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草刈り機の騒音と瞑想
今日は会社を休んで、滋賀県にある彦根城に行きました。
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彦根城に行くことが目的だったわけではなく、九州で寮生活をする娘に会った帰りに新幹線で途中下車の旅をするのが定例になっており、前回の広島、姫路に続いて今回は米原駅で途中下車しました。
米原からレンタサイクルを借りて、琵琶湖を北上し、長浜に宿泊。その翌日に自転車で彦根城まで移動しました。
彦根城を見学後、玄宮園と呼ばれる彦根城近くにある日本庭園に入りました。
池の中にいくつかの橋が架かっており、戦うために工夫された彦根城を見た後には優雅な気持ちに満たされます。
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おそらく昔の武士も緊張の中にも弛緩をうまく取り込んで精神的なバランスを整えていたのだと思います。
その玄宮園には抹茶と和菓子を頂ける場所があります。
今まで抹茶を頂くといったことに全く関心がなかったのですが、以前、日本庭園の中で初めて瞑想し、心地よかったことを思い出し、茶屋の方を呼び出す鈴を控えめに鳴らしてみました。着物姿の女性が出てきて丁寧に出迎えてくれました。
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ちょうど先に来ていたカップルと入れ替わるように私一人建物の中にはいりました。建物といっても、襖が全て解放されて、縁側から外の景色がみえるような開放的な建物です。
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部屋に入ると、中から彦根城を見学できる場所に案内頂き、冷たい抹茶と和菓子を頂きました。
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外は33℃の猛暑の中、二人の庭師の方が芝刈りをしています。終始「ウィーン」、「ウィーン」という音が響きます。
前回の静寂な環境とは異なる環境ではあるものの、私は目を閉じました。
目を閉じて最初に思ったことは、これは中村天風先生のブザー瞑想と似ている、ということでした。
芝刈り機の音に集中することによって無心の状態に近づきます。芝刈り機の音はブザー瞑想とは異なって、定期的に静寂の時間が訪れるわけではないので、二人の庭師の方が同時に芝刈りをしている時間もあれば、お一人の時もあります。
しばらくして、芝刈り機の音以外の音を聴き分けてみることを始めました。セミの鳴き声、お茶屋さんの女性が誰かと会話をしているのか、遠くで聞こえる女性の声、この茶屋に近づきながら、通過していく人の足音、集中して特定の音を聴いていると、一番大きな芝刈り機の音も気にならなくなります。
次に目を開けて周囲をじっくり観察します。特に目のまえの彦根城の天守閣の窓を観察します。私は先ほどまであの窓から下の様子を覗いていたからです。といっても庭から誰かが見えるわけではありません。
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そして体の感覚を感じます。暑い中でも扇風機がついているので柔らかな風を感じます。ずっとリュックを背負っていたので、背中は汗で湿っているのですが、不思議と不快感を感じません。床を歩いていた蟻が時折、自分の手に上っていきます。
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最初から最後まで部屋を一人で独占するという贅沢な時間を味わった後、「ご馳走様でした」と言って、建物を出ようとすると、中から先ほどのお茶さんの女性が出てきました。
「芝刈り機の音がうるさかったでしょう。すいませんでした」と丁寧にお辞儀をされていました。
芝刈り機の音はむしろ自分の瞑想にとってはありがたかったのですが、そのように返事をすると変わった人だと思われると思ったので、「全然気になりませんでした」と笑顔で返しました。
改めて全ての出来事は自分の認知次第だと思いました。騒音がなければ、この暑さがなければ、桜が咲いていれば、と無いことばかりを思えば、心は貧しくなります。芝刈り機の音があったおかげで瞑想に集中できた。この暑さのお陰で庭を散策する人も少なく、普段は混雑しているかもしれない茶屋を自分一人だけで占有するという贅沢な時間を過ごせたなど、あることに集中することで心が豊かになります。
そんなことを考えた一日でした。