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#ソシャゲの話をしよう。「とあるイベント設計に違和感を覚えた話」
#ソシャゲの話をしよう 。
どうも、死に急ぐ生命の果実です。
みなさん、ソシャゲ遊んでますか?
え?「なんかイベントを回るのがしんどくなってきた」?
まぁ、そういう方もいらっしゃるかもしれませんね。
さて今回はそんな「とあるソシャゲのイベントの進行が難しいと思って設定をひも解いてみたら、いろいろ無理のある設計になっていた」ということについて、あれこれをお話しましょう。
ざっくり以下のような構成でお話をできればと考えております。
はじめに
今回は筆者がプレイしている「クラッシュフィーバー」というタイトルのイベントについて取り上げる。(以下、「クラフィ」と呼称する)
一応、一般的なソシャゲの仕組みについて汎用的に応用が効くようにまとめるつもりだが、クラフィ独自の仕様やルールなどについて説明する箇所も多いため、補足は挟むが、すべてを理解してもらうことは想定していない。
興味のあるところだけ目を通していただければ幸いである。
また、今回の記事を書くに至った動機としては、プレイヤーとして、またゲーム制作者としての「怒り」の感情が起点となっているところが大きい。
そのため、やや辛辣な発言が飛び出すかもしれないが、ご容赦いただきたい。
一応、今回の観点としては「ソーシャルゲームのイベントにおいて、ここは押さえておかなければならないだろうというポイントと、そこからずれた場合にユーザーはどんな感情を抱くか」である。
さすがに文句を言いっぱなしで終わりというのはいささか失礼なので、「普通ならレベルデザインの観点からイベント設計はどうあるべきか」にも言及したいと考えている。
(記事が長くなる場合は、前半後半で分けるかもしれない)
今回のイベントの概要
まず、今回のイベントについて事前知識として説明しなければならないだろう。
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「乙女爛漫!キャロル女学院文化祭」。
クラフィ世界の学校で開催されている「文化祭」をモチーフとしたイベントである。
開催期間は11月15日(金) 15:00 〜 11月29日(金) 14:59の14日間。
イベントの詳細に関しては攻略サイトを見てもらった方が早いかもしれない。
ここでは、抜粋してイベントの概要・物量のみを記載する。
クエスト
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クエストとは、イベント内でゲームをプレイして報酬を得る遊びである。
クエストによって、難易度とスタミナ、得られる報酬が異なる。
クエストは新規が4本。また、過去の復刻クエストも4本が同時開催されるため、並行するクエスト数は8本となる。
交換所
交換所とは、特定のクエストで獲得できる交換アイテムと、有用なアイテムを交換する遊びである。
交換所で獲得できるアイテムは様々な種類があり、任意でほしいアイテムを交換で獲得することができる。
新規クエスト用の交換アイテムを使用する交換所とは別に、復刻クエスト用の交換アイテムを使用する交換所が並行する。
ガチャ
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いわゆるひとつのガチャである。
課金石を使用することでガチャが回せて、運が良ければ強力なユニットを獲得できる。
本稿においてはあまり触れるつもりはないが、仕組みの一環として挙げるだけ挙げておく。
その他
以下は上記の「文化祭イベント」とはカテゴリが異なるが、開催期間が並行して行われるものである。
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団結クエストはいわゆる「レイドバトル」。
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仮装解析戦はいわゆる「高難易度クエスト」。
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トラバーサルクエストはユニットの使用回数が限られている「詰将棋的な遊び」とでも言おうか。
