短編小説「音のない楽園」
雨音だけではなかった。雨に叩かれる樹々のうめき、川面に浮かぶ無数の波紋、それに地面に突き刺さるスコップの音などが、重なり合って不快な音となり、胸の奥を掻きむしっていた。地面には穴が掘ってあって、裸の女が仰向けに転がっていた。私と柏田は、その上に一生懸命、土をかけていた。女の首には青い痣がついていて、あと少しで土の下に埋もれそうだった。
私には、日常の生活音から音の高さを認識できて、さらにそこから人の感情を読み取る能力がある。その力は、私がまだこの世に影も形もなかった頃にすで