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8 森に帰る
僕の1日は、森の散歩から始まる。昨年は海外を転々としていたが、緑のあるエリアを中心に滞在し、森の散歩は欠かさなかった。
森に行くと、心が落ち着くのがわかる。ノイズと化した思考のざわめきが、「アイデア」や「意見」として昇華されていく。僕は、部屋から「森に行く」のではなく「森に帰る」と表現した方が正しいかもしれない。
もはや森に帰りすぎて、森に住んでしまった方が話が早いのでは?と思っているほど。数年後には、森の中でのんびり暮らしているに違いない。
僕が特段、森好きな人間かといったら、そうでもないと思う。森は人類全般が好きな場所だ。そもそも、人類はかつて疎林に住んでいた。
約1万年前にやっと人類は農業という大発明によって、平地で生きていけるようになった。長い人類の歴史からすれば、森に住んでいた期間の方が圧倒的に長い。だから、「森に帰る」のだ。
森には遺伝子に刻まれた安心感がある。
幸いにも、日本は国土面積の約7割が森林を占める「森大国」だ。コンクリート地獄の現代社会では、帰る場所が失われつつあるが。
デジタル世界やコンクリートジャングルに疲れた人は、たまの休みに森に帰るってみるといい。帰宅ならぬ「帰森」をしよう。森は疲れを癒してくれる。なんたってかつてのホームだから。祖先のお家に帰森しているだけ。
まずは月に1回でも、週に1回でもいい。
森へ帰ろう。