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読書感想6冊目:後宮茶妃伝 寵妃は愛より茶が欲しい/唐澤和希著(富士見L文庫)
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。
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道楽、という言葉があります。
とってもとっても好きなことがあり、それに関して目がなく、金に糸目はつけない、という解釈で個人的には使っているところです。着道楽、が実は身内にいたりします。着物好きすぎる身内。
読書の話に戻しまして。
今回のお話は茶が好きすぎる「茶道楽」なお嬢さんが主人公。彼女が鼻を鳴らせばそれは美味しいお茶のありかを見つけた証。
そんなすごい能力の持ち主であるお嬢さんの名前は采夏(さいか)、登場はお茶が大好きすぎる描写から始まります。お茶をこよなく愛する彼女はお茶に関しての知識がものすごい。
それはもう、すごい。
懐にしまいこんだお茶の銘柄をあて、口にすればお茶の銘柄はもとのこと、茶を摘んだ時期まで当ててしまう。
お茶に関しては、それはもう「超人」の域ではないかと思うほどの才覚を要所要所に見せてきます。
終始お茶のことしか頭にない彼女は年頃の少女として結婚を親から勧められていますが、彼女が目指しているのは巷でいう幸せであるところの「お嫁さん」ではなく、「茶師」。
年齢的には最後のチャンスと自作のお茶を手に、都に来たものの、なんと手違いから皇帝の妃の試験を受けてしまい、あれよあれよと後宮へ。
それでも基本的にはお茶があれば幸せな采夏ちゃんなのでぶれないなぁというところなのですが。
逆を言えば、お茶が絡むと基本的に人が変わってしまう。
基本的にはのほほんと場の空気を読むというか、波風立てずに物事を収めていく穏やかな性格に思えるのに、お茶に関することを馬鹿にされると雰囲気は一変。まわりを圧倒する気迫をもってお茶に対する愛を貫いていきます。
その態度は後宮内で権力を誇る上級妃だろうが、ひょんなきっかけで出会う皇帝だろうがおかまいなし。お茶の前にはすべてが関係ない。しかしお茶のことであれば語るし、飲むし、行動しちゃう。
一事が万事その調子で、その強さゆえかお茶を通しての発想力というか、その推進力でもって憂いを抱える青国(せいこく)の皇帝、黒瑛(こくえい)を導いていきます。
青国が抱える問題、それは力を持ちすぎた宦官による専横。皇帝はお飾りとして据えられるだけで歯向かえば即ひきずりおろされてしまう。
そんなぎりぎりの立ち回りをせざるを得ない状況の中にいる皇帝、黒瑛。
引きこもり皇帝、兄にすべてを持っていかれた出涸らし、などと噂され、お茶嫌い、と称する彼は、裏腹に茶飲みの才能(采夏ちゃんはとってもうらやましそうに見ている!)をお持ちのようで、お茶を飲むときの描写がなにより美味しそうに見える、見せてくれるのが彼がお茶を飲むシーンだったりします。
ヲタクが覚醒して語りまくり、圧倒してくる感じが采夏ちゃん。
全然興味ないけど本質をつかんで面白さを楽しめちゃうのが黒瑛さん。
個人的にはそんなイメージです。
そんな二人で、お茶を通じて国を救おうとする。お話はそんな風に進んでいきます。
不思議なことに、お茶がすべてを解決していってしまう、なんとも飲み(読み)心地の良いお話です。あれもこれもそれも、お茶にかかればほらむ問題。そんな感じ。
はじめ、無料お試しのコミックを読み、おもしろい!と文庫版書籍を購入した本作。
私もお茶好きの端くれとしてわかる……!となりつつ采夏ちゃんの勢いに圧倒されたりしながら読了しました。
ほかの登場人物も魅力的で、途中で采夏ちゃんのお友達になる、お茶目で強気な玉芳妃や黒瑛さんの側近の兄弟もいい味を出してます。
お兄ちゃん、あんまり登場シーンないのにすっごく印象が強い(笑)
作者さんの紹介にも中華風ファンタジー×後宮×お茶!とある通りの展開、そしてほっこりロマンス要素もあったり。
とっても楽しく勢いよく、読むことができました。
全部で三巻まで発刊中、すべて入手しているので順に読んでいく予定です。
ちなみに。今回出てくるお茶は巻末で紹介されています。
個人的には高級茶の「龍井茶」はぜひとも飲んでみたい~!!!(いや、本当は出てくるお茶も飲みたいし、采夏ちゃんの淹れてくれるお茶が飲みたい)
公式サイトはこちら↓
元原作はこちら↓
https://ncode.syosetu.com/n4701gm/
コミック版はこちら↓(やわらかスピリッツでは1話が読めます/2023.7月現在)
お読みいただきありがとうございました!