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【南大沢土木構造物めぐり】No.77 旧由木村・永林寺周辺を歩く

永林寺。旧由木村の中でおそらくもっとも古く、大きなお寺だった場所です。今回はそのお寺とその周辺を案内します。

■旧・由木村の中心地を歩く

今回の探索のスタートは、下柚木交差点。大栗川沿いを走っていた野猿街道が、大栗川と別れて野猿峠の方向に折れていく地点の交差点です。

少し歩くと、入口に石積みの古びた門のある、事務所跡みたいなものが建つ場所があります。

八王子市役所 由木支所と書かれています。ここは、昔の旧・由木村の役場があった場所です。今は少し離れた場所に由木事務所は移動していて、ここは臨時駐車場などに使われているようです。

由木中央小学校に到着。野猿街道の旧道と、由木街道の旧道が交わる交差点の場所に建っています。文字通り旧由木村の中心地的な場所です。

小学校のすぐ隣には、八王子市農協由木支店の建物があります。昔の村の中心地に、農協の立派な建物。ここは昔とあまり変わっていないのではないでしょうか。

農協のすぐ隣に、「曹洞宗 永林禅寺」と書かれた参道の入口があります。

■大きな忠魂碑

参道の脇道を少し歩くと、「忠魂碑入口」と書かれた場所がありました。

中には、本当に大きな石でできた、忠魂碑があります。
「元帥陸軍大将伯爵 寺内正毅書」とあります。

裏側には、大正8年4月建設と記されています。寺内正毅は、大正5年から内閣総理大臣を務めていました。総理大臣が記した忠魂碑というのも、またすごいものです。

その忠魂碑の後ろに、もう一つ大きな石碑が。こちらは、
「満州日華事変 大東亜戦争 戦没者英霊芳名」と記されています。

裏には、「昭和27年春 由木村」と記されています。つまり、寺内正毅が記した大きな石碑に明治時代の日清・日露戦争での戦没者、その後ろに昭和の日中・太平洋戦争の戦没者が祀られている場所ということになります。

由木中央小学校の入口。こちらのほうがもともとの正門っぽい場所なのでしょうか。

■永林寺に参拝

改めて永林寺の参道へ戻りました。石畳が趣のある道です。

永林寺の総門前です。左の石には、「不許帯酒入山門」と記されています。お酒を飲んでいる人は入らないで、と言っているのでしょうか。右には供養塔があり、石積みの寄進者の名前が刻まれていました。

総門。格好いいです。

その奥には、また大きな門があります。

阿吽の呼吸の像が鎮座しています。これはなかなかすごい場所です。

さらにもう1つ立派な門が出現。中雀門(勅使門)といいます。16世紀に天皇の許しを受けて作られたものだとか。菊の紋章が飾られています。当時の由木村は、京都からすると田舎なのに、ここにこんな立派な門が作られているのは驚きです。

本堂に到着。大きな屋根の建物です。由木地区で一番大きな木造建築かもしれません。

■境内にある、由木城跡

由木城跡という道しるべがあります。由木のお城?といいますが、このお寺は、16世紀に八王子の滝山城を作った大石定久の居館があったところだそうです。ここから野猿峠につながる「殿が谷戸」という谷戸の地名も、大石氏が往来する場所が由来との説があるそうです。

お寺の墓地を進んで石段を上がったところに、「由木城跡」の標示があります。

上には大石定久公の石像が建っています。

大石定久公四百三十回忌記念、だそうです。地域の方には昔から今まで変わらず愛されているのですね。

■境内にある様々なもの

お寺の中にある、豊川殿というお稲荷様。神仏習合思想の名残でしょうか。関東大震災で倒壊した神社を再建した建物だそうですが、1999年にも災害で半壊したそうです。古いお寺の倒壊した時期、再建した時期は、地域の災害の歴史でもあるのですね。大地震の痕跡は、古いお寺の記録を見るのが良いと聞いたことがあります。

三重塔もありました。こちらは昭和55年に建てられたものです。

境内には、庚申塔など、おそらく周辺の開発等で立ち退きを余儀なくされた石仏等が、たくさん引き取られていました。各地の神社やお寺等に移設された石仏が、いつ、どこにあったかを知るのも、興味深い謎解きだと思います。

帰りに総門の前から見た、南大沢の街。反対側の丘のてっぺんに建つ、東京都立大学の校舎が、真正面に見えます。こんな場所から南大沢の街をみるのも、なかなか面白いと思いました。

参道から見た、都立大学。ここだけ見ると、土産物屋さんが建ち並んで、参拝客でにぎわってもおかしくない気がしますが、ご覧の通りの無人です(笑)。地域の方でもあまり知らない人がいるくらいの場所ですが、驚くほどに見どころ満載です。

■終わりに

旧・由木村の中心を歩き、永林寺というお寺を参拝しました。約500年前から続く大石氏の居館であり、お城であったこともあるお寺。まだあまり知られていませんが、見どころ満載です。その横にある、忠魂碑も、実は当時の総理大臣が揮毫する立派な石碑です。
地域の歴史、歩いて見るとまだまだ発見が多いです。ゆっくり歩いて不思議スポットを見つけることを続けていきたいと思います。



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