マガジンのカバー画像

詩集

79
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

僕のなかの赤毛のきみ

僕のなかの赤毛のきみ

トキメキだけで

すべてを失ってしまえればいいのに

ほんの僅かな企みが

未だにぼくを

大切にしている

こんなはずじゃなかった

ぼくは何者なのだろうか

もっと上の

ひかりだけの世界から

やさしいうたが

聴こえているのに

ずっと遠くの世界から

僕らのこれからを

ささやいてくれているのに

むらさきいろの

向こうから

赤い手紙が

送られて

ずっと いっしょに いようね

もっとみる
草原の輝き

草原の輝き

ちぎれた鳥の足が

僕を導いてゆく

跡をたどって

ぬかるみに

はまっているのも

知らずに

あの輝きへ

生ぬるい痛みも

忘れられた傷も

ぜんぶ

そのひかりで

思い出させて

破裂した音

きらきらと舞う

腐敗した肉

これは僕の記憶

君の手を汚す

ぼくの血液のほうが

何よりも温かいこと

浅ましくなる

それでも

僕の頬に流れ落ちた

君の涙のほうが温かかったこと

もっとみる
さよならの春

さよならの春

春の匂いが
僕らをおいだして
街は虹をつかんでる
ギターをきかせて
あいを歌えば
破顔するきみが
たまらなかった

嘘を重ねていくよ
上辺の恋に焦がれて
きみを苦しませるよ
本当の恋をしてたから

古びたバスが
僕らを追い抜いて
虹は愛をつかんでる
同じでいたいから
気づけなかった
恋してた君も
恋をしていた

きみを跨いでいくよ
煙草の火をつけながら
きみを忘れていくよ
最後の日を待たぬまま  

もっとみる
ノスタルジア

ノスタルジア

遠くの島で

うたが聞こえる

なぎさの宴

懐かしい音

待っていて

私が子どもに戻るまで

やさしい波

潮風に揺られて

白い時は

嵐のようなはやさで

なぎさの心

美しい島

待っていて

私が子どもに戻るまで

ほのおの香り

文明の呼び声

茶埜子尋子

星座

星座

ふたりで星座になれたら

いつかの日も見つめあえるね

かるいままで

刹那さを探して

いちめんきら星

裂け目から

こぼれて

きらきら 潮騒

目をつぶって

銀色 夜の方舟

いい夢を

茶埜子尋子

白い約束

白い約束

辿りついたの

浮かんでは沈んでゆく

星の丘の十字架の前に

いつからここに居たの

今までなにを見てきたのだろう

私もここに繋いでください

血をふき取って

罪ほろぼしの詩

草むらに散りばめるの

光るといいな

きらきら きらきら

きらきら

ここに来るまで

たくさんの約束かわしてきたの

すべては許せないかもね

白い約束

茶埜子尋子

遠吠えの詩

死ぬために造られた

海の見える崖で

昇ってゆく月の光りに

照らされて

あなたのおかげで

こころ遺りも

忘れました

このきらめきがいま

わたしの陰を

消していくのです

あなたがもし

悪であっても

憎むことは

しません

ただそれだけを

この一晩の月のひかりに

残してゆきます

朝焼けと共に

さよならするの

慟哭

茶埜子尋子