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志賀直哉自ら設計した奈良の旧居を見学してきた
東海自然歩道を奈良へ歩いた翌日
8月27日は奈良市内を散策しました
奈良の観光地といえば奈良公園周辺
東大寺、春日大社、若草山が有名ですが
それらは以前にも行ったことがあるので
パスして気になる場所を巡りました🙌
その中でも今回最も行きたかったのが
文豪志賀直哉の旧居でした🏠
もちろん志賀直哉は知ってるけど
名前を知ってるという程度で
作品を読んだことは一度もなく…
建築への興味で気になる場所でした😆
前日の銭湯、夕食、1泊と
朝食までは別記事で書いてます
興味あればこちらもどうぞ
旧居がある高畑町
※前置きが長いです💦
建物だけ興味ある方は目次から
【玄関周りと2階】へ飛んでください🙏
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朝食後、近鉄奈良駅まで移動し
路線バスで旧居のある高畑へ向かう
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利用したのは市内を循環する
ぐるっとバスの奈良公園ルート
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ぐるっとバスは乗車区間に関わらず
1回100円で乗車できる🙌
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旧居は春日大社の南にあって
ついででも寄れそうな場所なのに
今回が初訪問です😁
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バス停から旧居へ向かう道は
石垣や塀が続き緑の多い住宅街
旧居がある高畑裏大道の一帯は、東は春日山の原始林、北には春日の社を透して飛火野の緑の芝生が展開するという、奈良の中でも特に風光明媚な屋敷町で、周辺は鎌倉時代頃から春日大社の神官たちの住んでいた社家の跡である。
志賀直哉が家を建てたあとから
このような感じなのかと思ったら
それよりもずっと昔から続く
屋敷町だったようです🌱
志賀直哉が奈良に引越したのは
1925年(大正14年)だったそうですが
最初は幸町の借家に住んだようです
志賀直哉が奈良へ引越しを決めたのは、かねてからのあこがれであった奈良の古い文化財や自然の中で、自らの仕事を深めていきたい希望があったからであった。
その後、1928年(昭和3年)
自らの設計で建てたのが高畑の旧居
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高畑町の古い屋敷跡の土塀や古い柿の木などが春日の社に調和する独特の風情は、多くの画家たちのこころひくところであったのか、画家や作家などの文化人が、彼と前後して高畑に移り住んで来た。志賀邸はこうした人々のサロンのようになり文化活動の核となった。
当時どんな雰囲気だったか分からんけど
現在の高畑町も静かで風情があり
志賀直哉が住んだ時代もこんな感じかなと
想像しながら旧居まで歩きました🌱
志賀直哉旧居
旧居は志賀直哉が設計し
数寄屋大工の下島松之助が建築施工
1929年(昭和4年)から9年住んだ家
建物の概要
敷地面積:1,437m2(435坪)
延床面積:443m2(134坪)
数寄屋造りが基調ですが、洋風の様式も取り入れた当時としては非常に進歩的で合理的、美的な工夫を随所に凝しているのが特徴。
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志賀直哉が退去してから公開までは
紆余曲折があったそうです
1938年(昭和13年)退去後に売却される
1947年(昭和22年)米軍に接収される
1951年(昭和26年)接収解除、空き家になる
1953年(昭和28年)厚生年金宿泊所に使用
1978年(昭和53年)解体の危機、保存運動
奈良学園理事長の英断により買収、保存され
セミナーハウスとなり一部が公開される
どんなに有名な建築家の設計でも
どんなに貴重な建築であっても
古い建物は老朽化や保存の難しさから
解体されてしまう建物が多いなか
保存されて見学できたことが嬉しい限り😄
奈良学園関係者やないけど
理事長に足向けて寝れません🙏
救ってくれてありがとうございます✨
2008年(平成20)年から
志賀直哉が暮らした時代に戻すための
修復、復元工事が行われ翌年に全面公開
見学して保存状態いいなと思ったけど
公開意外と最近やったからか🤗
工事内容については上記リンク先で
書かれてるので興味あればどうぞ🙌
ということでここからは
写真と設計のこだわりなどを交え
志賀直哉旧居を紹介してみます
玄関周りと2階
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門をくぐると緑に囲まれた
庭の中の石畳で玄関へ
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出口が別の場所になるため
玄関で脱いだ靴は持ち歩きます
踏込左奥で受付をすませて
いぜ散策を開始😆
2階から見学した方が良いと聞き
さっそく階段を登りました
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廊下の舟底天井、落とし掛けには釿を使った名栗加工、蔀戸など随所に数寄屋建築ならではの技法が見られます。
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旧居には1階北側にも書斎があるが
夏場以外は南側の中庭に面した
2階の書斎を使っていたそうです
1937年(昭和12年)54歳の時に
この部屋で暗夜行路を完成させた
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周囲の自然を借景とし
自然との調和を考え設計したそうです
周囲に高い建物がないため
今でも窓から若草山が望める🌱
旧居って言われんかったら旅館か?
