#創作小説
短編「わたしはあしながおじさんなんかいらない」⑦
きっかけになったのは一枚の古いポートレイトだった。
紗英とふたりで実家にある母の遺品を整理していたとき、それはまるで春光を待ちわびていたかのように、わたしたちの前にあらわれた。長いこと眠っていたために色と艶が失われていても、そこに映る少女の瞳までは輝きを失っていなかった。
写真には、瀟洒な教会を背景に、祭服に身を包んだ中年の神父と口元を綻ばせて笑う頑是ない少女が映っていた。わたしたちはその少女
きっかけになったのは一枚の古いポートレイトだった。
紗英とふたりで実家にある母の遺品を整理していたとき、それはまるで春光を待ちわびていたかのように、わたしたちの前にあらわれた。長いこと眠っていたために色と艶が失われていても、そこに映る少女の瞳までは輝きを失っていなかった。
写真には、瀟洒な教会を背景に、祭服に身を包んだ中年の神父と口元を綻ばせて笑う頑是ない少女が映っていた。わたしたちはその少女