なにが問題なのか
「時間」である。
また、時間を要求することによる弊害として、ユーザーに不満感・ストレスを生じさせる、あるいは離脱を発生させることを問題点として提起したい。
具体的に説明しよう。
イベントクリアに掛かるコスト
クラフィはクエストをプレイするために「スタミナ」を消費する。
ソシャゲでは「スタミナ制」を採用しているタイトルは多い。
遊ぶためにスタミナを消費するが、時間と共に回復する。
たくさん遊びたいプレイヤー、早く遊びたいプレイヤーは、アイテムを使用したり課金をすることで回復が可能である。
クラフィではスタミナを1回復するために90秒を要する。
つまり、スタミナを10消費するクエストを遊ぶためには、900秒(15分)の待機時間が必要となる。
この考え方は本記事を読み進める上で大切となるので覚えておいてほしい。
スタミナ消費=待ち時間が発生するということを踏まえて、今回のイベントではどれだけの待ち時間が発生するのかを試算してみよう。
各クエストと消費スタミナ
まずはクエストの一覧と消費スタミナ、ドロップ報酬である。
交換所クエスト-低難易度(80)(交換所アイテム)
交換所クエスト-中難易度(100)(交換所アイテム)
交換所クエスト-高難易度(160)(交換所アイテム)
心転がす飴屋台-低難易度(80)(ハルキゲニア)
心転がす飴屋台-低難易度(100)(ハルキゲニア)
心転がす飴屋台-低難易度(160)(ハルキゲニア)
熱気沸き立つライブステージ-低難易度(100)(スミロドン&メガロドン)
熱気沸き立つライブステージ-高難易度(200)(スミロドン&メガロドン)
敏腕!頼れる生徒会長-低難易度(100)(ダンクルオステウス)
敏腕!頼れる生徒会長-高難易度(200)(ダンクルオステウス)
集めたいドロップ報酬ユニットの数
クラフィは「バグ」「ログ」という仕様が存在する。
「バグ」は同一ユニットを合成することで基礎性能が上がるシステム。
特定のアイテムを使用することで、同一ユニットでなくても上昇させることが可能。
バグの上限は99。
つまり、ざっくり言えば「同一のユニットを99体集めるとメリットのあるシステム」である。
「ログ」は同一ユニットを集めることで基礎性能が上がるシステム。
20体ごとに1段階上げられ、上限10段階まである。
つまり、ざっくり言えば「同一のユニットを200体集めるとメリットのあるシステム」である。
バグと異なり、アイテムを使用することで代替することはできない。
「ログ」の仕様をベースとして考えるのであれば、1ユニットにつき200体を確保したい計算となる。
必要となる周回数
クエストクリア時、ドロップ報酬ユニットのドロップ内訳は以下となる。
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クリアボーナスは確定で1体。
ボスドロップは確率で1体。
バグボーナスは条件を満たしていれば確定で1体。
マルチボーナスは条件を満たしていれば確定で1体。
一旦、バグボーナス・マルチボーナスに関しては考慮せず話を進めるので、クエスト1回で獲得できるドロップ報酬ユニットは、最大2体、期待値で1体と設定する。
1回のクリアで獲得できるドロップ報酬ユニットは2体。
とすると、1クエストは100周したいところではある。
必要となるスタミナ
そうなると、必要なスタミナはどうなるだろうか。
心転がす飴屋台-低難易度(80)(ハルキゲニア)
熱気沸き立つライブステージ-低難易度(100)(スミロドン&メガロドン)
敏腕!頼れる生徒会長-低難易度(100)(ダンクルオステウス)
単純計算すると、もっとも消費スタミナが少ない試算で……
80*100+100*100+100*100=28000
28000のスタミナが必要となる。
必要となるスタミナを回復するのに必要な待ち時間
28000のスタミナを回復するために必要な待ち時間は…
28000*90=2,520,000秒
42000分。
700時間。
およそ29日。
新規クエストで獲得できる新規ユニットを、イベント期間中にログMAXまで育てようとすると、およそ29日間に相当する時間を待たないと必要なスタミナが回復しないという計算になる。
イベント期間は14日にも関わらずだ。(!)
