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ドラマ『名建築で昼食を』|わたしの好きを思い出す

正月休みの最終日、休みボケにならないようにリハビリ的な仕事をするつもりだった。一応休みだしテレビでもかけながら、と思ったのだが、まったく面白いものがない。ならば、と、最近ハマりつつあるAmazonプライムを覗く。流してかけるだけだし映画はやめておこうと探していたらなんとなく気になるものが。
『名建築で昼食を』、まるで『ティファニーで朝食を』をもじったかのようなタイトル。思わず見始めたのだが、実によかった。

物語は、カフェ開業を夢見る主人公のOL春野藤が、「乙女建築」巡りを趣味とする中年の建築模型士、植草千明とSNSで出会うことから始まります。

名建築巡りをしていく中で、藤は千明の独特の価値観に興味がわきはじめます。仕事に恋に悩み多き藤は、人生経験豊かな千明から発せられる一風変わった視点の何気ない言葉に心動かされ、勇気づけられ、前に進んで行きます。このドラマは一人の女性が挫折と葛藤を繰り返しながら成長していく物語です。

公式サイト https://www.tv-osaka.co.jp/meikenchiku202008/#overviews

カフェ開業を夢見る主人公のOLは池田エライザ、巡りを趣味とする中年の建築模型士は田口トモロヲが演じている。ドラマではあるものの、名建築を巡るドラマ仕立ての探訪記といってもいいかもしれない。
ドラマとしては淡々と進み、さまざまな名建築を巡るのだが、休館日に撮影しているのか、ほぼ貸し切り状態で人の気がない。
だからこその絵が素晴らしい。その建物の特徴や見どころを一番効果的に見せるだけでなく、周りに人がいないからこその外の景色との調和が見事だった。光の取り入れ方も素晴らしかった。これだけ建物を美しく見せるドラマってそうない。
また、館内を案内する職員はたぶんそこの本物の職員なのだろうか、たどたどしさやつっかえ具合がいい。

千明のマニアックさは見ていて気持ちがいい。決して押し付けることなく建物のすばらしさを説明し、建築愛を語る。手すりのさわり心地や階段の形、床の材質に至福の表情だ。はじめはなんとなくいいな、くらいだった藤もどんどん名建築にハマっていく。楽しそうでなんだか羨ましくなる。

ところどころでぽつりと語る千明の言葉もぐっとくる。

「世間とか周りとかってあんまり気にしないし。でも本人的にはそれなりに幸せなんだよ。自分がそれなりに幸せだったらいいんじゃないのかな」
「それなりに幸せなことって自分の周りにたくさんあるよね。ほら、今日こうやってビールがおいしいとか。好きな映画見つけたとか。みんな、不幸にはアンテナを張るけど、幸せには鈍感になりがち。そうならないことだと思う」

私の好きは何だろう。やりたいことリストとか好きなこと100書いてみようとかのワークなんかもあるが、私は書けるだろうか。
とりあえず、仕事上がりのビールは好きだ。でも別に100書くとかじゃなくてよいのだろう。幸せに敏感でいたい。

「いろいろあるけど、世の中の出来事にいいも悪いも意味はない。だって自分が意味をつけるんだもの」

わたしは。最終的にはいいも悪いもないと思っている。その時悪いと思っていたことがあったからこそ今があるから、と。
でも、いいとか悪いとか意味づけすることすら必要がないと千明はいう。
まだまだそんなに達観は出来ないけれど、すべて、自分次第。そうなれたらいい。

仕事しながらちょっと流し見するつもりが気づいたら全10話+番外編まで見てしまった。見続けていくうちに、そういえば、私も古い建物も配管や電灯、壁好きだったなあと思いだす。路地散歩も好きだったのに何年もいっていない。なんで行かなくなったのだろう。なんで自分の好きを忘れてしまっていたのだろう。
年を取るにつれ、ついつい、何かしら意味のあることをしなくてはいけないと思ってしまいがちだが、ただ面白そう、でいいのだなとこのドラマを見て思いなおす。
久しぶりにわたしも建物散歩したくなった。好きを思い出せてよかった。
いい日だった。(幸せをみつけた)

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