って思える雰囲気でした🤗
書斎と茶室
2階の部屋は2室だけなので
階段を下り受付奥の茶室へ…
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天井は女竹の竿縁を使った竿縁天井(右奥)と蒲天井(左奥)、庇の傾斜が室内にもそのまま連続しているような掛込天井(手前)で構成され趣向が凝らされている。
建物を建てた大工の下島松之助が
裏千家関係の数寄屋大工だったことから
建物内に茶席を作りたいといわれ依頼したら
想像以上に本格的な茶室になってしまった…
というような経緯らしい🤣
大工さん、よっぽど嬉しかったんやろな
天井の造作もめっちゃ凝ってました✨
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この部屋は北側に面しており、日中を通して日差しの変化がなく、明るさを抑えた空間になっており、主に夏場に使用していました。天井は数寄屋風の葦天井です。
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北側に置かれた直哉愛用の机は
平成24年、志賀直吉氏から寄贈
夏は暑いので1階北側の書斎
それ以外は2階南側の書斎と
使い分けをしていたみたいです
文豪ともなるとどんな場所ででも
良い文章が出てくると思ったけど
当然ながら環境って大事なんやな…
ということは僕も良い環境に行けば
小説が書けるのか🙄…んなわけない🤣
水回りと女中部屋
書斎から再び受付前を通り
洗面、風呂など水回り方面へ
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廊下に面した便所は展示ではなく
通常使用ができる設備でした😁
こういうとこの便所って
どっちか分からんようになる…
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浴室には角形で木製の五右衛門風呂(復元)が置かれていて、壁には当時としては珍しいシャワー(冷水)が付いています。
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機能面を考え、台所、勝手口、焚口、玄関、倉庫などに居室を通らず行くことができる非常に動きやすい場所にある。窓ガラスは中央部分が透明で、勝手口からの訪問者を確認できると同時にプライバシーにも配慮しています。
台所と高畑サロン
女中部屋の隣にある台所は
当時の最新設備が設けられていた
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都市ガス、水道、電気さらに冷蔵庫(氷冷式)といった昭和初期の最新設備を備えていました。食器棚は台所側、食堂側両方から開けられる対面式になっている。
現代のダイニングキッチンが
普及したのが戦後らしいので
そう考えたら設備面だけでなく
間取りや機能面も最新だったみたい
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台所から繋がる食堂は約20畳あり
昔の建物だと思えないモダンな造り
天井は漆喰造りで洋風、長押は赤松で統一され、造り付けの牛革ソファが床の間に配置された珍しい設えです。照明は民芸風でオリジナルの物です。
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御影石で作った蹲は水道バルブをひねると中央にある小さな穴から水が出るようになっていて、スイカや飲み物を冷やすこともできました。実用と装飾を兼ねた珍しい手洗いです。
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台所、食堂に続き天窓のある
サンルームがあることに驚きました
天窓のガラスは修復されたものですが
当時もガラスが使用されてたそうです
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庭に面して置かれたクローバー型の机
これも当時の物らしいけどおしゃれ✨
床面には塼と呼ばれる焼き物で作られた平板が敷かれている
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直哉を慕って多くの文化人が志賀邸を訪れましたが、中でも食堂とサンルームは高畑サロンとして親しまれ交流の中心となった場所です。
木造の建物なので柱や壁はあるが
食堂とサンルーム合わせると35畳😄
ここに友人たちを招いて語らう…
羨ましいくらいに優雅な空間✨
直哉さんと同じ時代に生きてても
ここに招かれることはなかったはず
そう考えたらこの空間を感じることが
より幸せやと感じられました😁
食堂とサンルームは
衝撃と感動の余韻が長引き
先へ行った後も何度か戻ってしまった
お気に入りの場所でした♪