ここまででの結論
イベントを遊ぶとき……というか、運営がイベントを企画してユーザーに提供するとき、設計の基礎として「このイベントではユーザーが何を達成したらゴールなのか」を設定する必要がある。
ゴールの存在しないイベントは、絶対に気持ちの良いゲーム体験にはならないからだ。
ゴールがない場合、そこに達成感はなく、どれだけ報酬を得ようと徒労感ややり残したことへの後悔があることは想像に難くないだろう。
ゴールがないイベント設定は禁忌である。
このイベントでは、「イベント期間中のみ限定で手に入るユニットを、仕様の範疇で育てようとする行為(=ログMAX)」が、イベント期間中に終わらないように設計されている。
意図的にだったら運営の設計担当に悪意を感じるし、意図的でないならただの設計ミスである。どちらにせよ、ユーザーからしては看過できない設計となっていることは事実だろう。
そこが今回の違和感の正体である。
一応フォローしておく
さて。
今回のシミュレーションの中で、意図的に記述を飛ばした箇所がある。
それは「スタミナ回復アイテム」「バグボーナス」「ログボーナス」「マルチプレイ」の仕様である。
スタミナ回復アイテム
スタミナ回復アイテムを使用することで、スタミナを即座に50~100回復することができる。
これを駆使すれば、試算よりも早くスタミナを回復することが可能となる。
ただし、イベント期間中に配布されるスタミナ回復アイテムは30そこそこだったと記憶している。
28000の消費が必要なスタミナから、せいぜい3000が軽減されたとて……というところだ。
また、プレイヤーによってはこれまでの蓄積されたスタミナ回復アイテムを駆使したり、課金によって購入することも可能ではあるが、すべてのプレイヤーにそれを求めるのは酷というものだろう。
バグボーナス・ログボーナス
バグボーナス
バグの上がったユニットをパーティの先頭に組むことでバグボーナスを受けることができる。
バグボーナスとして、通常クリア時の報酬に加えて、ドロップ報酬ユニットを追加で獲得できる可能性がある。
ログボーナス
ログの上がったユニットをパーティの先頭に組むことでさらにバグボーナスを受けることができる。
バグボーナスとして、通常クリア時の報酬に加えて、ドロップ報酬ユニットを追加で獲得できる可能性がある。
このふたつの仕様を駆使すれば、試算よりも少ない周回でドロップ報酬ユニットを獲得できる可能性はある。
ただし、これによって周回数が軽減されたとて……というところでもあるし、ユニットの育成が必要なことを考えると、すべてのプレイヤーにそれを求めるのは酷というものだろう。
マルチプレイ
最大4人までの協力ができるマルチプレイは、ホスト以外のプレイヤーのスタミナ消費は0である。
故にこれを利用することで、スタミナの制限を受けずに周回を行うことは理論上は可能である。
が、高難易度のクエストを他プレイヤーと協力してクリアするのは、それなりにハードルが高い。
ミスの許されないプレイング、高難易度に堪えうる強力なユニットの所持、実際に周回するプレイ時間(マルチにオートプレイは実装されていない。当然と言えば当然だが)……
言うまでもないが、すべてのプレイヤーにそれを求めるのは酷というものだろう。
まとめ
現状のイベントに関して、正攻法で誰にでもできる方法で「ゴールにたどり着く」方法は、ないのではないか。
我々プレイヤーは、クリアできないゲームを強いられているのではないか。
理不尽な方法(クリアできないゲームをつきつけられて)で、(スタミナ回復アイテムで)課金を強いられているのではないかという疑念。
また、運営がそれをよしとしてやっているのであれば、運営に対して疑念を抱くし、運営が意図せずにやっているのであれば、レベルデザインの粗を指摘せずにはいられないし、またテストプレイやバランス調整も信用できないと言える。
筆者には、運営スタッフがきちんと筋道だててこのイベントを設計しているとは思えないし、ましてや自分たちが作ったコンテンツをプレイしているとも、どうも思えないのである。
ソシャゲの運営では、「新規ユーザーを如何にして定着させるか」が大切な目的である。
しかしながら、このイベントでは初心者が今後も残り続けるとは考えづらい。なんなら、筆者はこのバランスを紐解いてみて、今回のイベントに真面目に取り組むのをやめた。
今後のイベントでも、真剣に取り組むかどうかは、イベントの設計・バランス次第だろう。
#クラフィ 、今回の文化祭イベントの進捗を教えてください。
— 死に急ぐ生命の果実 (@cf_gapple) November 22, 2024
運営には、ユーザーを大切にしてほしいし、そのためには自社コンテンツを大事にしてほしい、と常々考えている。
しかしながら、今回のシミュレーションを経て、運営への期待や信頼などは大きく疑念へと転じてしまった。
願わくば、多くのユーザーに愛されるコンテンツを世に出してほしいものであるが。果たして。
せめて、「真面目に遊んだら真面目にリターンを得られ、気持ちよくイベントがクリアできる」。
そんなイベント設計やバランスを求めるのは酷だろうか。
というところで、今回は以上。
一旦本稿は〆とさせていただこうと思う。
文句を言いっぱなしになってしまった感があるので、機会があれば「じゃあゴールがあってきちんと走り切れるイベントはどうやって設計するのか」に触れたいと思う。
余談
ここから先は無理に読み進めてもらう必要はない。
本稿で「新規クエストの新規ユニットをログマまで育てること」をイベントのゴールとしてシミュレーションしたが、冒頭で書いたようにこの文化祭イベントはボリュームたっぷりである。
他の要素までコンプリートしようとした場合、いったいどれくらいのスタミナ(≒時間)が必要なのか、簡単に触れてみたいと思う。
交換所クエスト
交換所にはさまざまなアイテムがあるが、すべて集めるのは不可能だ。
そこで一旦仮のゴールを置いてシミュレーションしてみたい。
ゴールとして集めるアイテムは、以下の条件でピックアップする。
このイベントでしか獲得できないもの
ガチャチケットや課金石など、著しく価値が金銭に近いもの
その他、今後も手に入るアイテムは、一旦省く。
するとリストアップされるのは以下のアイテムだ。
括弧内は必要な交換所アイテムである。
シーズンガチャチケット(1000)×10?
