シェア
むらやまちあき
2024年5月16日 17:31
一人、また一人と飛び立っていく。足先から小さな水の玉をふり落として。海の上では今、春の匂いがするという。そうして私は一人になった。世界は早く、皆、通りすぎてゆく。時折心を裂くような悲しみが、私の身体をすり抜ける。いとも、軽やかに。私は、海の底へと潜っていった。深く、深く。世界はだんだんと鎮まってゆき、私の四肢は再びたおやかに動き始める。過ぎ去る視界の端々に映る岩影には、名のな