[読書]蓮の数式 遠田 潤子
妻の死に関わった一人の若い男を追い求める賢治と、不妊治療の果てに冷酷な婚家を飛び出す千穂。これは、二人がその若い男を通じ交差する哀しい物語だ。
お話はその若い男と千穂の逃避行を軸に進んでいくが、彼らの逃げる先に明るい未来が待っている様には思えず、進んでいくお話の中で、次々にその男の暗い過去とそこに被さる賢治の家族の話がが焙り出されていき、暗澹たる思いは深まっていく。
こんなにまで不幸の連鎖というべきお話なのに、魅入られた様に読み進めてしまった。全てを知ってしまった賢治。果たしてこのことは幸せだったのだろうか?