21 観察力が全ての基礎となる
昨日行われたCGWorld EntryLiveのオンライン版に参加してきました。
普段学校で言っている内容が、登壇している採用担当者や取締役の人たちも口を揃えて言ってる事で改めて全ての基礎になる観察力は大事だなと思ったのでそのことについて書いていきます。
基礎とは?
そもそも基礎って何でしょうか?
大辞林では以下の様に記されています。
①物事が成立する際に基本となるもの。 「 -を固める」
②建築物の重量を支え、安定させるために設ける建物の最下部の構造。地形じぎよう・礎石・土台など。
ざっくり解釈すると
その物自体の元となる、欠けてはいけないもの
を基礎と言います。今回も3DCGデザイナーについてのお話ですが、3Dに限らずデザインに関わったりする人全般に必要な観察力について少し掘り下げをしていきます。
なぜ観察力が重要なのか?
これを理解できていない初学者がとても多く
これに気づいている人は自然に上達をしていく傾向があります。
たとえば、「デッサンってやった方が良いですか?」なんて質問は学校に限らず企業説明会の定番質問になっている。
そのたびに多くのプロがとりあえずやった方が良いとは答えるが、何で必要かまで話してくれるプロはあまり多くなかったりします。
デッサンの本質は観察です。
物をよく見て描く事!
思い込みで描かない事!
実はプロでも意識しないと無意識で手癖で書いてしまう事があるので、この観察する癖をつける行為自体がとても重要なのです。
もう少しデッサンを分解すると
① インプット
② アウトプット
この二つの作業を学習していると言えます。
①のインプットはもちろん観察です。そして観察力を磨きます。
②のアウトプットは絵を描く力すなわち画力です。鉛筆を使いインプットをどれだけ処理できるかです。どれだけ高い鉛筆を使おうが、アウトプットにはさほど影響がないでしょう。それだけ鉛筆自体は完成度の高い道具なのです。
シンプルにこの二つの事を磨くのがデッサンの勉強です。
次はこのデッサンで学んだ観察力と画力がどのように他に影響を及ぼすかも説明すると。
基本は掛け算です。
インプット 100%
アウトプット 100%
これさえできれば見たままの表現が出来るわけです。
例えばいくら技術を磨いた所でインプットが出来ていなければ
パターンA
①50% × ②100% = 50%
となります。
これは学生あるあるで、美大生と技術系専門学生が分かりやすいです。
この例はどちらかというとアウトプットに偏る技術系学生です。
もう一つは
パターンB
①100% × ②50% = 50%
これも一見同じように見えますね。
これはどちらかというと美大生に多いパターンです。
分かっているんだけど、CGが良くわからず自分の実力が足りずに表現しきれなかった場合です。
一見同じこのAとBプロならどちらを採用するでしょうか?
ほぼ間違いなく多くの企業がBを採用します。
理由は簡単で
インプット力をつけるのはコストがかかって
アウトプット力をつけるのはコストがかからないからです。
言葉を戻して説明すると
観察力はちょっとやそっとじゃ身に付きませんが、CGの使い方は短期間で学習が可能なので、ポテンシャルが高いBを採用するという理屈です。
正直な話、教育コストってすごく高いんです。
一人当たり数100万円を使用する事になります。
即戦力の学生なんて滅多にいないので、間違いなく社内の仕事を一人で一人前にこなせるようになるには、赤字を垂れ流しながら育てる事になるんです。
そう考えたら、ちょっと教えたら伸びそうな子を採用するのは当たり前のことですよね。。。?
この観察力を他にあてはめてちょっとだけ補足をします。
モデラー(3Dで形を作る仕事)
①インプット(観察力)
②アウトプット(3Dツールを使って形を作る技術)
アニメーター(動きを作る仕事)
①インプット(観察力)
②アウトプット(3Dツールを使って動きを作る技術)
エフェクトデザイナー(特殊効果を作る仕事)
①インプット(観察力)
②アウトプット(3Dツールを使って特殊効果を作る技術)
この観察力ってすごくないですか!?
もしこれがゲームだったら
まず間違いなく最初に鍛えるべきチート的な基礎スキルでしょう?
もう一度言うとデッサンが重要なのは観察力です。
アウトプット部分の技術は実は上手ではなくても良かったりします。
知り合いの先輩デザイナーと会社員時代に休憩室でお絵かき大会をしていた時にこんなことがありました。
3Dモデラーとして超優秀なその先輩の絵がどれも(悪い方の意味で)画伯と呼ばれる絵を量産していました。(悪く言うとセンスのない児童画)
最初はふざけてるのかなと思っていたんですが、本気でこのレベル!
と知ったときにアウトプットはそれぞれなんだなと知りました。
要はインプットは100%近いんだけど
3DCGでのアウトプットは100%で鉛筆でのアウトプットは3%くらいだったのです。
後で知った事ですが
大学にはいっていたが美大ではなく美術は習ったことがない状態で専門学校へも通っていません。
現場で3Dソフトを学びながら仕事をしていきそのまま観察力を磨いたタイプでした。だからデッサンをしたことが無く描き方の技術も分らずアウトプットが出来なかったのでした。
技術があるに越したことは無いけれど
観察力という基礎が如何に重要か理解できたでしょうか?
自分に合ったアウトプット手段が一つあれば大丈夫です。
採用時にもそれは汲んでくれます。
型がなければ形なし
型とは基礎の事です。
ただし先ほどの観察力に加えて、制作全般に必要な最低限の技術力や発想なども含めた総合的基本としての話です。
いきなり型を崩していく「型破りタイプ」の方がいますが(特に学生に多い;)、その多くがそもそもの型を知らない場合が多いです。
たまたま成功して評価される場合もありますが、基礎の型を知らないので再現性がありません。
次に成功する保証はどこにもないです。
ビジネスの領域においては非常にコスパが悪いタイプの人間ですね。。。
もしあなたがそんな部下を持ってしまったら
毎回ハラハラしませんか?
だから基礎を教育する必要が出てきます。
しっかり基礎を身に着けていれば
スランプにも陥り辛いですし
安定して成果を上げる事が出来ます。
良く手柄を焦って奇抜な事をしようとする人がいますが(学生に多い;)評価を著しく下げる結果になるだけなのでまずは言われたことを出来る様になりましょう。
守 破 離
という言葉がります。
まずは徹底して基礎を守り
次第に自分なりの型を研究して壊していきます
そして元の型から派生した新しい型を生み出していく
勿論、基礎はずっと大事なのですが
改善・改良・創造の領域にはこの型を離れる勇気が必要です。
これはすべての学びの基本的な考え方だと思っています
まずは徹底的に真似をして下さい。
そして良い部分は吸収して、悪い部分は改善を加えるのです。
それは効率の部分だったり見栄えの部分だったりします。
そして本来のものとは違った新しい作品や製品を生み出すことになります。
振り返っても優秀な学生の殆どが自然にこれを身に着けています
オリジナリティの話もなりますが
個性は黙っていてもにじみ出てきます。
同じものを見て描いているデッサンで
誰一人同じ絵が無いのです!
同じ内容を説明しているのに
少し自由な課題を作らせたらみんな違うのです!
無理に個性を出そうとしなくても大丈夫です。
焦らなくても問題ありません。
ゆっくり基礎を身につけて
じっくりと個性を発揮していけば
迷っている人も多い話題かなと思います。
参考になれば幸いです。
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