「論点をずらす一流」が「論破が得意」とされる今を不思議に思うのだ
長女「おーちゃん、ちゃんと『いただきます』言ってね。小学生になったときには、ちゃんと言えないとご飯食べられないよ」
次女「ゆーちゃんは、『おはよう』とか『ただいま』とか大きな声で言えてないよ。小学生なのに挨拶できないと恥ずかしいよ』
小学生になってお姉ちゃん面が激しい長女と、絶対にお姉ちゃんだけには負けたくない次女。
毎日、こんな対話が目の前で繰り広げられる。語彙力のない次女が一生懸命『論点をずらしながら』抵抗する姿をみると面白いし癒やされる。
「あんただって」、「おまえだって」
子どもの喧嘩って面白いな笑
「論破」する人は、それぞれの深い知識はない。
僕はテレビを殆ど見ないので、特に最近の芸能人についてはよく知らないが、芸能人同士が討論してどちらかが「論破」することをゴールとしたYou Tubeをみたことがある。
論破側が話す内容は非常に薄っぺらいが 「この人は口から産まれてきたのかな?」と思うぐらいに口だけは達者で、ペラペラとそれっぽいことを喋り相手を圧倒するので、一見するといかにも言い負かした図式になっている。
なるほど。
一昔前までは、こういう人を「詭弁者」とか「あー言えばこー言う」なんて揶揄していたが、確かにこれをバラエティーとしてみれば面白さがあるので人気化しているというのは頷ける。
※そう言えば「あー言えば、上祐〜」ってあったな笑
これって僕も少しだけ得意だが、決して論破する側が全ジャンルの知識を持って頭がいいというわけではない。どんな話題でも「大体の計算式」に合わせれば、訓練すると不思議なことに誰でもペラペラと話せるようになるのだ。
つまりこの手のものは知識を勝負し合うわけでも、正論を探し合うわけでもなく、ただ議論のテクニックを競い合っているバラエティーである。
少し異なるが、僕は過去に2000文字〜3000文字なら誰でも雑記ライターになれると書いたことがある。
雑記ライターは、中途半端な知識人の最たるもので、悪く言ってしまえば結局は何にも精通していないただのネットコメンテーターなのだ。
幅広く情報収集する努力と、その分野についてネットを駆使しながら60点の知識を素早く理解し、「何を捨てるか」「なにをリンク対応するか」を決断しさえすれば比較的早く事象に対する自身のそれなりの見解を語れるようになる。
お題は何でも良い。骨格となる文章を「段落分け」してストーリー性をつけて、文章を肉付けすれば、2000文字の記事はあっという間に完成する。
討論も構造は同じで、彼らはトリッキーなディベートテクニックを駆使して足りない知識をうまくごまかしているのだ。
重要なのは、中途半端な知識であることを悟られてはならない笑
だから相手に言葉の意味を深く考えさせないようにとりあえず早口は必須である。
だからみんな早口だ笑
言い負かすためのテクニック「極論ぶっ込み」
詭弁の典型的なもので言えば「極論」や「論点ずらし」である。
とんでもない極論をぶっこんで、相手の矛盾点をつこうとする。相手がその極論に答えると、今度はその内容の矛盾を探して質問を続ける。
いわゆる詐欺師がよくやる手法である。
議論において常に自分が責められないように質問側にまわって安全圏を確保しといて、都合が悪くなると必ず「極論」「論点ずらし」で逃げる。
例えば、仕事で「95%の確率で成功する新プロジェクト」があったとしよう。
上司は部下の起案だから一応、聞く姿勢は見せなければならない。しかし「今期予算とってないし、社長に相談しにいくのが面倒だな〜」
という状況である。
そこに、上司自身では突っ込みどころの見つからない完成形に近い提案書をあなたが持ってやってきた。
あなた「この方法で行けば、ほぼ成功すると思われます」
極論上司「え?ほぼ、ってなに?100%ではないの?」
あなた「100%とはさすがに……絶対に成功するわけではありませんが、このようにすれば確率としては……」
極論上司「そこを100%にするのが君の仕事じゃないか。失敗したらキミが責任取れる金額の損失ではないだろ。会社の経費を自分のお金と同様に考えろというじゃないか。どうなんだ、失敗する確率はあるのか?」
あなた「…………失敗する確率はあります。しかしこの資料の通り………」
極論上司「じゃあダメだ。そんな一か八かの状態では社長にまで恥ずかしくて相談すらできない」
あなた「・・・」
大体このような形で、論破したい人は極端な意見をぶっこむのが大好物である。最初から相手と議論する気はなく、自分が正しい事を証明したいというわけでもなく、議論において勝つ事のみを目的としたやり方にすぎない。
