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塔の魔導師 free

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「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
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2017年8月の記事一覧

第94話「反乱の鎮圧」

第94話「反乱の鎮圧」

前回、第93話「スピルナの価値観」

各話リスト

 リンが学院の廊下を歩いていると、ヨタヨタした足取りで歩いている初等クラスの小さな男の子とすれ違った。

 妖精の入ったランプを両手で持ってヨタヨタした足取りで歩いている。

 リンは彼を見て自分が初等クラスだったころの事を思い出して微笑ましく感じた。

 自分も妖精をまともに扱えなかった頃はあんな風にランプの中に妖精を入れて授業に持ち運びしてい

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第93話「スピルナの価値観」

第93話「スピルナの価値観」

前回、第92話「アディンナの危機」

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 学院の教室内でラディアットは手当たり次第生徒達にガンを飛ばしていた。

 まるで目を合わせればその人間の考え方、それもスピルナとアディンナの戦争についてどう思っているかわかるとでも言うように。

 一人の生徒が教室から出て行く。

 リンだった。

 ラディアはリンを睨みつけるが、リンは気づいてないフリをして通り過ぎる。

 ラディアはリンの曖

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第92話「アディンナの危機」

第92話「アディンナの危機」

前回、第91話「ユインの助言」

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 リンが会社に出勤するとザイーニがいた。

「ザイーニ。おはよう」

「おはよう。今日は僕と君で留守番のようだね」

 それを聞いてリンは一気にリラックスした。

 リンにとってザイーニは一緒にいて一番心が休まる相手だった。

 魔導師の学院に通うものはどういうわけか誰も彼も癖の強いところがあった。

 しかし彼はいたって自然体だった。

 そのため

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第91話「ユインの助言」

第91話「ユインの助言」

前回、第90話「うごめく闇」

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 リンは衣装部屋を出てユヴェンやアルマに事情を話した後、手頃な空き教室に駆け込んだ。

 机の上に裂かれた服を広げ、改めて検分する。

「一体誰が……どうしてこんなこと」

「間違いないわ。リンに嫉妬しての犯行ね」

 ユヴェンはすぐにそう断定した。

「リンがイケてる友達に囲まれたり、姫様のお気に入りになったりしてるのを見て悔しがって犯行に及んだのよ

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第90話「うごめく闇」

第90話「うごめく闇」

前回、第89話「アトレアの霊獣」

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 アルフルドに帰還したテオ達はアルマを医務室に預けた後、すぐさま魔導師協会に駆け込んで苦情を訴えた。

 ルシオラという魔導師に罠に嵌められたこと。仲間が重傷を負わされたこと。彼女を検挙してほしいこと。100階層に取り残されたリンを救助して欲しいこと。

 しかしそれに対する協会からの返事は案の定、にべもなく期待はずれのものだった。

 魔導師協会

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第89話「アトレアの霊獣」

第89話「アトレアの霊獣」

前回、第88話「迷宮の中の迷宮」

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 リンとアトレアはどちらも目を丸くしながらお互いのことを見やった。

「リンじゃない。何してるのそんなところで」

「アトレア。君こそどうして空に浮かんでるの?」

「これから出張なの。『出航の季節』だから」

「『出航の季節』?」

「そうよ。一年に一度レトギア大陸を巡航する飛行船が塔から出航する季節」

 そう言うや否や白いローブを着た一団が上

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第88話「迷宮の中の迷宮」

第88話「迷宮の中の迷宮」

前回、第87話「炎の鎖」

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「くそっ、ダメだ」

 テオが壁を拳で叩いた。

 彼らの前にはルシオラの出現させた迷宮が横たわり、今まで通ってきた道をふさいでいた。

 彼らに開かれた唯一の道は、長々と続く壁がわずかに途切れた場所、不気味に口を開けている迷宮の入り口だけである。

 テオはルシオラが出現させた迷路の長さを簡単に測量した。

 壁の厚み、通路の幅、そして今まで歩いてきた距

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