち尽くし火砕流にのまれるのです。実はここがこの映画のなかで一番エンタメとはかけ離れた重みのあるポイントだと思います。妻は夫であるタオと抱擁し亡くなるというポンペイで見られるような愛の形を拒んでいるのです。もちろん、物語の構成上父親は生きていなければならず、母親のみをあの世行きにしたかったための策だとは思います。妻とタオの距離が近すぎるとタオだけが生き残る筋書きに無理がありますからね。でもちょっとエンタメにしては不自然だったのでもう少しこの辺の演出は考えられたでしょう。

また、生き残ったタオは20年後に火砕流は50メートルや100メートル離れたところにいるだけで助かることもあると言い訳のように学生に説明しています。この説明によってタオだけ生き残った整合性を補完しようとしていますね。バレています。この辺ももっと工夫できたら良かったのに。でも、20年後というところは現実味があって良いですね。火山噴火は20年から30年周期で起こることが多いですから、日本の場合ですけれど。

序盤の注目点は、17分20秒ごろのハリスのセリフ「ついに自然を征服した」です。ヨーロッパ系のハリスがこのようなことを言うとどうしてもプロメテウス的発想だなあと感じてしまいます。そしてハリスの妻も31分10秒頃に「壮大な自然を娯楽として表現しました」という、私にとって斬新なセリフを放っています。このような発想があるのか!と目を瞬かせました。彼女の見た目は東アジア系なのですが考え方は夫のハリスと同じですね。

余談ですが、開始10分位からうすうすこの映画はかなりハリウッドっぽいな感じていました。吹き替えで観ているので声優の喋り方がハリウッド的というのもあります。しかしそれだけではなく、役者の表情の作り方や仕草、映像の雰囲気がもうハリウッドのアクション映画みたいなのです。それで鑑賞後にインターネットで調べてみたらこの映画の監督はイギリス出身のサイモン・ウェストでした。監督の経歴を見て納得です。本作は中国映画の皮をかぶったハリウッド映画です。


中盤

パニック映画の中盤は展開がハラハラするものです。本作でも火山が噴火して以降CGをふんだんに使った火山弾や火砕流、逃げ惑う人々にドキドキさせられっぱなしでした。そのなかにもヒューマンドラマはきちんと仕込まれていて、家族の確執や愛など普遍的なテーマが垣間見えます。また、噴火の最中を車で移動する主人公たち5人はそれぞれがそれぞれの役割をきちんと持っています。その5人で行動する必然性が明確であり、エンタメだなあという感じでした。一人くらい何の役にも立たない人物がいても良いのに。この辺は『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)の方がうまいと思いました。ジュマンジでもどの登場人物も大小あれど最終的にはなくてはならない存在なのですが、それを強調せず笑いの中に自然に溶け込ませるのは絶妙です。

噴火以降、物語の中では火山弾が頻繁に飛んできます。それは戦時中の砲弾のようです。今現在も砲火にさらされている人たちはどれほどの恐怖の中で生きているのか。『ボルケーノ・パーク』なり何なり、創作物は現実とつながっています。


終盤

一応中国の映画でもあるということでドローンにも注目してみましょう。ドローン市場では中国が大活躍してますからね。本映画にも近未来ドローンが登場します。物語の登場人物のひとりがこのドローンの凄さについて語っているのですが全部忘れてしまいました!なので皆さん、それぞれが映画を鑑賞中に確認してみてください。私はもう確認できる身分ではなくなりました(2024年6月現在)。印象としてはかなりすごい機能を持つドローンな感じでしたよ。石拾いとドローンの関係については過去記事をどうぞ!

本作ではハリウッド映画の伝統を踏襲し、娘と父親は困難を乗り越えしっかり和解します。この辺はよくある展開なので個人的には退屈でした。もっと関係が突飛でねじくれていたほうがおもしろいのにと思ってしまいます。

終盤で興味深いのは1時間5分30秒頃に映る鬼火みたいな青い炎です。タオの説明によるとこの青い炎は火山灰による静電気だそうですよ。生きているうちに一度は見てみたいものですね。


最後

火砕流に飲み込まれたと思っていたタオがなんと生きていました……。この展開は解せません。娘と和解したのですからもうこのまま娘の思い出の中で美しく生きれば良いのに……。が、諦めが早かった母親が亡くなったという序盤の展開を考えると、最後まで諦めなかったタオが生き残るのは必然にも感じます。諦めたらそこで試合終了ですからね。我らジャンプの子らは安西先生からきちんと学んでいます。

この記事の初めの方で言及した『ジュラシック・ワールド/炎の王国』では映画の最後に空を飛ぶ鳥がわざとらしく映ります。私はそれで泣きそうになりました。なぜなら鳥は恐竜の子孫であり恐竜は絶滅していないということを暗示しているからです。愛鳥家はほとんどみんなここで泣いていると思いますよ。『ボルケーノ・パーク』が本質的にジュラシック・パークシリーズの遺伝子を受け継ぐ気があるのなら、物語の最後には本物の火山噴火を映し出すべきでしたね!


まとめ

CG石まみれの本作ですが、リアルな石を映したと思われる場面もあります。例えば、12分頃に映る崖は多分本物でしょう。画面右側は朽ちかけた柱状摂理に見えなくもありません。シャオモンがバイクで颯爽とその崖の前を横切っていく姿は壮観です。また、50分30秒頃は実際のロケ地で撮った印象を受けます。CGにする意味がないシーンですからね。その場所には現実のものと思われる石が多数あったのでぜひ確認してみてください。加えて、小石が多数落ちている地面はエンディングのメイキング映像により現実のものだと判明しています。背景はグリーンバックでも地面は本物。作中の小石には皆さん注目しましょう!

さて、ここで活火山、マグマ、火砕流、火山弾の見どころについての情報を共有していきます。たくさん登場する場合はおすすめを厳選しています!

活火山 4分40秒頃と50分3秒頃

マグマ 8分24秒頃

火砕流 58分50秒頃

火山弾 41分29秒頃



『ボルケーノ・パーク』内の石拾いたい度
⭐️⭐️

ほとんどCGだからなあ


参考:

『ジュラシック・パーク』


『ジュラシック・ワールド/炎の王国』


プロメテウス
読みましたよ、おもしろかったです。斎藤氏の著書を今まで読んだ中で一番難しかったですが、プロメテウスやプロメテウス主義に関する理解が深まりました。


『ジュマンジ』シリーズ



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