錆びた時の刻む音
目覚まし時計は壊れていた。
心に溜まった垢が、重くなっていた。
冷たいシャワーを浴びることで、少しは軽くなるかと思った。
しかし、そのホテルのシャワーは、冷たすぎる現実を突きつけた。
垢が落ちたかどうかはわからないまま、ベッドに戻った。
何も変わらない。
ライターはうまく火がつかない。
窓からの風が、頬をかすめる。
何も変わらない。
もう一度シャワーを浴びようか。
その時、何かがはじけた。
どうしようもない、過去の影を追いきれない。
めまいがする。
額に手を当てる。
滴る水の音が聞こえる。
ベッドから転げ落ちる。
ひざまずく。
その拍子に、タバコが床に転がる。
拾う気にもならない。
”子どもに会いたい”
心の垢の原因がわかった。
過去の失敗の泥沼に、どっぷりと浸かっていた。