くどうれいんのエッセイを買った日
毎朝起きて、仕事をして、わたしはお金を稼いでいる。
仕事の目的は様々あるけれど、お金を稼ぐことはこれから先も、大事な目的のひとつだと思う。
だけど、お金を稼いで何をしたいのか、わたしには明確な理由がないな、と思った。
社会人になったら金銭感覚はもっと変わるものだと思っていた。
でも、毎月口座に振り込まれる額が、しっかり人生で最大となっても、わたしのポーチの中のデパコス割合は時給1,000円ちょっとのバイト代をコツコツ貯めていた学生時代と全く変わらない。
Tシャツの値札が5,000円を超えていた時に、しれっと棚に戻してしまうのも変わらなかった。
20代前半OLに相応のブランドとは何なのか、誰か教えてほしい。
結局わたしは何にお金を使いたいんだろうかぁ、と、シーツを物干し竿にかけながらぽけーとしてしまった。
家賃6万の自宅の洗濯機はベランダにある。
先週末、吉祥寺の東急裏を歩いていた時、「本屋の中にある本屋」という看板が気になった。
そこは、本棚の一区画を借りることでだれでも本屋になれるという"シェア型本屋"だった。
(ナ、ナウイ…。)
これには胸が踊って、片っ端からじっくり眺めていると、「ここの利用者さんたちが別の会場で催し物やっていて。よかったらぜひ」
と、お姉さんにチラシを渡された。
催し物とは、ZINEのイベントだった。
(ちなみにZINEとはなんぞやと言うことを、この時初めて知った。magazineのZINEらしい。)
イベントでは、とってもハイセンスな方々がとびきり素敵な創作物を持ち寄っていた。
700円のキーホルダーがあまりに可愛かったので買った。
キーホルダーって意外とつけるところがないことをこの後知った。
会場の向かい側にあった「千恵蔵」というお店にも吸い寄せられた。
日本中・世界中の美味しいものを店主が取り寄せて販売しているお店だそうで、あれやこれや説明してくれて、気つけば今日入荷されたばかりで入手困難という、"梅こんにゃくゼリー"を買っていた。
帰りがけに、ハードカバーだからと購入を渋っていたエッセイも買って、いつもなら買わない桃まで買って帰った。
両手にいろんなものぶら下げて、なんだかとてもホクホクした気分で歩いた。
社会人になったからといって自ずと金銭感覚が変わるわけではなかった。
平然と成城石井でトマトを買えない。
イソップのハンドクリームはプレゼント用で、ロエベは憧れるがまだまだわたしなんかじゃ、持つのも申し訳ない。
でも、これは胸が躍るー!!と思った、生活"不"必需品を、時に勢いで買ってしまえるくらいのお金が必要だなと思う。
学生の頃は税込1,760円のハードカバーの本は、財布の紐がわずかに緩んだ勢いでは多分買えてなかったので、わたしもワンコイン分くらい大人になったのかもしれない。
千恵蔵のおじさんが「ここにくると色々買いたくなっちゃうから、1ヶ月に一回だけ、お金貯めてみんな来るんですよ」と言っていた。
そのみんなは多分、子供じゃなくて大人。
さて、来月も1,000円札握りしめて千恵蔵に行こう。
きっとその倍は使ってしまうのだから、明日からも朝起きて、ちょっとがんばって働こう。