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砂場のようなシナモントースト

ー ちょっと傾けただけで流れ落ちたシナモン ー


特にやることもなかった平日の朝。


でも訳あってとてもじゃないけど家でぼーっとできる気分ではなかった私は、ノートとペンをカバンに入れて、朝ごはんを食べるために電車に乗った。


着いた先は神田にある昔ながらの喫茶店「高山珈琲」



何年か前に放送されていたしゃべくり007。永遠の推しメン前田敦子が出ていたからたまたま録画していた。その番組内で有田か誰かがおすすめしていたのがこのお店のシナモントーストだった。


それからもう何年もじりじりと行きたい行きたいと思っていたのだが、かれこれ3年くらい経ってしまった。

なにせこのお店は平日しかやっていない。

しかも厚切りのシナモントーストを食べるとなるとそれなりの「食べるぞ!」という覚悟が必要になってくる。

なかなか来れなかったのにも頷ける。



お店の前はこんな感じで鬱蒼としていてわかりづらかった。

一度通り過ぎてしまったほど。


やや緊張しつつもドアを開けるとカウンターの中にいたマスターがテーブルに案内してくれた。


シナモントーストとブレンドコーヒーを頼んで一息ついた。


くわ〜 (ため息の声)


最近 「思いを伝えるということ」 という本を読んでからというもの、完全に心が揺さぶられてしまい、大きな決断を迫られることになってしまった私。

この日ノートとペンを持ってきたのもその気持ちを整理するためだった。

とりあえずテーブルの上にノートとペンを出しておいた。


チーン


遠くのカウンターの中でトースターの鳴る音がした。


私のトーストが焼かれたんだ。


それからしばらくしてシナモンの香りが漂ってきた。


来るぞ!もうすぐ来るぞ、、!


(この私のためだけに作ってくれている贅沢な時間、大好き。)


じゃん


シナモントーストにはおまけでりんごジュースがついてきた。(これがデフォルトらしい。)


トーストを一切れつまんで、ナイフでホイップクリームをつけて食べる。


そこには甘いものの地層があった。


こってりめの生クリームの下にはしゃりしゃりのシナモンシュガーの層、さらにその下には香り高いバターに、ほんのり甘い厚切り食パン。


隠し味一切なしの甘さのストレート勝負。


甘いんだけど、なぜかけろっといけてしまいそう。


休憩がてら苦いコーヒーを飲みたいところだけど、熱すぎてまだ無理だったから代わりにりんごジュースを飲む。

しかしりんごジュースも当たり前のように甘かったから何の休憩にもならなかった。(そりゃそうだ)


カウンターの中にはコーヒーカップがずらりと並べられていて、どれもデザインが異なっている。私のカップはどんなのだったっけと思って見てみたらピンクのお花柄だった。

これ、マスターがその人にあったデザインを選んでたりしたら素敵だな。

(バーテンが「お客様をイメージしたカクテルでございます」っていうアレみたいな。)


なんてぼーっと考えながら食べていて、右手に持ったトーストを少々傾けてしまったその瞬間だった。


ふぁさーーー


トーストの上に乗っていたシナモンシュガーがものすごい勢いでテーブルの上に流れ落ちていった。


あっっ

テーブルの上に乗っけておいたペンの上にかかってしまった。あちゃー、、。あとで何とかしよう。


それにしてもこの山のようなシナモンシュガー、何かに似ているなと思ったら保育園の砂場の砂だった。


こんな思考になるのも、さっきお店の前を保育園児たちのお散歩の列が通り過ぎて行ったのを見たからだ。


ああ今は平日の午前なのか。

あの子たちはこれから保育園に帰ったら、お昼ご飯を食べて、お昼寝をするのかな。

いいな、私も今日はそうしようかな。


気づけばお客さんは私ひとりになっていた。


マスターは何やら階段を登って二階と一階を行ったりきたりしている。

そうなると一階に私1人だけが取り残される時間が生まれる。

なんだか留守番を任されている息子みたいな変な感じ。

(私、信用されているぞ、、!)


食べ終わってまだコーヒーが残っていたので、少しだけさっきのノートを開いて気持ちを整理していた。

ノートがまるまる1ページ埋まった頃、私はようやく前向きな決心を固めることができた。

心は切なくもありながらどこか晴れ晴れとしていた。


・・・


帰りがけにマスターにしゃべくりの話を持ちかけようと思いつつ身支度を始めた。

しかしその瞬間、


「カランカラン」

(常連さんのご来店)


そして仲良くおしゃべりをし始めるマスターと常連さん。


しまった!帰るタイミングを完全に逃した。


しかしその後の予定もあったため、これ以上留まることもできず、私は常連さんにコーヒーが出されたタイミングを見計らってお会計を済ませに行った。


「何年か前のしゃべくりで見てからずっと来たいと思っていたんです。」


今思えばなかなかにいかにもミーハー女子大生な発言。

でもマスターはそんな小娘にも優しく答えてくれた。


「一昨年のですかね。あの放送から半年くらいは朝から晩までお店の外に列ができていましたよ。落ち着いた頃にいらしていただいて、よかったです。」


外にでて駅へと向かう。


有田だか誰だかの経済効果すごいな、と思いつつ、しゃべくりに出たことなんて一切アピールしていなかったさっきのお店を思い出す。


きっとそういうミーハーのためのお店じゃないんだろうな。


常連さんたちのためにそっとしておきたい場所だなと思いつつ、また行きたいと思うお店だった。


帰宅後しゃべくりを見てみたら、そのお店を紹介していたのはまさかのホリケンだった。

有田の追っかけならまだしも、私はホリケンの追っかけをしてたのかい。

悔しい、、。

(ちなみに一番好きなのは徳井。)



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