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【随想】本のほとり#1|又吉直樹「第2図書係補佐」
エッセイを書けば人生がもっと面白くなる。仮説というより、そうに決まっている、そうじゃなきゃ嫌だと思っている。だって、又吉の周りにばかり面白い人が集まったり、面白いことが起こったりするなんて、あまりに不公平だ。私だってエッセイを書けば、きっとバンバン面白い人に出会い、面白いことが起こようになる。
いや、それはさすがにちょっと違うだろう。そもそも、又吉はネガティブな出来事から面白みをすくい上げて書いている。ってことは、まさかエッセイを書くと、ネガティブな出来事が起きて、それを笑いに変換する力を私も身につけることができるのか。 それはちょっと信じ難い。私は平凡で時々ちょっとラッキーな人間なのだ、たぶん。そう思って生きている。
私の父は息子がサッカーの試合で活躍しなかったとしても「二度と観に行くかボケ!」などとは言わないし、「お前に飽きた」とわざわざ宣告してくるような友達だっていない。だいたい、私自身、放課後に落し物箱を物色するような悪趣味はなかった。
『第2図書係補佐』は又吉直樹がまだ小説家デビューする前に書いたエッセイ集で、本の紹介を通じて自分自身について語っている。本をたくさん読んだらこんな面白いエッセイが書けるようになるのだろうか。
私もいくらか本を読むが、本は「面白い」か「面白くない」かのどちらかしかないと思っている。「良い」か「悪い」かではない。しかも、「面白い」かどうかは読み手のコンディション次第だとも思っている。私は、自分は平凡だと思っているからこそ、人のエッセイを面白がれるのかもしれない。
面白い本を読むと誰かに話したくなる。「面白いよ」とハードルを上げて12歳の娘にこの本を読んで聞かせた。読みながら笑ってしまい、笑いが止まらなくなり、全く伝わらなかった。これは最悪だ。まぁいい。私は今日も元気だ。
この本は、又吉が大好きな本を紹介して読むことを勧めているのに、何故か私は書きたくなる。書いてみたくなる。日々が平凡なままでも、書いたら何か変わるかもって思えてくる。読むことと書くこと、どっちも面白い。
『第2図書係補佐』又吉直樹 (幻冬舎 2011年)
お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。
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