言い負かすためのテクニック「おまえだって論」
論点ずらしについては、過去に「そもそも論」について記事にした。
もう1つ超有名なのに「おまえだって論」がある。
あなた「ちょっと15分遅れてるぞ!待ちあわせに遅刻するなよ!」
友達「え、おまえだって前、遅刻したよね。」
あなた「今日は新幹線の時間あるから絶対に遅れたらダメなやつやん」
友達「そうだけど、あの時のお前は電車遅延はあったにせよ今日の俺の2倍の30分遅れたが、俺は2人きりで過ごすのに雰囲気か悪くなったらダメだと思って何も言わなかったけど。」
責められて否を認めたくない時は、わざと相手の欠点を問いただすことで、いかにも自分が正当な主張をしているような錯覚を起こさせる。
最初の指摘に対しては何の答えにもなってないので会話自体は成り立っていないものの、「おまえだって〜」にすると自分が不利な指摘に対しては回答しなくてすむ。こういう人達は自説が一番大切で、自説以外に価値はなく、他人は自説を持って論破する対象に過ぎないのだ。
そして、これが有名人であればもっと厄介だ。
自分の主張を世の中の人に聞いてほしくて仕方がない。
「この俺が正しい」
「この俺の話を聞けぇ」
彼らは道場破りでもするかのように「持論」という看板を引っさげ、他人に論戦を挑もうとする。
自分を崇拝してくれる大勢のフォロワーさんをバックにして他人の意見など最初から聞く気がない。そして承認欲求の塊で周りの人たちに対して、「凄い人」と思われたいと強く願っているので、何か間違いを指摘されても直ぐに反論してくる。簡単に言えば指摘されて終わるのが「恰好悪い」と思っているのだ。
こんな相手と議論をしても、最終的には揚げ足の取り合いに終わり恨みしか残らないので相手は「何言っても話が噛み合わなくてだめだこりゃ」と議論をやめてしまう。
しかし、彼らにとっては自分のターンで終わる大好物の道場破り。
「はい、論破」なのだ。
応用編:「おまえだって論」
最後に、サンプルを作ってみたので、どこが「おまえだって論」か是非考えて頂きたい。
1000人の部下を率いる部長
「俺ら営業部門が稼いだ金で、あいつらの給料払われてるのにあの事務の仕事っぷり。僕にとっては癒してくれるペットの命の方が大事で、彼らの命はどうでもいい。 もともと人間はね、自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてきてるんですよ。 犯罪者を殺すのだって同じですよ。犯罪者が社会の中にいるのは問題だしみんなに害があるでしょ、だから殺すんですよ。同じですよ」
周囲の人達
「いやいや、命についてまでは言及すべきでない。彼らにも人権がある。
そして貴方は1000人の部下をもつ部長なんだからこんな乱暴な意見を個人的な発言ですませてはダメだ。あなたを慕う1000人の部下が事務員に対して事件起こしたらどうするんだ」
1000人の部下を率いる部長
「ごめんなさい、たしかにそれは言いすぎた。理解不足でした。謝罪し、訂正いたします。」
部長のお友達
「え?そもそも仕事できない人に、異動辞令だして居づらくさせて退職に追い込もうと実行しているのは会社だし、それをあんたたちも同意してただろ。部長さんは口で言っているだけで何も実行してないのに叩かれるのは不思議だな」
はい、ここで急に出てくるお友達。
とんでもない論点ずらしの「おまえだって論」である。
「事務員を処刑しても良い発言したことに対する」是非を議論してるのに、急に「異動→退職→生活できない→だったら死ぬ→一緒じゃん→おまえらそれ同意してるよね」。
異動は心機一転の奮起を促す目的でもあるのに。別に異動して退職しても「生活できない」わけでもないし、会社が次の場所を斡旋してくれるかもしれない。
それなのに、お友達を守る目的だけのために議論の論点からずれたことを急にもちだしてきたのだ。
苦し紛れの滑稽な論理である。
今回は僕が作ったサンプルにすぎないが、職場を始めとした現実社会に「そもそも論」「極論」「お前だって論」を巧みに使いこなすテクニシャンがいるので、言葉巧みな「持論」に騙されてはダメだ。
もしもこのような場面に遭遇したら冷静に「それ、関係ないですよね。私の質問に答えてください」が一番効果的である。
それか、「イエスかノーか」で答えさせる質問をするかである。
こういう人に絡まれたら本当にしつこいので、強引に自分が言うだけ言って勝手に席を離れるのも手である。
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