夫婦と子供の部屋
モダンな食堂から廊下に出ると
和風、数寄屋造りの雰囲気になる
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縁側にはサンルームと繋がる
躙口風の出入り口がありました
機能的でもあり遊び心も感じる😄
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この居間は襖を開くと子供の寝室と一つになり、踏込みの三畳和室を介して床格子の子供勉強部屋と繋がっている。直哉が深く子供に関心を向け、愛情を注いでいたことがこの部屋の配置からよく分かる。
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この部屋で子供6人が
雑魚寝をしていたそうです
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壁に腰板を張り、床はコルク敷き
子供達が庭に出やすいように
床を一段下げているそうです
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勉強部屋から縁側を抜け庭へ…
旧居見学の出口はここでした🤗
夫婦の居間や子供部屋を見て回り
人間味を感じることができました
子供思いの父としての志賀直哉を知り
文豪志賀直哉にも興味が湧いてきた📚
庭と外観
庭は南、中、北にあり
建物から出た南の庭から見学
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庭と台所や勝手口を隔てる壁に
中門がありその横に井戸
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庭には子供達のために造った
屋根付きのプールもありました
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外観からはあの雰囲気は
全く想像できんな😁
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建物の脇を東側を抜けて
中庭にやってきました
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資料として展示されてた写真見て
同じ場所で撮ろうかとも思ったけど
見栄えしないので背景だけ…🤣
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最後は池を要する北の庭から
2階建ての建物を見学
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緑が多い庭から望む旧居
2階の角部屋が客間で
木々に隠れた1階は書斎
北の庭から門を抜けると
玄関に続く石畳に出ました
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懐かしい玄関に戻りました😁
見学は約1時間かかったけど
情報や感じることが多すぎて
実際にはそれ以上に長く感じた🌱
まとめ
志賀直哉旧居平面略図に
この記事で巡った経路順矢印と
見出名ごとに色分けしてみました
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中庭を挟み北と南と西に
建物が配置されている間取り
北棟だけが2階建てになってて
西棟には水回りや倉庫など
南棟に食堂とサンルーム
夫婦と子供の部屋などが配置され
どの部屋からでも庭が見える🌱
敷地が広いからこそできる
贅沢な間取りやなと感じました
文字や矢印が邪魔なので
普通の間取り図も添付します
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今回見学した志賀直哉旧居という
住宅の中を歩いてるはずなのに
街を歩きいろんな建物を鑑賞したかと
錯覚してしまうほど場所ごとに違う
様々な様式を見ることができて
設計、施工、そして修復した方々の
こだわりを感じることができました🤗
見終わってお腹いっぱい大満足🙌
…やったんですが玄関に戻ると
もう一度最初から見ても良いかも🤣
そう思えるほど楽しい時間でした
宅内でも色々感動しましたが
一番の驚きは見学料が350円なこと✨
満足さからすると安すぎる‼️
比較するわけではないですが
東大寺大仏殿は600円…
志賀直哉旧居、建築興味なくても
楽しめるはずなのではぜひどうぞ🙌
とにかく、奈良は美しい所だ。自然が美しく、残っている建築も美しい。そして二つが互いに溶け合っている点は他に比を見ないと言って差し支えない。今のならは昔の都の一部分に過ぎないが、名画の残欠が美しいように美しい。
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