ポリゴン(300)×20?
重渋の給思プラリーヌ(300)×5
重渋の給思プラリーヌ(500)×5
祭気溢れる実行委員トウカ(1800)×3
トウカのメガホン(700)×1
トウカの飴細工(700)×1
トウカのホワイトプリム(700)×1
ゴールドエレメント(15000)×2
【求】今回のアイテム交換所のラインナップ。
交換前の一覧がわかる人がいたら教えてください。
ざっくり計算すると、必要な交換所アイテムは57500というところだろうか。
まあ、ゴールドエレメントに関してはアイテム交換所の明確なゴールアイテムであり、上級者向けと取ることもできるので、交換所アイテムは27500で計算することにしよう。
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交換所クエストはクリアボーナスで交換所アイテムのメッセージフォトが100個獲得できる。
特定の曜日は二倍なので、200個を期待値として計算してみよう。
周回数は27500/200で137周。
クエストに必要なスタミナは160なので、137周するのに21920スタミナ。
回復時間に換算すると548時間。23日。
はい、遊びきるのに23日追加。
復刻クエスト
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復刻クエストは3本。
それぞれ消費スタミナは以下。
かもチャンのオモテナシ♡-高難易度(40)
敏腕執事の優雅なお持て成し-高難易度(80)
女装男子の恥じらい0のおもてなし-高難易度(100)
それぞれ100周プレイするとなると、
40*100+80*100+100*100=22000スタミナ。
回復時間に換算すると550時間。23日。
はい、遊びきるのに23日追加。
復刻交換所クエスト
復刻交換所の目玉アイテムは以下。
ポリゴン(300)×5
協奏の群楽ガロア(150)×10
熱魂の奏音チェルシー(500)×1
稲鳴の恵音楽団クシナダヒメ(500)×1
必要な交換所アイテムは4000。
交換所クエストはクリアボーナスで交換所アイテムの投票用紙が48個獲得できる。
周回数は4000/48で83周。
クエストに必要なスタミナは100なので、83周するのに8300スタミナ。
回復時間に換算すると207時間。8日。
はい、遊びきるのに8日追加。
団結クエスト
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アタックブースターを使いきるのを毎日と仮定。
スタミナ40*10回*7日間=2800
2800*90=252000
回復時間に換算すると70時間。3日。
はい、遊びきるのに3日追加。
トラバーサルクエスト
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全部遊びきるのに900スタミナ。
22時間。
仮装解析戦・メビウス-Alt襲来
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高難易度クエストなのでスタミナ換算省略。
余談まとめ
29+23+23+8+3=86日。
14日間の開催期間のイベントで、実際にある程度遊びきるのに使うスタミナを回復する時間は86日分。
これを「設計段階でなにかがおかしい」と言ってはいけないのだろうか。
もう最後の方は計算が面倒くさくなってきたので雑になったが、以下のようなことが言えそうだ。
スタミナ回復の観点から、すべて遊びきるのは無理
プレイに掛かる時間についても同上
期間内でできることは妥協せねばならない
「やりたいことができない」という理不尽極まりない設計
なんにしろ、レベルデザインが雑すぎる。
提示された(ように見える)ゴールにたどり着けないのは悪意を感じるし、それによってユーザーが感じるストレスも大きい。
いったい何を考えてこのような周回数を設定したのか甚だ疑問である。
もうさ、ユーザーが振り向いてくれないからって、課金石配ったりトンチキなプレゼント企画で気を引こうとしないで、地道にコンテンツの改修をしてくれよとは思う。 pic.twitter.com/BZkxTGry3s
— 死に急ぐ生命の果実 (@cf_gapple) November 25, 2024